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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百八回


************   ************



 へレナの乗った『王室専用機』が、太平洋上に墜落したらしいという情報は、すぐに皇帝ヘネシーに知らされていた。


 もちろん、総督ルイーザにも、地球帝国暫定政府と、タルレジャ王国政府にも、また『王室』にも伝えられた。


 日本のマスコミを始め、各国の報道機関も、じき、知ることになる。



 その情報に、『地球帝国皇帝ヘネシー』は、かなりの衝撃を受けた。


 もしそれが事実ならば、彼女がなさなければならない事だとして、ダレルから深く心に刻み込まれた指示が、まったく意味をなさなくなるからだ。


 彼女は、すぐに総督ルイーザを呼び出した。




 ********


「いったい、どういうことになっておるのじゃ? 総督。姉上はどうなったのじゃ?」


 しかし、さすがに総督ルイーザは、まったく動揺の色を見せていない。


「陛下、どうぞ落ち着いてください。陛下が動揺すれば、周囲も浮足立つのです。ここは、冷静になさってください。」


「うむ・・・わかっておる。そなたは、想像以上に冷酷な、おなごじゃのう。」


「それは、姉上の教えなのです。国家の頂点に立つものであれば、冷酷無慈悲なくらいに構えなければならぬ、と。ただし、その行いは慎重に、しかも大胆でもあるべし。とも。幸いなことに、姉上は王国の重要人物ではあっても、地球帝国では無役です。」


「わかっておる。わしもそう、聞かされた。しかし、無役ではあっても、いつまでもそういうわけでもなかろう。」


「もちろんそうですわ。わたくしどもとしては、タワーをひとつ、まるまる開けているのですから。陛下、今は正確な情報が得られるのを、お待ちください。そう時間はかからないでしょう。それに・・・・陛下には、カイヤがついておりますでしょう?」


「まあ、そうではあるのじゃが。」


 実際、この情報を一番早く伝えたのは、皇帝専用コンピューターのカイヤだった。


 しかし・・・・


「しかしじゃ、そなたは、まだわしに秘密を持っておろうが?」


「はい。確かに。しかし、それは、わたくしも姉上から伝えられていない、多くのことがらの中の、ほんの少しだったものなのです。陛下もご承知のように、タルレジャ王国の『第1王女』、『第1の巫女』さまは、あまりに多くの秘密をお持ちです。それを無理やりに聞き出すことは、事実上不可能です。」


「あれだけ、わしに忠誠を誓ったにもかかわらず、か?」


「まあ、そうですわ。陛下。しかし、それは、地球上の多くの国家の中の、ごく小さな王国の秘密です。陛下が、そう気になさる必要はないものです。」


「そうかな?わしは、そうは思うておらぬ。当然のことじゃがのう。王国の秘密は、地球の秘密なのじゃ。違うか?」


「そうですね。でも、陛下もわたくしに、秘密をお持ちなのでは?」


「そうか?そう思うか?」


「はい。」


「ふむ。わかった、まあ、今は、良い情報を待っておる。しかし、時間は少ないのじゃぞ。」


「はい。陛下。」



  *******   *******



 皇帝ヘネシーの『第1タワー』を出たルイーザは、『タルレジャ第2タワー』の自室には戻らずに、そのまますぐに、王宮に向かったのだ。


 「なぜ、姉上は、何も伝えて来ないのかしら?」


 ヘレナからは、まったく何の連絡もなく、また感じることもできなかった。


 ルイーザは、当然姉に呼びかけていたが、それは虚無の空間に、むなしく響いただけだった。



      **  **  **  **  **



 「おお、これはこれは、お帰りなさいませ。ルイーザ様。」


 侍従長が迎えに出ていた。


「じい、仕事をかたずけに参りました。」


「それはもう、山と溜まっておりますぞ。・・・ああ。『第2王女様』、さぞ、ご心配な事でありましょう。」


「ありがとう、じい。」



      ***    ***   ***



 ルイーザは、『第2王女』の執務室に向かった。


 執務室の控えの間で、お付きの女官を追い返してしまった。


 そうして、久しぶりに、ひとり、自分の部屋に入ったのだ。



     ***         ***



「ああらら、お帰りなさあい。あなた、遅かったじゃないの。いったい、なにしてたのよ?」


 ヘレナが、豪華なソファーに座っていたのだ。


「まあ、お姉さま・・・いったい、どうしてここに!」


 ルイーザは、姉に抱きついた。


「あらあら、総督閣下が、そのようなことをしてはなりませぬ。」


「お体が、ちゃんとありますわ。映像でも、幻想でもないのですね。」


「まあ、ちょうど、ビーバーくんの貴賓室に入ったところだったのね。それで、ちょっと来てみた訳よ。」


「ビーバーくん?・・・飛行機は、やはり落ちたのですね。やはり、撃墜されたのですか?」


「いいえ、そうではないのじゃ。スパイが入り込んでおって、自爆したのじゃ。」


 ヘレナは、王宮言葉に切り替えた。


「なんと・・・お姉さまともあろうお方が、異変に気が付かなんだじゃと?」


「ほら、そなた、直ぐにそのような、きつい事をおうせになるじゃろう。まあ、それが道子じゃがのう。まあ、実際、わしであっても、万能ではないのじゃからのう。実際、わしにも、何も感じられなんだのじゃ。」


 ヘレナは、多少、見え透いた嘘を言った。


 機長たちの証言が出てきたら、すぐに分かってしまうようなものだ。


 ただし、機長はじめ、あの時操縦室にいた人間の記憶は、一部、消去させてもらったが。


 しかし、ルイーザにまで、これをずっと、秘密にしたままにする理由はない。


「まったく、姉上さまにとって、この空間というものは、なんの障害にもなぬものじゃからな。」


「まあ、そのようなことは、先刻ご承知であろうが?」


「実際、姉上さまは、わしに、まだ沢山、隠し事をなさっておられまするな。」


「まあのう。じゃが、よいかな? ルイーザさま。今こそ、歴史の大きな転換点に来ておるのじゃ。間もなく、かつて闇に消えた多くの亡霊たちが、一気に蘇るのじゃ。まずは、金星の『空中都市群』からじゃ。そうして、かつて、栄光を誇ったものたちが、再度、現れることとなるであろう。」


「最近、はやりの『ノーセ・タラ・ザマス氏の大予言』みたいなものじゃのう、姉上様。あやしいものじゃ。しかし、それは、また、真に神の御啓示なのか?」


「あれは、『予言』じゃからのう。わしの啓示は、事実の『情報』なのじゃ。質が違う。じゃが、それらのことが、地球帝国の『創立式典』を中心として、一気に集中して現れることとなろう。わしら自身の『婚約の儀』が終わった後の、非公式晩餐会で、武様と正晴様も交えて、そのあたりの話を、いたしましょうぞ。それまで、もう少しお待ちなされ。・・・・まあ、今は、それだけが、言いたくてね、それで、ここにわざわざ出て来たというわけよ。まあ、少し、あなたを、びっくりさせてあげたかったしね。」


 ヘレナは言葉を元に戻した。


「特に、前からあなたに伝えてはいたけれども、ヘネシーの、いえ、皇帝陛下の動きには、十分、気を付けていてね。アニーさんにも張り込ませてはいるわ。ダレルさんが、封印を解いていなくなってしまった。ありえないわ。わかるわね。」


「はい。お姉さま。・・・あの、もしかしたら、あの方が、蘇るとでも。」


「そうね・・・・あ。わたくしごときが、総督閣下に対して、失礼なことを申し上げました。どうか、お許しください。わたくしは、皇帝陛下と総督閣下に忠誠をお誓いしておりますわ。けっして、それを破るつもりなどございません。多少、見ため、変わった行動も致しますでしょうけれど、すべて、そこに忠実に沿ったものなのでございますから。・・・・・じゃね、ビーバーくんに帰って、大人しくするわ。ぼちぼち、おっそろしい『王国第2情報部』が動きだす。そういえば、あそこは、あなたの管轄だったわよね。どうなさるおつもりかしら?この先?」


 そう言いながら、ヘレナの姿は消えてしまった。


「まったく、自分勝手なお姉さまだこと。肝心なことは、お話にならずに。」


 ルイーザはそうつぶやいて、自分の巨大なデスクに向かい、大量に積みあがった書類を、かたずけにかかった。


 ここがきれいになったら、彼女は、『第2王女』の地位は、最終的に放棄する考えでいたのだ。


 自分の代わりには、弘志を立てる考えでもあった。


 男の子のままでよいのかどうかは、大きな問題があったのだが。


 あのままでも、十分『巫女』として通じるだろうが、いつまでもそうはゆくまい。


 姉上は、ストレス解消法としてだけで、弘志を時々女子化させていたわけでは、ないのではないか?


 いささか深読みが過ぎるかもしれないが、まんざら、間違いではあるまいな・・・。


 そう、考えてもいた。



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