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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百七回


 ************   ************


 マヤコは、女将さんの店に座り込んでいた。


 まだ、開店時間にはなっていない。


「まあ、長い時間が経ったねぇ。おたがい、いつの間にか違う道を歩んだけど、また協力する必要があるのかもしれないねぇ。」


 女将さんが、しみじみと語った。


「そうだなあ。どうなんだろう。だって、ふたりとも『第1王女様』の援助を受けて、お店を持つことになっている。まあ、そこから言えば、すでに親会社の傘下に入ってるということだからなあ。いまさら・・・かな。」


「ふん。そうだねぇ、まあ、そう言えばそうだけどさあ。あんたは長い間、姿くらませてたし。」


「ふう・・。2憶5千万年ですよ。女将さん。それがどういう時間なのかって、一言じゃあ言えないけどもね。ふたりとも、恐竜時代から生きてるんだからね。本物のティラノサウルスなんか見てるんだから。」


「つい先日も、見たじゃないかい。」


「ああ、そうそう。あれはもう、びっきりしたわ。」


「『びっくり』だよ。びっくり。なまってるよ。あんた。」


「おほん。まあ、そういうこともあります。地球中を渡り歩いたんだから。で、何時に来るっていうのですか? あの宇宙警部さん。」


「もう来るでしょうさ。意外と時間に正確じゃないんだよ、あの人。」


「さかんに、調べ廻ってるみたいね。あっちこっち。」


「ああ、そうさね。それが仕事だからさ。」


「ビュリアさんに会いたいんでしょう? まだ。」


「うん。そうなのさ。未練がましいねぇ。」


「まあ、あたしたちがこうして生きているんだから、ビュリアさんがここにいたって、おかしくはないもの。」


「まあね。行方不明です。としか言えないじゃないか。まあ、実際そうなんだし。」


「うん。そうなんだけど。地球にいるのかなあ?」


「いや、あたしはね、いないと思うよ。きっと太陽系からも出てるね。」


「証拠は?」


「ないさね。そんなもの。」


「じゃあ。わからないじゃないか。」


「そうさ。勘よ。勘。」


「まあ、女将さんは、ビュリアさんのお母様だから。そりゃあまあ、勘もあるでしょうけどね。」


「いやあ・・・・そりゃあ、まあ、無理さ。」


「やぱり?」


「そう。それにしても、ウナはどうなってるのさ?あんたが一番の親友だろう?」


「それこそ、さっぱりですよ。まあ、だいたい『光人間』なんだし、アッと言う間に消えてしまう。もし、ここにいても、目には見えないときてる。」


「うん。でも、消滅はしないさね。」


「しないですね。しない。どこかには、いる。でも、タルレジャ王国の、王女様の神様以上に見つけにくいかも。」


「あんた、タルレジャ教徒やめたのかい?」


「いえ~~~。特にやめたとは思ってないよう。女将さんは?」


「まあ、『第1王女様』は、大事な資金援助者だよ。やめられないね。」


「ですよね。」


「あ・・・・来た来た。」


 じわっと、大きな厚く重たい、店のドアが開いた。


「やあ、遅くなりました。失礼、失礼。」


 この暑いのに、分厚いオーバーの襟を立てて、サングラスにカウボーイ・ハットでは、余計に目立ってしまう。


 まあ、この、なんでもありの大都会では、文句を言う人はいないけれど。


「警部さん。あの、その、あつっ苦しい服、脱いでくださいな。ほら、お預かりいたしましょう。」


「そうですか、いやあ、女将さん。すいません。どうも、ぼくの人類形態の時の青い肌の色は、目立つらしくてね。」


「まあ、あなたくらいの高等技術がある人なんだから、どうにでもなるでしょうに。」


「ふむ。」


 警部さんは、座りながら答えた。


「ぼくの、基本的人権なんですから。」


「そら、まあ、そうだね。ははははは。で、何か収穫がありましたか。」


「ここ、ニュース見てなかったですか?」


「いやあ、女二人、ぎゃわぎゃわしゃべってたからさ。」


「『第1王女様』の搭乗していた飛行機が落ちたらしいですよ。婚約者もいっしょだ。」


「はあ?そりゃあ、大事じゃないかい。」


 女将さんは、巨大な画面のテレビをつけた。


 まさに、どこの放送局も、そのニュースで、もちきりになっていたのである。



 **********   **********



「うひゃあ・・・落ちるか? こんなところで。通常考えにくい。一番落ちないあたりだ。」


 シモンズは、うなった。


「お~い。アニーさん、どうなってるの。」


『アニーばっかりに、頼らないでくらだい。』


「よく言うなあ。協力するって言ったじゃないか。」


『あ、確かに。』


「ぼくの偵察機を出すには、ちょっとばかり遠すぎるんだ。どうなったの。生きてるのかい、あの化け物王女さまは。」


『ヘレナ自体は、まったく影響を受けません。』


「わかってるさ。弘子さんの体の方だよ。」


『生きております。アブラシオが救助に出た方が良いと思ったのですが。ヘレナがそれは拒否したんですよ。』


「そりゃあ、そうだよアニーさん、ヘレナは地球帝国から距離を置きたいんだ。あまりアブラシオさんには頼りたくはないんだろう。」


『まあ、理解できなくはないですけどね。合理的じゃあないです。』


「まあね。でも、生きてるならばいいけど、弘子さんの体自体は人間なんだ。どうやって助けるの?まあ、助けること自体は恐竜さんの事例から見ても簡単だとは言えるし、ヘレナ自体がやった方がより簡単なんだろうけど。」


『王国軍の新鋭秘密潜水艦を使うつもりです。』


「う、そんなのがありか・・・世界に公開すると? それもまた、今時、かえって危ないような。」


『そうそう。王国の実力を、帝国にまた見せつけるお考えであります。たぶん。』


「ふうん・・・・そりゃあ、第3王女様が黙ってないだろ?妹と戦争する積りかい?」


『まあ、そうですね。それも、実は、ありなんです。ヘレナの中では。ただし、ルイーザさんは、ヘレナが本国に帰国し次第、逮捕する考えでしょう。』


「それはそれで、いいのかい? 本当に王国と帝国が戦争なんかになったら、どうなるんだか。それって、この前の火星人対王国の再試合だろう。」


『ヘレナが良いなら、アニーさんは関知しませんよお。そういうことも、あり得ると言う事です。』


「おかしな関係だなあ。君たち全部。理解しがたい。でも、今度そんな戦争したら、全地球が敵になる。いくらなんでも、王国に勝ちはないさ。」


『ほんとに、そう思いますか?』


「ちがうかい?」


『はいな。全く違います。はっきり言って、ヘレナひとりで、アッと言うまに、地球は壊滅します。あっという間です。』


「ふうん・・・アニーさん、それじゃあ、全部終わるよ。ヘレナにとっても、いい事じゃないよ。《ぼくに何を期待してるんだ? あの娘。絶対に、何かを求めてるな。まてまて、どこかにメールとかが来てるに違いない。捜そう》」



 ************   ************



「おい、あれ、見ろよ、あの真っ黒なやつ。」


 武が言った。


 海はまだ穏やかだが、遥かな向こうに真っ黒な雲が出てきている。


「嵐がいるな。」


 正晴が応えて言った。


「こういう場合は、まずは定番だよな。あらら、あの、海の中から出て来た、真っ黒なのはなんだい?」


 武は、少し近眼がきつい。


 王国に本社がある、マツムラ・コーポレーションの傘下である会社の、コンタクトレンズを常時愛用させられている。


「まてまて、ありゃあ、潜水艦だ! うわ、どかっと出たぞ。」


 巨大な潜水艦が、1キロほど向こう側に浮上してきた。


「これあまた、異常に大きくないか?」


 武が言った。


 正晴は、隠れ武器マニアである。


 あの、弘子のクラスにいる、ちょっと生意気なやつよりも、実は詳しい。


「うん。確かに大きい。日本合衆国防衛隊の『新型瓜生型』が84メートルあるが、大分大きいな。100メートル以上ある。110メートルくらいあるかも。形が変わってるね。全体が流線型でむしろ欧州連合の新型潜水艦に近いけど、もっとすっきりしてる。視界はよくなさそうだし、丸見えになるな。砲弾みたいだ。」


「海に沈んでる部分が大きいんじゃないの?」


「そうかも。まあ、弘子が作ったのなら、なんでもありだが。」


「こんなのも作るのかよ。あいつ?」


「極秘だとかは言ってたが、『軍艦も作るんだよねぇ~~~わたし。ふふふ。』とか。」


「おそろしや・・・・・道子でよかった。」


「道子さんは、小型の武器を作ってるらしいぜ。人間を瞬時に消滅させる光線銃とか・・・ま、弘子が言う事だから、どこまで本当かわからないが・・・・・」


「げ、絶対本当だよ。あいつは、君には嘘を言わないんだ。」


「そうかあ?」


「ああ。あ、ボートが来る。」


「助かったかな・・・・。弘子はあそこにいる。手を振ってる。うわ、海に飛び込んだぞ、なんだなんだ。」


「こんな外洋で泳ぐかよ! こっちに来るみたいだ。冗談じゃないよな。あんなのと結婚したら、歯がたたないぜ。」


 弘子・・・『第1王女様』は、嵐が近づいて波が高くなった太平洋を、飛び魚みたいに猛スピードで泳いでくる。


 信じられない速さだ。


 あっという間に、彼女はゴムボートにすがりついた。


「きゃあ~~~。きちゃったわ、また、じいに叱られるわね。上げて、ほら、正晴さん。」


 正晴は、弘子の手を握って引っ張り上げた。


「やったあ! やっと、握ってくれたわね。サンキュー。」


 それから、彼女は正晴に飛びついて、猛烈なキスを贈ってきた。


「ぎょわ~~~。やめてくれ~~。」


「やれやれ、いなくてよかった。まあ、あいつはこういうことは、やらないからな。」


 武が反対を向きながら、聞こえるようにつぶやいた。


「ふふふふ。代わりにしてあげましょうか、武さん。」


「いやあ、いいです。叱られますから。」


「ふん。そうか。まあ、いいわ。婚約者なんだからな。だいたい、そっちから来るべきなのよお、ちっとも来ないんだもの。」


「え・・・あ。そうなのかな・・・・」


「愛してるなら。命がけでも来るものよ。」


「いや、あの・・・すみません。」


「まあ、事態が事態だから、許してあげるわ。」


 びしょびしょの弘子の姿が、ふたりとも、大変になまめかしく見えた。


「まあ、婚約の儀が済んだら、たっぷりとレッスンしましょう。正晴様。武さんは、ルイーザがみっちり仕込む約束だしね。」


「あの・・それあ、つまり・・・」


 弘子=ヘレナは、さっと立ちあがって、潜水艦を指さしながら叫んだ。


「さあ、わが王室の、新鋭潜水艦、正式名称『TAー50』、愛称『ビーバー』くんに、ようこそ。まだ首相でさえ乗ったことがないんだから。」



  ************   ************





 
































































































































 








































































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