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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百回


 ************   ************



 むかしは、様々なイベントを開催するごとに、どかんどかん、と,世の中全体が、まるで高い階段を喜々として踊りながら駆け上がる様に、日々上昇し、また進歩する時代があった。(そこには乗れなかった人びともいたには違いないが・・)


 しかし、今もそういう時代かというと、もちろん、もう、そうではない、と、『第1王女』は認識していた。


 彼女自体は、まだ17歳であり、日本合衆国や、タルレジャ王国の、高度経済成長期時代の経験はないのだが、彼女の中の『女王』は、すべてを見聞きしてきた存在である。


 「地道な継続というものが、むしろ大切なの。まあ、あなたは南島の御出身でしょう? だから、最近の世界的な『IT化』とか、王国での急速な家庭用ロボットの導入とかを見て来ている。でも、北島の人たちには、あまり縁のないお話しだった。今まではね。でも、これからは違う。王国の近未来化は、世界で最も早く進める予定です。今、建設中で、もうすぐ完成する北島の王立新病院は、世界に先駆けて、『高度自動治療装置』を導入するわ。これはね、わたくしの補佐役である『宇宙生体コンピューター』アニーさんが、総合管理するの。お医者様がいなくても、自動的に診断し、高度な治療もするわ。日本合衆国にも導入する予定ですわ。いい、この宇宙はね、過去、多くのすぐれた文明を生み出したけれど、その大部分は、すでに崩壊して、事実上の同時期に存在している例は極めてまれなの。でも、その成果は、わたくしと、アニーさんが受け継いでいる。まあ・・・こんなお話、北島の住民であれ、またそれ以外の地球人であれ、おおかたは初めて聞くことばかりよ。・・・まもなく、『火星文明』と『金星文明』が復活するわ。それから、非常に長く持続してきて、現在一時凍結中の『宇宙クジラ』さんたちの『ケンタウリ文明』もね。彼らは、この太陽系にもっとも近い文明だったの。そこで、『この太陽系』はね、まもなく、過去この全宇宙で、最高の科学技術を誇る、大繁栄の時代を迎えるの。わたくしが、それらの技術の泉を、大開放するからよ。ねえ、あなた、このまま、自分を終わらせたい? それとも、わたくしに、協力してくださるかしら?新しい時代に。しゃべりたくなければ、わたくしが話すから、肯くとかだけ、してくださればいいわ。その前に・・・ねえ、あなたは、あのままだと、自分がどうなるか、認識していらっしゃったのかしら。」


 男は、首を縦に振った。


「そ、すばらしいわ。でも、それって、わたくしの『生贄』となると、言うことかな?」


 男は、また首を縦に振った。


「ううん。具体的にどうなるかは、知っていたかしら?」


 今度は、彼は首を横に振った。


「あらまあ、命が無くなるんだ、とは認識してた?」


 今度は、首を縦に振った。


「ふうん・・・・わたくしに、料理されて、身体中、食べられちゃうって、知ってた?」


 男は、少し間を開けてから、首を横に振った。


「おやまあ、その程度かなあ。あなたのボスはね、もしかしたら、幾分は、多分、そうしたことも考えていたんじゃないかなあ。と思う訳よね。けっこう、あれで、切れる人だから。あたくしが言ってるボスって、わかる? きっと分かるわよね。パブロ議員さんのことなんだけども。」


 男は、こんどは、まったく反応しなかった。


 この『白い家』の中では、時間は独自に動いている。


 周囲の世界とは、『関係性』と言うものが、まったくないのだった。


「答えないかな。まあ、そうよね。わたくし、考えているの。あなたが、あのまま、行方不明になるのがいいのか。それとも、北島の、とある場所で、生きているのが良いのか。あなたの支援者さんが、映像をスパイしていることは、あなたがここに移動した後に確認したわ。大したものね。わたくしを、あれほど長く騙せたのは、史上初めてと言ってよいくらいに、ものすごいことだったわね。その能力をあなた方に提供した犯人は、割り出したわ。まとめて捕獲しようかと思ってね、ちょっと泳がせてみてるの。別の映像を提供してるわ。まあ、それは、幻よ。人間には、区別がつかないわ。この世界におけるわたくしの能力には、基本的には限りがないらしい。と言ってもね、すべてを同時に知る訳じゃあない。だから、限界はある。今回は、おそらくそこに、たまたま、うまく、つっ込まれたわけよ。その点をもっと深く追及したら、わたくしに、人間が勝てるチャンスはあるかもね。」



  ********   **********



「なによ、これ・・・・・・」


 中継を見ていた彼女がつぶやいた。


「なにかの儀式会場かな。ほら、第1王女だ。どこかの部屋に導き入れられたんだ。」


 男の目の前に、不可思議な物体が飛び回っている。


 正方形が作っている、正四面体もある。


 正三角形が作り出す立体もある。


 しかし、おかしな動きをしているものがある。


 単なる点が現れ、正四面体になり、八面体になり、正八面体になり、やがてまた八面体になって、正四面体になり、点になり・・・・いなくなる。


 そうしたおかしなものも含めて、まったく際限がないらしい空間に、さまざまなものが、浮かんでは消えてゆく。


「普通の部屋じゃないな。壁がない。天上も見えないわ。」


「映像のトリックだね。」


「まあ、そうね。王女様は、何かお祈りしてるわ。聞こえない。まるで。でも、あの子・・・浮いてるわ。おかしいよ。やはり。なにこれ・・・・・・。」


「とりっく、さ。映像なら、何でも可能だもん。」


「まあ、そうね。きっとね。・・・・・・うわあ、洪水だわ!」


 大水が溢れだし、すべてが水没してゆく。


「王女様は、祈り続けてる。ほら、『彼』の体から、何かが溢れてるわ。大きな『光の涙』みたい。王女様に吸収されるわ。アニメじゃあるまいし。」


「そういうものだよ、きっと。それにしても、巨大な涙の型の泡だな。おお、吸い込まれた!」


「あああ・・・・・ぐるぐると回ってるわ。ほら、水が引いて行く。どうなってるの、ここは、部屋の中よね、あ、あそこ、壁があるわ。ほらほら、向こうにドアがあるわ。見えてる。開くわよ。」


「まったく、わからないが、よく出来た映像だな。」


「あああ、歩いて行く感じよ。」


「ああ、そうだね・・・ほら、外に出たんだ。明るい、日の光だな。おわ、人間がいる。これは、服装から見て、どうやら、北島の人たちだ。どうなってるんだろう。」


 男は、彼らから、手を差し伸べられているように見える。


 そうして、ゆくりと、立ち上がった。

 



 ************   ************




 『アヤ湖』に集まっていた『池の女神様』たちは、とてつもなく長い集会を、ようやく終えたのだった。


 間もなく行われる、『第1王女様』と『第2王女様』の『婚約の儀』には、再び全員集合するわけだが、それそれが、地元の池の体制を、きとんと整えておくように、との指示が、『女王様』から出されていた。


 そこで、多くの『各女神様』たちは、一旦それぞれのお池に、戻っていったのである。

 

 ただし、一部を除いて。


「幸子さん、ちょっと、いいかな?」


 アヤ姫が、幸子さんを呼び止めた。


「は~い。アヤ姫様あ、なんですか? 幸子に用事?」


「はい。幸子さまだけに、お誘い、があるのです。」


「ふあ~~~。すごーい。なんですかあ?」


「ちょっと、お池の中の、お宮に行きましょう。」


「は~~~い。」


 そこは、アヤ湖の中央にある島で、アヤ姫様の為のお宮が建てられている。


「あのね、幸子さん、この宇宙では、たくさんの次元が折り重なっているの。幸子さんは、ここにもいるし、あそこにもいる。でも、交流はできない。普通はね。」


「まあ、幸子よくは、そういうのは、さっぱり、分からないですけど。」


「そね。わたくしだってそうだもの。幸子さん、ここでこれからあなたの『結婚式』をいたしましょう。」


「はあ??????」


「あの、『警部さん』が、間もなくここに連れて来られます。」


「えー。あの、あの、あの・・・・」


「そうですよ。そう、あの『日本合衆国』の警部さん。


 幸子さんは、真っ赤になった。


 『不思議が池』の捜索を率いていた、『反女王派』の警部さんである。


 ただし、幸子さんは、彼の大ファンであった。 


「うわ~~~~~大変だあ!!だって、お化粧も、お洋服も準備してないし~~~。」


「大丈夫。あなたは『女神様』でしょう。だから、ほらね。」


「・・・・・うあ!すごい。きれい!」


 幸子さんは、あっと言う間に、豪華なドレスに包まれていたのである。


「着替えは終了。あとは、彼が来るだけだから。」


「なんだか、これ、夢の世界じゃないですかあ?」


「どうかしら・・・・ふふふ。まあ、そう言っても良い。だって、こういうの、幸子さんも得意分野でしょう。人間たちは、あなたに食べられてたら、夢の世界に埋没する。女王様の『地獄』にね。わたくしたちは、その入口だから。」


「幸子は、お饅頭とお酒ぱっくがあれば幸せなので、あまり考えたことないです。」


「うん。それでいい、それが幸子さんだから。さあ、警部さんが、いらっしゃいますよ。」


 アヤ湖は、濃い霧に覆われた。


 南国で、非常に気温が高いこの国だが、標高のやや高いアヤ湖では、夜中から夜明けを中心にして、気温が急激に変化して、深い霧が立つことは、有名な事実なのだが、その科学的なシステムの解明は、まだ十分には出来ていなかった。周囲の気象条件と、どうやらあまり関係がなく、深い霧が立ち込めるからだ。


 民間伝承では、『アヤ姫さま』がそうさせるのだと、信じられている。


 また、霧の深い夜は、王宮の敷地内で『アヤ姫さま』の幽霊が、多く目撃されると言われている。


 王宮に勤めた人々からは、そうした『内密の話』が、昔からたくさん出て来てもいたのである。




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