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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第一章

 「そうか、私は、弘子でしたものね。」

 第一王女は、そう言い残してアブラシオから去った。


 ************   ************


 この地球(我々の地球ではない、非常によく似た別の宇宙の地球・・・)の歴史は、一日にして全く変わってしまった。

 かつて、火星がそうであったように、すべての国家は、形はそのままで、まず「地球帝国」へ統合された。

 火星の場合は、やがて元の国家の枠組みは解消されて行き、最終的には「火星王国」に溶け込んでいったのだが・・・。

 しかし、物事の全てがすんなりゆくということは、普通あまりないものだ。

 このころ、地球上には200近い数の国があったが、予想はされていたが、国家元首が基本的に独裁者であり、しかも「不感応者」という場合には、「帝国」に対して、非常に大きな抵抗を試みることとなった。

 「火星の女王」は、かつて火星の国家(300はあった・・・)を同じように統一する際には、かなり強力な手法を使った事がある。意識を統制できなければ、物理的な「体」を統制してしまうというような。

 しかし、「女王へレナ」は、地球の統一に当たっては、そうした強権的なやり方は、可能な限り避けるように「地球皇帝」と「地球総督」に言い渡していた。

 

 「皇帝」、つまり「タルレジャ王国」の「第三王女」ヘネシーは、特別な「能力」は一切持っていなかった。ただし、強力な「不感応者」だったけれども。その点では、むしろそれ自体が「超能力」に近かった。また、彼女は、火星のダレル将軍によって洗脳されており、彼の命令には忠実に従うように躾けられていた。一方で「総督」となった、「第二王女」ルイーザは、「女王」(おそらく第一王女ヘレナに取りついていたと思われるが)によって、その分身を植え付けられて、事実上「女王」のコピーとなっており、超絶的な「超能力者」となっていた。


 そんな妹二人をほったらかして、第一王女(=女王へレナ)は、東京の自宅に帰り、あすからは久しぶりに高校に通学しようとしていた。

 と言っても、卒業まで、もう残り半年くらいだが。

「やれやれ、もう何十年ぶりかに、帰ったみたいねえ。」

 大きな自室のふかふかの床に仰向けにひっくり返りながら、弘子はつぶやいた。

「まあ、これでよかったのかなあ。ねえ、アニーさん。いかが?」

 宇宙生態コンピューターのアニーは、面倒くさそうに答えた。

「あなたが良いと思えば、それで良いのです。」

「まあ、何と投げやりな回答かしら。もう少し、敬意とか、尊敬の念とかを入れなさいよ。」

「はいはい。次回からそうしましょう。たぶん。」

「それじゃあ、『あすから勉強頑張ろう!』って、壁に貼ってるみたいじゃない。」

「まあ、あなたは高校生なんですから、勉強頑張ってください。大学ゆくんでしょう?今回も。」

「なによ、今回もって。わたくしは、一回目ですわ!」

「そりゃあどうも。十万回くらいは、行ってますよね。」

「失礼な、あなたちゃんと数数えてたんでしょう?」

「まあ、そうですね。火星も含めますか?それとも、その前は?」

「もう、いいです。」

 そこで、部屋の呼び出しベルが鳴った。

「どなたあ?」

「お姉さま、弘志です。」

「お姉さまあ! まあ、びっくり。初めて聞いたわ。どうぞ、開いてます。」

 弟の弘志が、しずしずと入ってきた。

「あの、お帰りなさいませ。お姉さま。」

「気持ち悪いから、その『お姉さま」はやめなさい。前と同じでいいわよ。」

「しかし、皇帝陛下と総督閣下の、姉上であらせられるあなたを、他に何とお呼びしていいのか、みな、皆目見当もつきません。」

「むむ、こいつまじに言ってるのか? まあ無理もないかあ。もろ「感応者」だものな。でも、あなただって、「皇帝陛下」の兄君なのよ。世間から見たら。」

「それは、まあ、お三人は、常に別格でしたから。ぼく・・・いえ、私だけではありません、兄姉ほとんどが、あなた様にどのように応対してよいかが、わかりません。なので、一番接しやすいと思われます、私が、そのあたりをお伺いしたく、こうして代表として、まかり越しましたところでございまして・・・」

「わかったわかった。はあ、こいつ真面目に言ってるのか。わたくしは、アブラシオから地球人全体に、基本的な洗脳をしただけであって、あとはルイーザがやってるんだけど、まだまだ、へたくそだからなあ・・・。あのね、わたくしは無役なんだから、今までと同じでいいのよ。」

「いえ。しかし、それでは周囲から「背徳者」として訴えられかねませんでしょう? 兄姉からも、ですが。」

「はあ?ふうん・・・そうなのか、そこが心配な訳なのか?」

「はい。周囲の人たちから、漏れ聞きまするに・・・」

「その言い方、変よ。あなたすごい無理してない?」

「いえ、言い方もよくわからなくて・・・お怒りでしたら、どうぞお許しください。けっして、偉大なる、あの、「お姉さま」に、けっして逆らおうなどとは・・・」

「わかったわかった。で、漏れ聞くところに寄れば、どうなのですか?」

「はい、なんでも、ある「夫」が、「皇帝陛下」の悪口を言ったとして、交番に訴えてきた「妻」がいて、しかし、お巡りさんも、どうしたらよいか判断がつかず、とりあえず記録だけして自宅に帰したとか。ある交番では、似たケースで、本署に連れて行ったとか。「研修ハウス」第一号店が渋谷にできたとか。最初の入所者で、まあかなり、乱暴な人だったらしいのですが・・・が入ったとか。出てきたら、まるで天使のような人に変わっていたとか。すばらしい!とか。そうした情報がぼくに、いえ、「わたくし」に入っております。」

「ああ、そうなのね。ありがとう。あの、とりあえず、お家の中では、「帝国」ができる前と、同じ対応をしてくだされば、よろしくてよ。まあ、外向きには、それなりに配慮してくださればいいです。ああ、でもただし・・・」

「はい?」

「ああ、いえ、いいわ。今は、まだ過渡期で世の中が安定していないのです。ですから、あまり過度に対応しないでください。噂を周囲に広げないでください。いいですか?」

「ああ、はい、わかりました、お姉さま。」

「それと、あなたは、大事な弟です。2~3日したら、またお話したいことがあります。いいですね?」

「ええ! ああ、はい、はい、お姉さま。なんなりと。わかりました。」

「あの・・・、ええと、洋子お姉さまは、どうしていらっしゃるのですか?ご挨拶にお伺いしようとしたけれど、鍵がかかっていて、お返事もないの。」

「さあ、ここしばらくは、ぼくも、『会って』ないですが。あ、では、お忙しいでしょうから、失礼いたします。」

「ああ、いえ、どうも。ははは・・・」

 弟は、上半身が、もう半分にぴったりとくっついてしまうくらいに最敬礼して部屋から出て行った。

「いやあ、これは参ったな。女王の時は、まあこれはこれで良かったけれど、この状況で、これでは肩が凝ってかなわないわ。すぐ修正をしたいけど、せっかくルイーザがしたことでもあり、まあ、おかしなトラブルも嫌だしな。ちょっと様子を見てからにしましょう。それこそ訴えられたら、面倒よね。まったく。そうそう、練習練習。しばらくさぼったから、まずい。演奏会がすぐだし。でも、まずはその前に、洋子お姉さまに、会わなくては、気持ち悪いわ。きっと、『かんかん』なんだ。」

 弘子は、楽器を抱えて、部屋を出た。



  ************   ************


 洋子は、部屋から外に出ることは、まずない。

 彼女は、人間にとっては、あまりに危険すぎるからだ。

 洋子の周囲200メートル以内は危険領域だ。

 男は、ほとんど正気ではいられないし、もし女性であっても、けっして安心はできない。

 この特殊な部屋に囲まれていれば、まず問題は起こらない。

 トレーニングルームを併設し、健康管理には遠隔操作で万全を期してはいるが、まったく幽閉状態なのと同じことだ。

 どうしても外に出ないといけない時は、まさにどこかの「・・救助隊」のような仕組みが施されているが、滅多に使うことはない。

 しかし、洋子はすべてを理解して、この場所にとどまり続けている。

 第一王女としては、早めに王国に移してやりたいが、「教母様」が頑張ってる以上、うっかり移送させたりしたら、また大騒ぎが起こりかねない。

 もう少し、時間が必要だった。

 

 弘子は、隔離された洋子の部屋に向かった。

 簡単には入れないようになっている。

 まず、コンピューターによる「顔認証」がある。

 兄弟姉妹たちだけは、ここはまずパスする。

 分厚いドアが、横滑りして開く。

 まるで、「核シェルター」の入口みたいだ。

 

 次には、要件をコンピューターに入力して、審査を受ける。

 コンピューターは、洋子の状態を常にチェックしていて、何かの事情でどちらかに支障がありそうだと判断したら『本日は、お帰りください。』と拒否して来る。

 なんとか、ここを突破したら、最後に洋子の意向が直接確認されることとなる。

 家に帰ってきたばかりの時、すぐに報告に寄ったが、ここで、はねられてしまった。


 実を言うと、弘子だけには強制権限がある。

 つまり、やろうと思えば、強制的に入室が可能なのだ。

 弘子がいない時は、道子に与えられている。

 万が一の時の対応策を取ることができる用意が必要だからだ。

 洋子の体は、基本的に不安定なのだ。

 そこは、はるか昔の、ビューナスに少し似ている。

 けれども、この強制権を弘子が行使した事は一回もない。

 安易に使ったら、信頼が損なわれるかもしれない。

 しかし、本当にいざと言う時には、アニーが即応する。

 でも、アニーの存在を知っているのは、弘子と、今は道子(総督閣下)だけだけれど。

 

 そこで、つまりこれは、帰宅後二度目の訪問なのである。

 ひとつ目の関門は、問題なくパス。

 二つ目は、『帰宅のご挨拶』で、これもパス。

 ここまでは、先ほどもそうだった。

 問題は、この次だ。

「お姉さま、弘子です。ご挨拶にお伺いいたしました。お姉さま、お願いですから、入れてください。」

 さきほどは、ここでまったく「ノーコメント」だった。

 けれども、今回は違った。

 『かちゃっ!』

 と、鍵が外れた。

「どうぞ、お入りなさい。」

 洋子の声がした。


 ************   ************

































  **********  幸子さんとの対話 (4章ー1) ************


「あらら、やましんさん。さっそく第四章を書き始めましたねえ?」

 幸子さんがお饅頭を抱えて、言った。

「はい。でも、これは試験的に、やってみました、位ですが・・・」

「そうそう、そのくらいで、リラックチしてやりましょう。」

「はあ、「りらっくち」ですね。」

「そうそう。」

「ありがとうございます。そうします。」

「あ、幸子用事で、ちょっと池に帰ってきますけど、大丈夫、すぐ戻ってきますからね!」

「あ、はい。どうぞ」

「じゃやね。」

 幸子さんは、すうっと天井に消えた。

 仕事が入ったのだろう。

 久しぶりだなあ・・・。

 今日は一人か。



  









 













 















































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