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レッスンにも見事なまでに身が入らず気がのらず、とりあえず通っていればお金になるはずの先生から「やる気がないのにこれ以上続けても、無駄かもしれないわね」とまで言われるようになった。
結局先生はそのまま去ってしまった。
母の落胆ぶりは私の想像をはるかに超えるほどで、一時期は本気で自殺してしまうのではないかと思ったものだが、時間とはよくできたもので、少しかかったがそのうちに落ち着きを取り戻した。
しばらくは母一人がピアノを弾いていたが、やがて妹が大きくなると母は妹にピアノを弾くように薦めた。
先生がまた呼ばれて、妹は前の私と同じく一から基礎を習い始めた。
私との違いはすぐに現れた。
ピアノがすっかり気に入ってしまった妹は、私とは比べものにならないほどピアノに熱中した。
それはとりつかれたと言っていいほどだった。
先生も妹がいたく気に入ったようだ。
一生懸命ピアノにうちこみ、教えたことをどんどん吸収していく生徒なのだから。
その上に才能までも人一倍あるそうだ。
「私の今までの生徒の中でも、一番かもしれません」
先生はそう言いながら、私の顔をちらと見た。
一瞬のことだったが、そこにある種の軽蔑が含まれていたことを、私は見逃さなかった。
先生以上に喜んだのが、母だった。
妹がただ練習しているだけなのに、それを本当に嬉しそうに見ているのだ。
時には涙を浮かべることすらあった。
それを見た私の気分がすぐれるわけもない。




