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その2

 ややあって、また同じことを考えるアリス。

「ここはどこ?」

 図書室にいたハズが突然森の中へ。あり得ない出来事だった。科学全盛のこの時代に魔法のような非科学的な出来事はあるハズがない、あるハズがない、あるハズがない?

 あるハズが無いハズ……のハズだけど……アリスには心当たりが一つだけあった。

「……玉藻先生」

 非科学なことを可学の力でなんとでもしてしまう学校四天王可学狂師”玉藻妖狐“先生――彼女ならばなせる業だ。

 だが、冷静になってここに来る前のことを思い出す――。

 アリスは図書室で本の整理をしていた。そこで、本棚に『アリスの左』を炸裂させて本棚が自分に襲い掛かってきた……。

 結論。自分は本棚に押しつぶされた=気絶=ここは夢の中。可学よりも現実的な解釈だった。

 それに着ている洋服だって何時の間にか学校の制服から『不思議の国のアリス』みたいな格好になってしまっていた。

 自分の名前と格好がぴったり合ってしまうなんて下手な冗談みたいで、なんだか可笑しさが込み上げて来る。こんなことが起るなんて、やっぱり夢なんだとアリスは思った。

 不適な笑みを浮かべるアリスは腕を組んで企みを考える。夢の中であればアタシが支配者であり、アタシを中心に世界は回っていて、全てがアタシの思うがままにできる。と考えてた彼女は何の不安も抱かず、むしろこの夢を楽しんでやろうと思った。

 森の中は光と新緑に包まれ清々しく、怖い森のイメージは全くない。森とゆかいな仲間たちと言った感じだ。

 怖いイメージがなければ森の探索なんて楽々と考えたアリスは森の中を取り合えず適当に歩き出した。だが、もし、この森がこわ〜い、こわ〜い森だとしても彼女は突き進んだだろう。彼女には基本的に怖いものはない。ただ弱点はこれ。

「あ〜もう疲れたぁ〜、何でアタシの夢の中でこんなに疲れなきゃいけないの!? アタシの夢の中ならジャンボジェット機くらい出てきなさいよ」

 直ぐ疲れた。これが弱点。

「もう、歩けな〜い!」

 バタンとおしりからアリスは地面に座り込んだ。その顔に付いているいつもは可愛らしい大きな瞳は、両端がつり上がり子悪魔チックな表情をしていた。

「お腹も空いたぁ〜! 今ごろ本当なら葵ちゃんとおいしいケーキを食べてたのに! 夢はもういい!!」

 森の中に叫び声が木霊する――。だが、夢は覚めない。

「覚めなさいよ!」

 これは誰に言っているわけでもない。やはり、覚めない。

「もう、いいわよ。……ったく、なんで……ムカツク……」

 歩こうと決めたのアリスの判断だったハズなのに? 彼女は誰かに愚痴をこぼすように独り言を言って、子悪魔チックな表情から凶悪な表情へと変貌して、ため息を付き空を見上げた。

 そよ風と森のせせらぎを聞いて、しばらくの間ぼーっと木々の合間から見える空と流れ形を変えていく雲を眺めていると、アリスは突然誰かに声をかけられてびっくり仰天した。

 上を見ていた頭をゆっくりと下げる。声をかけた人物はアリスのまん前にいた。

 アリスの目線の先には、何だか仮想大会にでも今から行くような不思議な格好をしている、金髪で秀麗そうな若い男の人が堂々と立っていた。そう、その人の格好を例えるなら――絵本に出てきそうな王子さまみたいだった。

 王子さまは身振り手振りを不必要に大きく派手に動かしてアリスにしゃべりかけてきた。――アリスの学校のベルバラ2号だ。

「ボクは王子さまだ!」

 わかりやすい一言目だった。だが、この王子の教養が疑われる発言かもしれない。

「だから?」

 アリスは思わず聞き返してしまった。それに対して王子はまた不必要に動いてから返事を返す。

「だから、女の子が独りで森の中で何をしているのだ?」

 こんな質問は今初めてした。『だから』もなにもない。

 相手が応じならばこっちは、

「実はアタシお姫様なの。今はお父様と喧嘩してお城を抜け出してお忍びで旅をしているのぉ〜」

 と適当な事を言って答えてみた。

「それはホントか?」

 アリスは無言で王子のことを熱い眼差しで見つめてブリッコ風に頷いて見せた。それを見た王子はアリスの話を鵜呑みにしてしまった。

「そうか、それは良かった。ボクは次男だから、どこかのお姫さまと結婚して玉のこしに乗らなくてはいけなかったんだ。それで今から怪物に捕まった妖精のお姫さまを助けに行こうと思っていたところだったんだよ。でも、丁度いいところで君と出逢ったし、やっぱり妖精より人間のお姫さまの方がいいし、危険を冒すのも正直イヤだったからね。そこでだ、君、ボクのお妃にならないか?」

 長い前フリの求愛あった。

 腕を組み首を傾げるアリス。彼女の頭の中では今このようなことが考えられている。

 もし、アタシがコレと結婚したら、アタシがお姫様じゃないってバレるしなぁ〜。顔はまあいいけど、性格がサイテーなのよね。それにチョ〜可愛いこのアタシだったら、もっといい男と結婚できるしぃ〜。

 で、結局考えた末にアリスは、相手の求愛の申し出を突っ返した。

「アタシは世界一可愛いから、結婚するなら世界一いい男じゃないと嫌!」

 しかし、王子はそれでも求愛して来た。

「そんなこと言わずボクと結婚しておくれぇ〜」

 白い歯をキラリーンと輝かせながら王子はアリスに差し迫る。

「イーヤッ!」

「そんなこと言わずぅ〜」

 王子の顔がアリスの眼前まで来てどアップになる。

 ざけんじゃねぇよ、アタシはねえ、しつこい男が嫌いなんだよ。アタシに殴られる前にさっさと面下げて帰ったほうが身のためよ。とアリスは今思っているかもしれない。

「お願いだよぉ、ボクと結婚してくれよお」

 アリスの眉と右口端がピクリと痙攣したように動いた。カウントダウンの開始合図だ。

「結婚! 結婚!」

「…………」

 目は笑わず、口だけで笑うアリスの拳は強く握られプルプルと震えていた。爆発はもう近い。

「結婚しようよぉ〜」

「……しつこいヤローは嫌いなんだよっ!!」

 アリスの右手が大きく振りかぶられ王子の顔に強烈な平手がヒットする。王子の視界は真っ暗になり意識が飛ぶ。ついでに王子の身体も宙を飛ぶ。

 飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで、回って回って回って落ちるぅ〜♪

 王子の身体はもの凄い吹っ飛び方をして地面に墜落して、ピクピクと痙攣した後、動かなくなって口から泡を吐いた。

「あっ……」

 アリスは自分のした行為に唖然としてしまったが、自分はそんなに強く叩いたのだろうかと思いつつ、夢だからと勝手に納得してしまった。アリス的に夢という解釈は何でも解決してくれるのだ。

 とりあえずアリスは王子に近付き自分の耳を彼の心臓の位置に当てた。ドクドクと心臓の流れる音が聴こえる。

「な〜んだ、平気そうじゃん」

 相手に平手打ちを喰らわせておいて『な〜んだ、平気じゅん』はないと思うが、アリスは男の股間を平気で蹴り飛ばすような初々しい16歳の女の子だ。このくらい対したことではないのだろう。

 一般人的にはひどいことをしたアリスは立ち上がると、身体をめいいっぱい上に伸ばし息を止め、ゆっくり息を吐きながら伸ばした腕を下げ、全身の力を抜いていった。

「さ〜てと」

 まあ、とにかく王子はまだ生きてるみたいだし、どーせこれ夢だし、などどアリスは思って王子をそのまま森の中に放置しておくことにした。

「どーしよ」

 アリスはこれから何をしようと考えた。王子さまが妖精のお姫さまを助けに行くって言っていたから、自分が気絶した王子さまの変わりにそのお姫さまを助けに行こうと考えた。だが、どこに行ったら、そのお姫さまがいるだろうとアリスは考えたが、自分の夢なんだから、どうにかなるだろうと思い適当に歩き出した。

 しばらくして、アリスの前に可愛らしいウサギが現れた。でも、普通のウサギじゃない、二本足で立ち耳の先まで入れるとアリスと同じ位の大きさで、頭には小さめのシルクハット、茶色い毛の上にジャケットを羽織り、手にはステッキを持ち、首から懐中時計をぶら下げていた。

 ウサギはアリスを見ると片手を軽く上げて声を掛けてきた。

「やあ」

「こ、こんにちわ」

 当然のことだがアリスはウサギと会話をしたのは初めての経験だった。

 ウサギはアリスとのあいさつが終わると遠くを見つめ何かを待っているようにぼーっとし始めた。

「なにしてるの?」

「べつに」

「べつにじゃないでしょ、こんなところにいるなんて?」

「ウサギが森にいるのは普通だと思うけど?」

 普通じゃないウサギにまさか普通なんてことを言われるなんて思ってもみなかった。なんか不思議な気分だ。

「あなた名前なんて言うの?」

「ウサギ」

「そうじゃなくって」

「君が人間だからボクはウサギだろ?」

「はぁ?」

 ウサギの言ってることはアリスの理解の範疇を超えていた。意味がわからない。

「ボクにしてみれば世の中なんて、ウサギかそうでないかの2つに分けられるんだ」

「はぁ?」

「だからボクはウサギなのさ」

「意味わかんない」

「そうだ、ここを真っ直ぐ行くとウサギではないのがいるよ」

 ウサギの持つステッキの先は森の奥深くを指し示していた。

「あっちに誰がいるの?」

「ウサギではないのだよ」

「はぁ?」

「じゃあ、ボクは紅茶を飲みにお茶会に行って来るから」

 ウサギはぴょんぴょん跳ねるように二本の足で歩き、どこかに消えてしまった。

 残されたアリスの頭の上には『?』マークがいくつも浮かんでいる。世の中には不思議なこともあるものだ。

「……そうだ、夢だった」

 アリスは再び歩き出した。今度はウサギが教えてくれた方向に歩いてみたのだが、なにやら歌声が聞こえてくる。

 今度アリスの前に現れたのは歌を歌っている以外は普通の3匹のリスだった。

「こんにちわ、あなたたち何で歌なんて歌ってるの?」

 3匹のリスたちは歌うのを止め、順々にアリスの方を振り向き話し始めた。

「リスだって時には歌いたくなることだってあるさ」

「リスが歌を歌うのは変かい?」

「歌わないリスがいるんだから、歌うリスもいるに決まっているだろ?」

 決まっているだろと言われても困る。歌わないリスがいるから歌うリスもいるなんて理屈今まで聞いたことがない。

「そんな理屈わかるわけないでしょ!」

 また3匹のリスたちはアリスの言葉を受けて順々に話し始めた。

「わかるわけないなら、その逆もあるさ」

「わからないの逆はわかる」

「だから君もわかるさ」

 余計わからなくなった。

 さっきのウサギといい、このリスたちといい、この森にいる動物はみんなこうなのだろうか? だったら早くこの森から出たい、頭がおかしくなる前に……。

「この森の出口を教えて欲しいんだけど?」

 またまた3匹のリスたちはアリスの言葉を受けて順々に話し始めた。

「入り口があったなら出口もあるさ」

「でも、入り口が無かったなら、出口もないね」

「出口がないなら、探しても見つからないよね」

 質問をしてまともな答えが帰って来ないことは察しがついていたハズなのに、質問をしてしまった自分をアリスはひどく後悔した。

 こんなリスと話していても日が暮れてしまうと思い、アリスはリスたちに何も言わず再び歩き出した。

 アリスの後ろでは、またリスたちが歌を歌い始めた。

 リスの歌声が聞こえなくなり程なくして、アリスの目の前に、まるで彼女を最初から待っていたように、羽を生やした小さくて可愛らしい妖精が現れた。

 その妖精を見た瞬間、アリスは思わず声を張り上げた。

「あっ!!」

 アリスは驚いて声を張り上げたのだが、その理由というのが、この妖精と全く同じ妖精を絵本で見たことがあるという驚きからだった。

 大きな声を出して驚いたアリスに一瞬ビックリしたようすの妖精だったが、すぐに笑顔でアリスの顔の前まで羽をはためかせ飛んで来た。

「人間さんこんにちわ」

 この時アリスは『ははーん』と思った。

 この妖精の絵は、小さいころお母さんに読んでもらった絵本の挿し絵に描いてあった妖精と同じで、さっきの王子さまも、その絵本で見たことがあったような気がする。

 絵本の話の内容と題名はよく思い出せないけど、きっとこの夢はその絵本をモチーフにしたもの何だとアリスは思った。でも、あんなウサギやリスは絶対出てこなかった。つまり絵本どおりでもないということだ。

「人間さん、あなたはなんでこの森の中にいるの」

「あたしの名前はアリス。超一流の美少女魔法使いで、妖精のお姫さまが怪物に捕まったと聞いて助けに来てやったの」

 アリスはまた適当なことを言った。でも妖精はアリスの言ったこと全部を鵜呑みにしてしまった。

「それは、それは、では妖精の隠れ里まで私が案内しますのでついて来て下さい」

 こうしてアリスは妖精の隠れ里まで行くことなった。

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