親友
久しぶりの投稿をお許しください。
体調不良や諸事情により、3週間ほど休ませていただきました。
今は元気で時間も増えたので、少しずつペースを上げて更新したいと思います。ですが、週一での更新は難しいので気長に待っていてくれたら嬉しいです。
俺には親友がいる。親友とは、小学生の時からの付き合いだ。小学校・中学校・高校、そして会社まで一緒だ。
そこまでくると、付き合っているのでは?と思うかもしれないが、実際に俺たちは一度も付き合ったことがないし、恋愛の話すらしなかった。
そんな親友の名は、佐々木優望。
これは、紅乃葉と出会う前の話。
――****――
「ねぇ、迅聿」
「なんだ?また、仕事が終わらないとか言って手伝わせる気か?俺は手伝わないからな」
「えぇ~?いつも手伝ってくれるのに?手伝ってくれないんだ・・・ドケチ」
「あのな、仕事というものは自力で取り組むものだということを知っているか?」
というか今さらりとヒドイこと言ってなかったか?
ドケチってなんだよ。ケチじゃないし、“ド”いらねぇし。当たり前なのにこんなヒドイこと言われる俺って可哀想だよな。自分で言うのもなんだけど。
「冗談だよ?冗談。そうじゃなくて、もうお昼の時間だから一緒にどうかなって」
ちらりと時計に目をやると12時だった。
「もうそんな時間か・・・」
「ご一緒しても?」
「おす・・・ん?」
優望に「お好きにどうぞ」と言おうとしたら、キラキラと瞳を輝かせ俺を見つめる男性社員がいた。
ー否、小高知智がいた。
「小高さんじゃありませんか、どうかしましたか?」
「ヒドッ!!」
白々しく、丁寧に営業スマイルで話しかけると涙目でそんなことを言われた。
「も~、迅聿先輩!俺も一緒に同行しても・・・」
「お前が来るなら俺は行かないぞ?」
「そんな~・・・、じゃあ優望は?」
「へっ?」
いきなり知智に呼ばれたものだから、本人(優望)は驚いていた。
待て、そんな驚く必要あるか?今の話を聞いていたら即答で答えられただろうに。なにか深刻な悩みが彼女にはあるのだろうか。
「だーかーらー、俺も一緒に飯食いに行って良いよな?」
「じ、迅聿の許可が出たなら良いんじゃない?」
「み、皆ひでぇ」
まぁ、結局なんやかんやで知智は1人寂しく昼を過ご・・・さなかった。
わかってると思うが、俺と優望と知智は一緒に昼食をとることになった。
――***――
それから、社員食堂に移動した俺たちは仲良く・・・とまでは言わないが会話しながら食べていた。
「もぅ、迅聿と2人きりでご飯を食べれると思ってたのに~」
そんな訳のわからんことを口にしている優望は頬を膨らませながら、オムライスの上にハートをケチャップで描いていた。時折、楽しそうな鼻歌が聞こえてくることに怒ってるのか、怒ってないのか疑問が浮かんだ。
「そんなケチケチすんなよ~。昼飯食う仲だろ?」
いつも通りの口調に戻った知智は、俺が座ってる席の(机をはさんだ)目の前にいる。そして、トンカツ定食を食べている。美味そうだな。
「はぁー?ご飯は今日初めて食べました~。だいたい小高くんが思ってるような仲じゃないし!」
・・・ったく、いつになく終わらなさそうな会話だな。移動中もこんな感じだったし、俺の息が詰まるから止めていただきたい。
「そのへんにしとけ。ここは食堂だ、声量を下げろ」
「「・・・はい。ごめんなさい」」
「よろしい」
これで、ギャーギャー騒いでいるのを聞かずにすむな。飯が不味くなるとこだった。
あ、因みに俺はざるそばだ。夏は良いよな~。現在はそんな時期じゃないけど。
「ゆーみー、いつまで拗ねてんだよ」
そんな言葉を聞いて、ふと横目で優望を見ると不満そうな顔をしていた。
「優望って知智が嫌いだっけ?」
いつも仲良くしていたのにと思いながら質問をしてみた。
「え?そうなの・・・?」
その質問が本当だったらとでも考えたのか知智が動揺している。いや、ショックを受けていた。
「へ?あ、違うよ?」
ショックを受けすぎている知智に気づいた優望は、慌てて否定した。まぁ、だろうなとは思うが・・・。
「じゃあ、なぜゆえお前はそんなに不満そうなんだ?」
「え?い、いやそれは・・・」
途端に優望の言葉が途切れた。それに対し、俺はすかさず「それは?」と聞き返す。
「う・・・。だって、今日は迅聿の・・・」
「え?」
今日って何かあっただろうか。
「あ!!」
「ばかっ!デカイ声出すな!」
ったく、周りの人の目がいたく感じるのは気のせいだろうか。
「お前はなんで・・・」
「知智!!」
知智の言葉を優望が遮った。
はぁ、俺がなんだって言うんだ。
「な、なんでもないからね」
知智が大人しくなると優望がつぶやいた。なんでもなくないだろと言いたいが、優望がそう言う時は触れない方が良いということだから俺は頷くしかなかった。
――****――
仕事に皆が集中する午後の時間・・・。俺は昼食時の時の会話がリピートされて全く集中できなかった。あともう少しで仕事が終わろうとしているのに・・・。
―10分後―
「ひゃっふぉっー!終わったぁ~!!」
「ゴホンッ」
「あ、すみません」
仕事が終わったかと思うと真っ先に知智が大声で叫んだ。「ゴホンッ」と咳払いしたのは勿論、お偉いさん。これに懲りて当分は叫ばないことを密かに願おう。
にしても、このあと暇だな。久しぶりに知智と飲みに行くかな。
「なぁ、知智」
「ん?」
「一杯どうだ?」
俺が、いかにも“クイッ”という効果音が出そうなジェスチャーをすると、両手を頭の上で合わせてきた・・・ということは。
「ごめんっ!!」
「お、おう。そうか」
今まで、百発百中だったのに。あの知智が、俺の誘いを断った・・・だと?
驚きと動揺が隠せない。
「本当にごめん!今日は・・・えと」
「ん?」
知智がおかしい。「今日は」で途切れたぞ?心なしか、知智の目が泳いでるような気が・・・。
「ど、どうした?」
「あ、えっと・・・彼女!」
「え?」
「彼女とデートする約束があるんだよ!いや~、モテる男はツラいよな~」
いや、知智が言うとブーメランでしか無いのだが・・・言ったら立ち直れないくらいの心を持っている知智が可哀想なので言わないでおこう。というか、モテるなら結婚しない理由がわからない。
ん?モテる?あの知智が?・・・そう言えば。
「あ、あのさ」
「ん?な、何?そろそろ時間がヤバイんだけど」
「いや、知智って一昨日くらいに彼女と別れたって言わなかったか?」
「・・・あ」
途端に知智の顔から血の気が引いた。と、同時になぜか正論な発言をしただけの俺が罪悪感を感じた。
「い、いや~。そそそれがさ~、その後すぐに、かか彼女ででで、でできたんだよ?」
今の知智の発言で嘘だということが理解できた。それにしても、動揺しすぎて最後が疑問形になってるぞ。せめて、ポーカーフェイスをつくって欲しい。
おかげで「ソ、ソレハヨカッタネ」と俺まで緊張した感じで返してしまった。
「じゃ、じゃあ俺もう帰るっ!!」
そう言って半泣き状態の知智は走って帰っていった。どこに行ったかは知らないけれど。
残された俺と優望は呆然としていた。ま、会社の中が2人ってわけじゃないけど。
「なんであんな嘘ついたんだ?」
ぽつりと呟いた言葉に優望が「あ、あはは・・・はぁ」と重たげなため息を残し帰る準備をしていた。
そんなため息をするほどの立場だったのは知智と俺な気がするのだが・・・気にしたら負けだな。
「あーあ、仕方ないな。2人で行くか?」
「ふぇ?」
「だから、俺と優望で飲みに行くか?って聞いたの」
「うーん、えと・・・今日は行かない」
「ふーん。じゃ、帰ろうかな」
いつもなら即答で着いてくるのに、今日は悩んでるとは珍しいこともあるもんだな。
「待って!」
「ん?うぉっ」
優望のに呼び止められたので、振り返ろうとしたら背中にしがみつかれた。
か、可愛い・・・じゃないだろ俺!惑わされるな!しっかりしろ俺の理性!!
「あ、あの・・・どうかしましたか・・・?」
「ひゃっ!?ご、ごめん・・・ぇ、えと」
「ん?」
「の、飲まないとは言ってない・・・」
「へ?」
「だ、だからっ・・・外じゃなくて、私の部屋で飲まない?」
「っ・・・」
「た、たまには良いよね?いつも迅聿の家だから・・・ダメ?」
や、やばい。そんなに瞳を潤ませながら上目遣いで言われたら断る訳には行かないだろ・・・。
「・・・優望のくせに生意気」
からかい半分に頬に触れてみた。
「っ!?・・・ひぁっ・・・んっ」
「しっ・・・ここ会社。誤解をまねくような声出すな」
優望の口元に人差し指を当てた。
「じ、迅聿がいきなりエロい手つきで頬を・・・」
しどろもどろに話す優望を見ると、得をした気分になる。
「早くしないと車に乗せないぞ~」
「あぅっ」
そんな会話をしながら、軽い足取りで俺と優望は駐車場に向かった。
車に乗り込むまで、顔を耳まで赤く染めながら「迅聿のばかぁ、誤解をまねくとか私の台詞だし」とか「へへ・・・私の頬に、触れて・・・」とかとか俺の後ろで呟いていたのは、優望以外は知らない。
――****――
「お邪魔しまぁす」
車から30分くらいの優望の家もマンションで、109号室。
女の子らしいシンプルな部屋なうえ散らかってないし、居心地が良い部屋だから返って緊張してしまう。
「えへへ♪久しぶりだね・・・迅聿が来るのは」
「あ、ああ。そうだな」
「ふふっ、~♪」
ぎこちない感じで答えてしまったが、そんなことを気にせずに優望さんは鼻唄を歌っていた。
「あ、そこ座ってて♪」
「お、おう」
“そこ”とはソファーのことで、俺は何回も来たことあって楽な体制で座らせてもらった。
「あ、ついでに電気消してくれる?」
「は?」
優望がキッチンに行って女性って良いなぁと感心していると、意味不明な指示をされた。
「早く電気消してよ~」
「は!?ちょ、待て!何で消すんだよ!?」
幻聴じゃなかった。俺の親友は酒を飲んだり、食事をするとき電気を消すようになったのか・・・闇鍋でもする気か!?
「も~、分かってるくせにぃ」
「いや、わかんねぇよ!」
俺に何を求めてんだよ!
というか、ニヤニヤしながら俺を見るな!・・・ったくこれから何が始まるんだ?
ま、まさかそんな。いやいや優望はそんなやつじゃない!よからぬ妄想は排除するんだ真白迅聿!
「じゃあ、仕方ないか」
「え?し、仕方ないって?・・・ちょ、優望さん!?」
「まぁ、明るくってもできるし・・・」
な、なな何ができると言うんだ?
普通は暗くして・・・ってダメだ!アレしか思いつかない!!
「迅聿、目をとじて?」
「へ?」
優望がキッチンから顔を出して、そう指示してきた。
な、なんで目をとじる必要が・・・?
「いーから、早くとじて!!」
「ひぃっ!!」
優望の気迫におされ、慌て目をとじると・・・甘い香りがした。
優望の匂い・・・ではないな。
―カチッ
ツンとした臭いが・・・火?
「ゆ、優望?」
「あけていーよ♪」
ゆっくりあけると、“迅聿お誕生日おめでとう”と書かれたケーキが目の前にあった。
火の臭いは、ロウソクにつけたときの臭いだったのか。
「あ、今日・・・俺の誕生日だったんだ」
「・・・やっぱり覚えてなかったんだ」
これを考えると知智の行動が理解できた。
「だから、知智と優望の様子が変だったのか」
「あはは・・・さっ、消して消して♪」
「お、おう」
ロウソクを消すと、無邪気な顔で優望が笑っていた。
「・・・祝ってくれて、ありがとな」
「ううん、嫌じゃなきゃ来年もやるからね」
「お、おう」
「楽しみにして」と言ってケーキを食べやすいサイズに切ってくれた。
甘くて美味しい、俺好みのショートケーキはワインと共になくなっていった。
「ふぅーっ、おかわり!!」
「ほら見て!ほぼ迅聿が食べちゃったよ」
優望が驚いたように言うのも無理はない。なぜなら、俺らはホールケーキを30分でたいらげたから。ほぼ“俺”だけど。
「ははは、美味いものは早くなくなるんだよ」
と、言いたくなるのも当然。優望は料理が上手で、中学と高校では“お嫁にしたいランキング”の上位だった。
「もぅ、ありがと♪」
「「・・・」」
・・・にしても、会話が続かない。さっきから少し話して終わるの繰り返しだ。
うーん、ネタがないな。
「ご飯、どうする?」
「その前にケーキ食べたしな」
「ご、ごめんなさい」
申し訳なさそうに優望が謝った。
「別に美味かったら良いけど」
「・・・へへ♪」
不思議なことにお腹は空かないし、酒も飲んだしな。
ただ、睡魔が・・・
「ふぁ~あ」
「眠いの?」
「お前は眠たくなさそうだな」
「ま、まぁね・・・へへ♪」
いや、なぜ照れるんだ?
「まぁ良いや。眠くなるような話をしろ」
「ここに泊まるの?」
「ダメなのか?」
「べ、別に良いけど・・・」
「じゃ、話をしろ」
上から目線で言うと、頬を膨らませ「わかりましたよー」と考え始めた。どうやら本気で話をしてくれるらしい。俺の親友は優しいな。
「んー、質問でも良いの?」
「どうぞ」
どんな話になるのか楽しみにしていると、優望がもじもじし始めた。
「どうした?」
「ん~、ちょっと・・・ね?」
「ね?」って言われても、そんなに躊躇するような質問なのか?
「よし!女たるもの、ここで挫けたらダメよ・・・うん!」
くるりと俺に背を向け何かを言った・・・かと思ったら、すぐさま俺に向かって座り直した。
女の子座りは、やはり可愛いものだな。
「えっとね・・・今まで一番ドキッとしたことは?」
「は?」
予想外だった。まさか、恋愛系の質問をすると思わなかった。
「ノーコメントで、そういう質問は却下な」
「ひどっ!自分から始めたのに理不尽な」
「ジト目で言うな。大体わかるだろ?察しろよ」
「ツンだ!絶対に喋ってやんないんだからっ」
拗ねられた。めんどくせーと軽く思うが、そういう優望も悪くないな。
・・・ちょっと可愛いかも。
―つんつん
拗ねたので、頬をぷにぷにと押してみた。
なぜか俺だけ、頬っぺを指で押したりして遊ぶと赤くなる。面白いよな。
「ふんっ!もう理不尽な迅聿なんて知らないもんっ」
喋らないと宣言しておいて数秒後に喋っているなんて・・・。
まぁ、これ以上イジるとめんどくさくなるから仕方ないか。
「人のタイプ聞いて、バカ正直になろうとした奴。」
「ふぇ?」
「も、もう寝る」
「え?でも・・・それって」
「・・・・・・」
「寝ちゃったの?」
優望が迅聿の顔を覗くと本当に寝ていた。
「昔から寝るのは早いよね・・・でも、起きてそうな予感しかしない・・・」
ここまで寝るのが早いと“の●太”に追い付いてるかもしれない。
そう言って、優望はタオルケットを持ってきて迅聿にかけた。
「・・・さっき言ってたのって私のことだよね?」
静かに寝息をたてている迅聿に向かって小さく呟いた。
「忘れてよ・・・そんな思い出。覚えてないと思ってたんだから」
―小学2年生の時―
♪キーンコーンカーンコーン
「じゃあな」
「ばいばーい」
口々に「さよなら」など「また明日」という言葉を交わして帰る下校時間。
でも今日こそは、あの子に聞かなきゃ。
「ま、待? これが迅聿と初めて話した日。いつも友達を通してじゃなきゃ、話せなかった私だったけど・・・友達に後押しされてやっと話すことができた。
「ま、まま真白くんっ」
「なに?」
「あの・・・その」
私がしどろもどろになっていると、「一回だけなら何でも話す」と言われた。
「っ!・・・ほんとに?」
「うん」
「じゃあ、真白くんの好きなタイプは?」
「え?んー、」
迅聿は「そうだなー」と言いながら一生懸命に考えてくれた。
今ではここが原点だったと言えるくらい嬉しかったことを、私は覚えている。
「んー・・・髪は和泉先生みたいな感じ?(ハーフアップ)」
「私もあれ可愛いと思ってた!・・・へへ♪」
「んで、優しくてお姉さん的な感じで、たまに甘えてくる子?あとは・・・」
この日、迅聿は好きなタイプ(可愛いと感じること)等々を話してくれた。
翌日、私は雰囲気だけでもと迅聿の好きな感じに挑戦してみた。二つ結びからハーフアップに変えたので、皆も可愛いと言ってくれて少しでも近づけたかなと感じた。
中身もそれからは、お姉さんみたくなろうと奮闘して今に至っている。
―現在―
ケーキ食べたあと直ぐに寝て30分が経つ。
「迅聿」
あれから何年経ったのだろう。
私は、想いが少し以上に重いかもしれない。でも、好きな人に近づくにはこれしか無かったのだ。
「私の初恋の人知ってる?」
「んー、、、」
―ビクッ
「ふぅ・・・すぅ」
「ね、寝言か・・・」
ビックリしたぁ・・・。
「私も寝ようかな。・・・おやすみなさい♪」
初恋なんて関係ないかもだけれど、実ったらすごい幸せだと思う。
初恋が実る日を夢見て、日々を過ごしています。
初恋の貴方は覚えてるのかな―。
『なぁ、おれの名前知ってる?』
『真白くんの名前は迅聿・・・でしょ?』
『“真白くん”じゃなくて迅聿って呼んでいいから』
『っ!?・・・わ、わかった』
『よろしくな優望』
誤字脱字があったり、よくわからないところや無理矢理っぽい場面がありましたら、感想で私に知らせてください!
ダメダメな文章かも知れませんが、頑張って努力していくのでよろしくお願いします!!