1
『どうしてこんなことになってしまったの』
『ねぇ?わたしはどうすればいいの』
『ずっと一緒にいるって言ったじゃない』
『あなたのいない世界にいったいどんな価値があるというの?』
深い深い絶望を感じる。
胸の奥のさらに奥が引き裂かれる痛み。
心が死んでしまいそうな、痛みだ。
頬を伝い続ける涙は止まることを忘れてしまっていた。
どうしてこうなってしまったのか。
どうしてこうなるしかなかったのか。
どうすればよかったのか。
どうすれば・・・どうすれば・・・どうすれば・・・
同じ言葉が頭の中でグルグルと回る。
そして、僕は目を覚ました。
深い深い絶望と、悲しみに沈んでしまった心のままで――
「・・・またあの夢か。大人になってからは見ることもなかったのに」
「『あなたのいない世界にいったいどんな価値があるというの?』か」
無意識に僕は呟いていた。
救いを求めるためでもなく、誰かの応えを求めるためでもなかった。
――だが、その求めに応える声がした。
こんなことは初めてで僕は驚いていた。
そして、束の間の白昼夢が僕の意識を攫う。
《愛しい人よ。どうか絶望の闇に囚われないでおくれ。必ずやわたしはお前の元へと還る》
《何処にいてもどんな姿になっていても、わたしはお前を必ず見つけ出す》
《わたしの還りを待っていてくれ。お前とわたしが愛し慈しむこの世界で》
《愛している。お前だけを》
涙が溢れそうになり、ぐっとそれを堪える。
その声の主が誰であるか、僕は知っていた。
魂に刻まれた記憶が【愛しい】と叫んでいる。
僕は窓の外へ視線を向けた。
そこには美しい蒼穹がある、空を翔れば心地好いことだろう。
「ねぇ?あなたはどこにいるの?」
唇が紡いだ言葉に僕は愕然とした。
そして、今の僕は【琥珀】なんだ。と強く強く意識する。
「・・・何を言ってるんだろう。僕は」
「夢に囚われすぎだ。ただの夢だ。そう、ただの夢なんだから」
必死にかぶりを振る。
そう、夢なんだ。これはただの夢だ。
叶うことのない、ただの夢なのだ。
《愛しい人よ。どうか絶望の闇に囚われないでおくれ。必ずやわたしはお前の元へと還る》
《何処にいてもどんな姿になっていても、わたしはお前を必ず見つけ出す》
《わたしの還りを待っていてくれ。お前とわたしの愛し慈しむこの世界で》
《愛している。お前だけを》
どんなに振り切ろうとしても声は続ける。
まるでそうする時が来たかのように――
「どれだけ待てばあなたはわたしを見つけ出してくれるの?」
「わたしはもう、何度も世界に還っていて、あなたをずっと待っているのに」
こぼれ落ちる言葉に僕は溜め息をついた。
ダメだ。このままでは支障が出る。
もう僕は子供じゃない。龍帝なのだ。
しっかり自分を【琥珀】を保たなければいけない。
「・・・・・・今日の僕は少しおかしいな。これじゃ子供の頃と同じだよ」