終幕
「恐かったけど、まあ面白かった……かな?」
雛子はショップで交換したスマートフォンで、親友であり零夜の妹である遠間朔夜に電話していた。
あれから3日が経っていた。
結局のところ、雛子たちはあれからすんなりと無事逃げのびることができた。
そして、タイラーは、校舎内で倒れているところを発見され、建造物侵入の犯人として確保されとのことであった。
(てっきり死んだと思ってたのにね……)
雛子の目の前で両腕を斬り飛ばされ、顔をボコボコに殴られていたはずだったのが、テレビの報道では外傷は一切ないものの意識不明であり、現在は警察病院にて入院中とのことであった。
不可解ではあったが、それをいい出せば、あの夜は不思議な事が多すぎた。
そのせいか、今ではあの夜起きたことが自分の夢や妄想じゃないかと思ってしまうこともあった。
『じゃあ、また肝試しいきます?』
「い、いや、もういい、もう一生分の肝試しを楽しんだから」
いろいろ恐い思いをすれば、五体満足で生き残った今では、いずれはいい思い出になるとは思う。
実際に起きたことなのかも、正直なこところわからない。
だが、そう思いつつも、3日経った今でも、あの夜のことを思い出すと体が震え出すのはきっと、あの夜の出来事は、すべて真実であり、心が思いだすのを拒否しているのだろう。
表の人間は、決して闇と相容れないのだ。
そんな経験をしても、雛子の心が恐怖に塗りつぶされずにいるのは、きっと……
「ね、ねえ、朔夜、お願いがあるんだけど……」