集結
朔間緑子は上空からの騒音に合わせて、授業中であるのにも関わらず窓際に駆け寄った。窓を開け、手を伸ばした。その先に、長く伸びた手が垂らされた。迷わずつかみ、引き上げられる。ヘリコプターの扉にしがみ付いた。緑子の握力は、ゴリラと同じく三〇〇キロを超える。しかも、体は軽いため、つかめる場所さえあれば、どれほど高所だろうと怖いとは思わない。
「ありがとう、華麗ちゃん。あっ、美香ちゃん」
「……あの先生どうなったの?」
「知らない。職員室に呼び出されたみたい」
体の大部分が外に出たままにっかりと笑う緑子に、篠原が笑い返した。互いに親指の腹を見せ合う。数ヶ月前には、考えられなかった光景だ。
「で、次は誰のとこに行く?」
早房の問いに、緑子は自分の体を引き揚げながら答えた。
「残りは、波野さんだけでしょ。京子ちゃんなら、ここにいるし」
乗り込んだ緑子の足には、飯塚京子が捕まっていた。しがみ付いていた、というわけではない。飯塚は緑子以上に恐れを知らない。軽々とついてきたのだ。
「飯塚、どうしてお前が朔間の学校にいるんだ?」
「俺の学校休みだったんだよ。だから……」
「遊びにきたの」
飯塚が言い淀んだため、緑子が後を続けた。早房はさらに問い返す。
「学校にか?」
「悪いか?」
「……いや。お前らしい」
早房は、タバコを口にした。篠原と、中谷に目を向けた。
「じゃあ、最後にお嬢様を迎えに行くか」
「迎えに行けば行ったで、文句言うんだろうぜ」
飯塚が舌を出した。嫌っている、という口調ではない。口角が上がっている。楽しんでいるのだ。
「『わざわざ学校まで、こんなもので乗り付けないで下さる!』って?」
緑子が、仲間の一人である波野潤子の口真似をした。十分に満足のいく出来だったため、一同は笑い転げた。
「でも、私好きだよ。基本的にいい人だし」
「俺達も同じだよ。ま、嫌みな奴には間違いないけどな」
「よし、任せるぞ、運転手」
パイロット席から、景気のよい返事が聞こえた。こんな少女達を客としたのは、初めてのことに違いない。




