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魔王様達の狩りと新たな出会い

 狩りをしましょう。そう言いだしたのは、ユーリアだった。

いつもながら無表情なので、一瞬冗談かと仲間達が思ってしまったのは

無理もないだろう。

「……それはマジ? それとも冗談じょうだん?」

 魔王アンゴルモアが紫色の大きな瞳を見開いた。

マジです、と怒った様子もなくユーリアは言う。

「もう食料がないので、狩りで肉をあがないます」

「それ早く言えよっ!?」

 何でそんな大事な事を早く言わない、と魔王は目を剥いた。

リル・フェイ・シェイラも困ったような顔になっている。

 サーリヤ=リステイカも苦笑くしょう気味だったそうな――。


「――では、この中で狩りの経験のある方はいますか? 私はないです」

「ないのか!? やっててもおかしくないのに意外だな、俺もない……」

「あたしもない~」

「私はある……食料が少ない時は狩っていたからな」

 ユーリア、魔王、リルは経験なし、サーリヤは経験ありだった。

その際、魔王がユーリアが狩り経験がない事に目を丸くし、ユーリアは

釈然しゃくぜんとしない顔だ。

「私、村娘ですよ……?」

「そういえば、そうだったな」

「ユーリアって勇者じゃなかったっけ? 村娘だったっけ?」

「し、知らなかった……ユーリアは村娘だったのか」

「……」

 村娘だと告げたユーリアに、真実を知っている魔王は納得したが、

ユーリアに村娘だと聞いた事があったのか曖昧あいまいなリルは首をひねっ

ていた。

 サーリヤにいたっては初耳だったらしく、衝撃しょうげきを受けたような顔になっ

ている。

 ユーリアは無言でだん!と足を踏み鳴らした。

少しイラッとしたらしい。

 まあまあとリルが宥めるように言うと肩をすくめたが、それ以上怒る

つもりはないようだ。

「狩りなら慣れているから任せてくれ」

「リルは力仕事苦手だから釣りするよ! 頑張るからね!」

「お、俺も頑張がんばるよ……狩り」

「かっこいい所見せてくださいね、アンゴル」

「な、何で俺にだけ!?」

「特に意味はないです」

 サーリヤとリルはそれぞれの獲物を手に別れて行った。

魔王も行こうとすると、ユーリアに背中を軽くたたかれる。

 嬉しい反面プレッシャーもあり、困惑した顔になった魔王にユーリア

は涼しい顔で移動を始めたのだった――。


 ユーリアは元々村娘とはいえ、勇者。

一度は売り払った事はあるものの、今や自分の手の一部のように手に馴染なじ

む聖剣は狩りでも大活躍した。

「――ごめんなさい、私達は、生きなければならないのです」

 まだ生きれた命を、自分達が食べるために殺す。

なんて自分達は罪深い生き物なのだろう。

 そう思いながらも、ユーリアは痛みを堪えながら剣を振り続けてかなりの数の肉を手に入れた。

 一方、リルは釣りをするのは初めてだった。

今まで、釣りや狩りなどする必要がなかったのだ。

 なので、結局何時間粘っても当たりが来ないのですっ

かり諦めて投げ出してしまったのであった。

 サーリヤは慣れているだけあって、表情も変えずに

その大剣で獣達を次々と斬り倒して行った。

 動物を狩る事に痛みを感じない訳ではないが、自らの

罪を背負う覚悟の彼女はいちいち顔色を変えたりしない。

 ユーリアよりも戦い慣れている分、サーリヤの方が精神

面では上なのかもしれなかった。

 そして、一度も狩りをした事がないという魔王は――。


「た、助けてくれ――!!」

 獲物にしようとした、猪に追いかけられて逃げる羽目に

なっていた。元々魔王は武器は持っておらず、魔術を得意

とする。

 しかし、術を使う隙など野生の獣が与える訳はなかった。

素早く突進を繰り返そうとする獣から、かろうじて魔王は

身をかわしたがかなりギリギリではあった。

 一度でも突進を受けようものなら、気絶するか大怪我は

免れなさそうだ。

「と、止まれ! 止まれよ、俺は魔王だぞ!」

 駄目元で銘じてみるけれど、魔物でも配下でもない獣は

当然言う事を聞かない。

 どうしたらいいか分からずに魔王は思わず悲鳴を上げた。

「た、助けてくれ! リル、サーリヤ、ユーリアあああっ!」

「――無礼者!」

 今まさに猪が魔王へと飛びかかろうとした、次の瞬間の事

だった。

 可憐な声と共に雷が降り注いで獣に炸裂したのだ。

「なっ!? こ、この魔術と声は!?」

 聞き覚えのある声と魔術に反応し、魔王は命が助かった事

よりもその事に驚いてしまう。

 上を見ると、蝙蝠の羽を羽ばたかせた少女がそこにはい

た――。


「ロージェ……」

「魔王様! お会いしたかったです!!」

 命が助かったのはいいものの、今の状況ではあまり会いた

くなかった相手の登場に魔王は戸惑っていた。

 ユーリア達になんと言えばいいのだろう。

「アンゴル! どうしました!?」

「無事なのか!?」

「大丈夫なの!?」

 と、バッドタイミングでユーリア、サーリヤ、リルが走っ

て来てしまった。

 思わず脳内で悲鳴を上げかけた魔王は、固まって返事が

出来ない。

「アンゴル、その方は……?」

「あんたこそ誰よ! 魔王様に気安くあだ名をつけるな

んて!!」

「なっ……!?」

 動けない魔王の腕を組むようにしながら言う蝙蝠の羽の

少女に、ユーリアは鼻白んだようだった。

 だらだらと魔王の背に冷や汗が流れる。

「魔王様!」

「アンゴル!」

 説明しろと叫びながらお互いを睨み合う二人の少女達に、

魔王は完全にどうしたらいいのか分からなかった――。



 今回は折角森の中なので狩りをしようと考えました。

リルほぼ何もしてなくて、魔王様足手まといですけど

ね(笑)。

 まともに戦えるのサーリヤとユーリアだけで、あの

二人は魔術要因なのです。

 ついにロージェ出しちゃいました。

修羅場に突入です(笑)。どうする魔王様!?

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