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大剣少女の妹と婚約者登場

「……そろそろ、旅を開始しようと思うのですが」

 事の発端は勇者ユーリアの発言だった。

サーリヤ=リステイカが少し寂しそうな顔になり、

魔王アンゴルモアと、リル・フェイ・シェイラも

聞かされていなかったらしくきょとんとしている。

 リルは赤みの強い瞳を、魔王は紫色の大きな瞳

に不満そうな色を浮かばせていた。

「え~っもう行くの!?」

「そうだよ、もう少しゆっくりして――」

「二人とも、この旅の目的、忘れていませんか?」

 どうやらしばらく平和に過ごしていたので、魔王

達は何故旅をしているのか半場忘れかけていたよう

だ。

 栗色の冷たい目を向けられ、魔王とリルが真っ赤

になり、うぅっと呻いてうつむく。

「思い出しましたか? 少しゆっくりしてしまいま

したが、本来は私達がここでゆっくりしていたら危

ないんです」

 ユーリア、リル、魔王の三人は仲間を見つけ反逆

者イヴリスから距離を取りつつ戦力強化をしている

真っ最中だ。

 リル達としてはもう少し滞在したい気もしたけれ

ど、それでここの国の住民やサーリヤ達に危険が及

ぶのは避けたい。

「いなくなってしまうのか、寂しくなるな……」

「お世話になりました……」

「リルも寂しいよぉ! また、会おうね、サーリヤ

!」

「お、俺は別に……さ、寂しくなんか、ない」

 ユーリアはほぼ無表情だったが、リルもまた悲し

そうにサーリヤに飛びついていた。

 魔王は寂しくなんてないと言っているが、本当は

寂しいらしく目が潤んでいる。

 と、サーリヤは少し考えていたようだが、やがて

顔を上げた。

「私も、君達の旅に同行したいのだが、いいか?」

 リル、魔王、ユーリアの目が大きく見開かれた

――。



「い、いきなり何言い出すんだよ、お前!」

 一早く立ち直ったのは魔王だった。

ぎょっとしたように叫ばれても、しかしサーリヤ

の考えは変わらない。

「私は君達に協力したいんだ、足手まといにはな

らないようにするし、君達には迷惑をかけないよ

うにする」

 サーリヤは一度ユーリア達に空腹だった所を助

けられている。

 その恩義もあり、さらにユーリア達に好感を持

っているのでこのまま別れたくはなかったようだ。

「私達は構いませんが……あなたは貴族です。こ

こを離れるのはまずいのではないですか?」

「ああ、その事も考えてあるよ。しばらく、妹の

フレニアを代理に立たせようと思う」

「妹!? サーリヤ、妹がいたの!?」

 どうやらサーリヤには妹がいたようだ。

リルが目を丸くしてそれを聞いている。

 サーリヤ曰く、妹のフレニアはすでに政略結婚

で国の有力者の一人に嫁いでいるので一緒には暮

らしていなかったのだという。

「私にも妹がいます……」

「そうなのか!? だから君は大人びているのか

もしれないな!」

「え、ユーリアもお姉さんだったんだ……」

 ユーリアがぽつりと呟いたので、サーリヤと

リルがそれに反応してわいわいと楽しそうな雰囲

気になってしまった。

 リルも一人っ子のはずだが、一人っ子で兄弟が

いない魔王は疎外感を感じて仲間に入れなくて

少し落ち込んだという。

 ユーリア達はまずその子に会ってから出発する

事になった――。



「――お姉様? どうなさったの?」

 フレニア=リステイカ――いや、フレニア=

ドルグアは可愛らしい娘だった。

 サーリヤよりも淡い色の赤い髪を短く切り揃

え、大きな同色の目を持つどことなくふわふわ

とした雰囲気の少女だ。

 真珠色のワンピースドレスと、髪に飾られた

白いお花を模した髪飾りがよく似合っている。

 唐突に館に尋ねて来た姉を、フレニアは目を

丸くしながら出迎えた。

「フレニア……すまないが、少し頼みたい事が

あるんだ」

「なあに?」

「しばらく――リステイカ家で当主の代理をや

って欲しい……」

「ええ!? お姉様、何が遭ったの!?」

「私は、この方達と旅に出る事になったんだ、

君には苦労ばかりかける姉で済まない……」

「お、お姉様謝らないで? あたし、ユグルス

様と一緒にリステイカ家に戻るわ」

 ユグルスというのがフレニアの夫らしい。

来客に気付いたのか、怪訝そうな顔でフレニア

と同年代らしい少年が玄関に顔を出した。

「フレニア? ――客人なのか?」

「ええ、お姉様と、お姉様の恩人の方々が来て

いるのよユグルス様」

「恩人……?」

 ユグルス=ドルグアは訝しげにユーリア達を

見つめた。

 品定めをするような視線に、リルと魔王が思

わずムッとなる。

 珍しい黒髪に黒目の、かっこいいというより

は可愛らしい雰囲気の少年だったが疑り深い性

質なのか視線だけはどこか鋭かった。

 ハッとなったようにユグルスがフレニアを背

にかばって叫ぶ。

「フレニア、彼らから離れろ!」

「ゆ、ユグルス様……?」

「そいつ、魔族だ! 僕達の敵だぞ!」

 ユーリアが密やかに舌打ちした。

ユグルスが叫び出したので、館の使用人達や

ユグルスの家族達がやって来てしまう。

 奇異と畏怖と嫌悪が混じりあったような視

線をそこここで感じ、魔王は青ざめて震えて

いた。

「ユグルス様! あたしのお姉様のお知り合

いになんて事をおっしゃるの!?」

「うるさい! 知り合いだろうが何だろうが、

魔族は僕達の敵だ! ――死ね、魔族っ!」

「あっ……」

「「アンゴル!」」

 あんまりな言い草にフレニアが怒りを剥き

出しにするも、フレニアが心配なユグルスは

逆に彼女を怒鳴りつける。

 そして、フレニアに護身用として持たせて

いたナイフを抜き放つと斬りかかった。

 魔王が小さく悲鳴を上げて目を閉じる。

リルとサーリヤが口元に手を当てて叫ぶ。

 きん、という金属と金属の触れ合う音が響

いたのはその直後だった。

 ユーリアが、聖剣を抜いて魔王の前に飛び

込んで、ナイフを弾いたのだ。

 ぱんっ、とかわいた音が同時に響く。

勢いよく頬を張られたユグルスは、受け身を

取る事も出来ずにその場に倒れ込んだ――。


 最初はもっとほのぼのにする

つもりが、何故か途中からユグ

ルスが勝手に動いて魔王様

ピンチに……!

 二人目の問題児登場です。

この子も成長、出来ると

いいなあ。

 勇者と魔王の恋愛がそろそろ

進み始める兆しです。

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