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勇者と魔術師の仲直りとお泊り

「――用って、何なの?」

 宮廷魔術師リル・フェイ・

シェイラは、勇者ユーリアと

魔王アンゴルモアに呼ばれても、

まだむくれているようだった。

 いつもは可愛らしい声にも、

どことなく棘がある。

 赤みの強い瞳は苛立った

ように二人に向けられていた。

 その様子に、サーリヤ=リス

テイカが困ったような顔をしていた

けれど、リルは気づいていない

ようだ。

「リル……」

 いつまでも怒っている彼女に、

ユーリアは表情を変えなかったが、

代わりのように魔王が何故かムッと

なっていた。

「お前、いつまですねてんだよ、

ガキだな」

「リル、子供じゃない!」

 今度はリルと魔王の間でケンカが

勃発しそうな兆しだったので、魔王、

とユーリアは咎めるように制止した。

 不満そうな顔をしながらも、渋々

魔王が口を閉ざし、ユーリアが前へ

出る。

「すみませんでした、リル……」

「え……?」

 まさか、いきなり謝られるとは

思っていなかったのだろう、リルは

目を大きく見開いて立ち尽くした。

 いつもは元気に跳ねている赤みの

強い二つ結びが、今はなんだか垂れた

耳のようにへたりなっている。

「さっきは、言いすぎました。嫌な

態度を取ってすみません

でしたね……」

「え、えっと……リルも、いつま

でも怒ってて、ごめん……」

 大人な対応をするユーリアに少し

悔しそうな顔をしつつもリルは

ユーリアの差し出した手を取って

握手した。

 仲直りだな、と少しほっとした

ようにサーリヤが言い、魔王も

なんだか自分の事ではないのに

嬉しくなったのだった――。



 その後、ユーリア達はつい先ほど

ユーリアが魔王と協力して作った、

アイスクリームと桃と林檎のシャー

ベットのような物を仲良く食べる

事にした。

 もちろん、たくさんあるのでメイド

さん達にも差し入れられている。

「ん~っ、つめった~い!」

「初めての味わいだな、こんな物は、

生まれて初めて食べた……」

「シャーベットも美味いなアイス

クリームも美味いけど……」

「やっぱり、大勢で食べると美味しい

ですね」

 リル、サーリヤ、魔王、ユーリアは

氷菓を堪能していた。

 ユーリアが大勢で食べると美味しいと

微笑みながら発言したので、自然と

リル達の顔にも笑みが広がる。

 氷菓など作るのは初めてだったけれど、

上手く行ったらしいとユーリアは

思った――。



 騒動が持ち上がったのは、そのすぐ

後の事だった。

 事の発端は、サーリヤがよかったら

泊まって行って欲しい、と言った事

だった。

「ただ、すまないが部屋数が少ないので、

一人は私と同室になってもらい、後の

二人は一部屋を二人で使っていただき

たいのだが……」

 貴族とはいってもそこまで身分が

高くないサーリヤの館は、あまり部屋

数が多くはなかった。

 使用人達二人が一部屋、メイドが一

部屋、サーリヤが一部屋、そして客用の

部屋が一部屋だけなのである。

 メイドの部屋はあまり広くないとの

事で、二人ずつが泊まるにはあまり

適さないらしい。

 なので、サーリヤの寝室に一人来て

もらい、後は二人部屋で一緒に寝て

もらう事になる。

 そこで焦ったのは、まだ魔族的には

子供に値する年齢だが、性別的には

男な魔王である。

 サーリヤ、リル、ユーリア。

そのうちの誰もが、女だけなのだから

焦りもするだろう。

 ユーリア達は彼の事を完全に子供と

してみているものの、魔王は実は

ユーリア達よりは遥かに年上なのだ。

 魔族としてはまだ幼い年齢で見た目が

子供であっても、中身はきちんと成長して

いるので女性と同じ部屋なんて意識して

しまうし気恥ずかしい。

「あ~でも、魔王って一応男だよね、

どうしよっか」

「い、一応じゃなくて俺は完全な

男だ!」

 リルに一応と言われてしまい魔王は

抗議をした。

 正直、リルもサーリヤもいくら男とは

いっても見た目的には幼い魔王が一緒に

いても構わないと思っていた。

 また文句を言われそうなので言わないが。

「リル、サーリヤの所に行ってもらっても

構いませんか? 私がアンゴルと一緒に

一部屋使います」

「「えええええっ!?」」

「なっ……なっ……! えええ!?」

 リルとサーリヤが驚きの声を上げた。

魔王にいたっては顔を真っ赤にしてまともな

言葉も出ない有様だ。

「リルは誰とでも構わないけど、ユーリアは

アンゴルと一緒がいいの?」

「私も構わないが……」

「はい。心配はないとは思いますが、もしも

敵に襲撃を受けた場合、私とアンゴルが共に

いた方が、アンゴルを守れるでしょう? リルと

アンゴルだと少し心配ですし、サーリヤならば

有事でもリルを守れるでしょうし」

「そ、そういう事かよ……」

 なんだかがっかりしているような魔王の様子に、

訳が分からないとユーリアは首をかしげていた。

 リルとサーリヤは完全に苦笑している。

「他に理由がありますか?」

「もういいよ!」

 完全に男扱いされてないも当然の言い方に

涙ぐむ魔王を、リルとサーリヤがぽんと肩を

叩いて慰めていた。

 ともかくも、二人はサーリヤの部屋に一緒に

向かってしまったので、その場には魔王と

ユーリア二人きりになる。

 渋々魔王はユーリアと共に寝室へと入ったが、

そこでまた問題が持ち上がった。

 なんと、ベッドが一つだけだったのだ。

広いとはいえ元々は一人部屋なのだろう。

「お、俺……床で寝るから」

「一緒に使えばいいじゃないですか」

「お、女なんかと一緒に使えるか!」

「なら、魔王がベッドで寝た方がいいのでは? 

 布団があるとはいえ、床で寝ると体が痛く

なりますよ」

「い、いいから俺床で寝るからな!?」

 さすがに女性であり想い人であるユーリアと

ベッドを共に使うというのもなんだか恥ずかしく、

さりとて自分がベッドを占領するのもなんだか男と

して情けない気がして魔王はベッドをユーリアに

譲った。

 しかし、ユーリアの家にはベッドはないので、

彼女は床で寝る事に慣れていたので床で寝ると

体が痛くなるという危惧から魔王にベッドを

譲ろうとする。

 最終的には喚くように魔王が言ったので、首を

かしげながらもユーリアはベッドを使う事に

なった――。

 



 サブタイトルは、魔王様と

勇者のドキドキお泊り(魔王

だけ)です。

 アンゴルは完全に意識

しまくってますが、悲しい

かなユーリアは魔王をまだ

恋愛対象として見ていない

という……。

 前回作ったおやつは館の

全員で美味しくいただかれ

ました。

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