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# 空想の街  作者: 複数の作家
きつね橋のうどん屋#うどん屋(作者:うりゅうらいた様)
13/16

すずね

うどん屋店主の妻すずねさんのお歌です。

 

南地区の中でも、うどん屋はいっとう古びた建物の一つである。長い年月を経て掠れ、今はもうほとんど読めなくなっている屋号。そこに「すずね」と書いてあるのを知っている者も、随分少ない。今はもっぱら、きつね橋のうどん屋、で通っている。 #うどん屋 #狐 #空想の街 



そして、凛と響く声は詠い始めた。 #うどん屋 #狐 #空想の街



ぬしよりもらった名前の通り 凛と響かす鈴の声 / わらわは白狐 お稲荷様に 仕える一族 その血筋 / そんなわらわも年頃になり 出逢った相手に恋をした / 心優しき その人の住む 塔が時間を刻む街 / 狐姿も愛してくれた 広い懐忘られぬ *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


されど狐と人間なれば所詮は叶わぬこの恋路 / 一族の者がとくとくと説く 狐と人とは子を成せぬ / 共に惹かれるにも拘わらず引き裂く力が強すぎる / 人の子の親もまた子を諭す お前は大事な跡取りだ / 狐なんぞは話にならぬ 良家の娘が相応しい *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


それでも二人は秘かに橋で 会うことやめずに想い合う / 遂には人の父母策を 講じて息子を遊学へ / 泣く泣く二人は最後の会瀬 狐は大事な尾を贈る / 人の子の心それでもなおも 狐想うは変わらない / 必ず戻ると伝えて街の 外へと旅立つ心惜し *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


ところが狐の託した想い それはただただ彼の無事 / 恋路諦め静かに森へ 移り狐の子を産んだ / 心残りがない訳ないが 可愛い子ぎつね育んだ / 白い狐の親子は森で 静かに静かに時過ごす *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


そして静かな時破られた 猟師の銃弾切り裂いた / 泣く泣く子ぎつね最期に諭す 人間のことを憎むなと / ところ変わって遊学終わり やっと人の子里帰り / そこで聞いたは狐の噂 姿見せない橋の上 *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


新たに移った所はいつも 狐と会ってたきつね橋 / 橋の袂に構えた店は 号をすずねと言うらしい / 今も狐を待ってるという 想いを込めたその屋号 / 狐の噂も逆手に取って きつねうどんを名物に / どうか狐の耳にも届け 今も待ってるきつね橋 *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


そして年月幾つも流れ 気付いた人の子 尾の力 / いつの間にやら尾の神力は 人の子の歳 止めていた / 時はそれからまた流れ行く 人の父母も もういない *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


それでも人の子まだ待ち続け ある日とうとうまた出逢う / 人と添えぬという掟から 狐放たれ飛んできた / それは惜しくも死と引き換えの ものであったが成就した *都々逸 #うどん屋 #狐 #空想の街


ほどなく人の子祝言あげて 街の人らは噂した / あれは狐の嫁入り、しかも 幽霊の嫁が とついだと *都々逸 ――ここまで詠いあげて、すずねはころころと笑った。凛とした声が響き渡った。 (おしまい) #うどん屋 #狐 #空想の街



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