第4章 恐怖・・・
「・・・ゆ・・・・・」
「おい・・・ゆ・・・う・・・・・・」
「ゆう!!大丈夫か!?」
「うっ・・・」
俺が目を覚ますと、工藤達が俺の周りに集まり心配そうな顔で俺の事を見ていた。
「うっ・・あれっ・・・工藤?どうしたんだ?何かあったのか?」
「おいおい。何かあったじゃないだろ?
お前が話の途中で急に椅子から倒れて、そのまま動かなくなっちまったんたから、みんな心配してたんだよ。」
「・・・あ、そういえば・・・何か、話してる途中で目の前が真っ暗になって・・・それから・・・」
「それから?」
「・・・何か、あったような気がするんだけど・・・思い出せない・・・」
「そっか。ま、でも今日はもう休んだ方が良さそうだな・・・ゆうも、こんな感じだし・・・」
「あぁ・・・悪いな・・・」
それから俺達は、まだ火が残っていた木炭に水を掛け、火が消えたのを確認してから、テントの中に入り休む事にした・・・
「・・・・・・・・・」
それから、1時間ほど経つと、みんな寝てしまっていたのだが・・・
俺は、色々な事を考えていた為、眠る事が出来なかった・・・
工藤が言ってた「即興で作った話だったら、ここまでスラスラ話せない」という事。
何故、俺は急に意識が飛んでしまったのか、という事。
それに、意識が無くなってた間に何かあったはずなのだが、それが全く思いだせないという事。
「はぁ・・・こんなんじゃ、眠れる訳ないよな・・」
このまま考えていたら眠れない、と思った俺は気分転換に外に出る事にした。
テントの外に出ると、夏とは思えない程の冷気が体を指した・・・
(うぅ〜・・・寒っ・・・夜の山って、こんなに気温下がんのかな・・・)
そこで、俺はこの異変に気付かないといけなかったのかもしれない・・・
俺達は、さっきまでこの夜の山の中で怪談話をしていたという事を・・・
『その時は、こんな寒さを感じてはいなかったはず・・・』
俺は、この異変に気付く事もなく、懐中電灯を片手にキャンプ場の中を少し歩く事した。
このキャンプ場は、道の脇に等間隔で街灯が取り付けられていた為、懐中電灯は必要無かったのだが、俺は一応持って来ていた。
10分ほど歩いた所で俺は、テントに戻る事にしたのだが・・・
俺達のテントの近くまで来た所で、ある異変に気付いた・・・
それは・・・
このキャンプ場に「音」が全く無い、という事だ・・・
今は夜中の2時過ぎという事なので、他のキャンプ客は寝てるのかもしれないが・・・
虫の声、風の音が全く聞こえて来ないのだ・・・
まるで、俺だけがこの世界にいるかのように・・・
そんな違和感に俺が不安を覚えていると・・・
俺の目にある物が写りこんできた。俺達のテントの前に、女が立っているのだ・・・
腕は、片方しか無く・・・
片足は足首から先が無い女が・・・片手に包丁を持って・・・
それに・・・女の胸の辺りからは、赤い液体が流れ続けていた・・・
俺は、その女から目を離す事が出来ず・・・
その場にずっと立ち尽くしていた・・・
俺の足は、自分の意思で動かす事も出来なくなるほど震えはじめ・・・・・・
全身に、一気に冷たい汗が吹き出て来ていた・・・
この場から逃げなければ、と思うが俺の体は言う事を聞かない・・・
俺が、その場から動けずにいると・・・
その女が俺達のテントの中に、自身の足を引きずりながら、ゆっくりと入って行った・・・
それから、何秒・・・何分・・・何時間・・・一体、どれだけの時間が経ったのかも分からない俺の目に、再びあの女が写りこんできた・・・
ただ、さっきの女と違うのは・・・
手に持っている包丁から、赤い液体が滴り落ちている・・・という事だ。
相変わらず動く事も出来ず、まるで金縛りにあったかのように、その場に立ち尽くしている俺に女は気付くと・・・
ゆっくりとこっちに向かって近づいてきた・・・
心臓の脈打つ音が強く早くなっていく・・・
足の震えは、さらに大きくなりその場に立っている事すら困難になって来ている・・・
『・・・・・・ケ・・・・タ・・・』
俺と、女の距離が近くなっていくにしたがって、その女が何かを喋っていることに俺は気付いた。
『・・・ヤ・・・ト・・・・ミツ・・ケ・・・』
『・・・ヤット・・・ミツケタ・・・・・・・
アンタ・・・ダッタンダネ・・・』
その言葉が聞ける程近づいてきていた女は、俺にその凶刃を振り下ろした・・・
鋭い痛みと共に、俺の胸の辺りが熱くなっていくのが感じられた・・・
次第に、痛みがなくなり・・・
薄れて行く意識の中で、誰かの声が聞こえてきた・・・
『フフフ・・・貴方も、怪談のもう1つの意味が分からなかったのね・・・
まぁ、分かった所でもう手遅れなんだけどね・・・フフフ・・・・・・』