第四話
17 作:有吉 正春
「「「乾杯!!!!!!」」」
俺達はそれから運ばれて来る料理の見かけや味に感動して楽しい時間を過ごしていた 『pipipipipipipipipi』
「ん〜?携帯鳴ってる〜『もしも〜し、あっハルコちゃん?………………』
「電話ハルコからみたいね?」
「「みたいだな、仲がよろしい事で」
『分かったよ〜じゃあすぐいくから〜』
「ゴメンね〜ハルコちゃんが『会いたい』って言ってるからボク行くね〜」
「まだデザートが残ってるぞ?」
「ボクの分はいらないってレイコさんに言って行くから〜」
「じゃあ私達も帰ろうかしら?」
「ううん、2人はゆっくりしてってよ、もう店も閉まるみたいだしレイコさん2人と話ししたがってたからさ〜」
「そう言うなら……お前はどうする?」
「じゃあ、ゆっくりしていこうかしらね」
「そうしなよ〜、じゃあボクもう行くから〜お休み〜」
「ああ、また明日な」
「今日は私の為にありがとうね」
「うん♪バイバーイ」
そう言うとジュンは急いで出て行った
「…………………」
「…………………」
「…何か喋ろよ…」
「アンタこそ…」
「2人ともどうしちゃったの?黙り込んじゃって?」
ジュンが居なくなって少し気まずい雰囲気になった俺達を助けてくれたのはデザートを持ってきてくれたレイコさんだった、何故かまたワインと新しいグラスを持っている
「貴方達もう一本飲まない?2人共いけるクチみたいだし…ああ、これは私からのサービスよ」
もう少し酔いたい俺にとっては嬉しい申し出だった
「私も一緒に飲みたいのよ、貴方達ともお話ししたいしね」
「お店の方はいいんですか?」
「今日はもう閉店、後片付けや明日の準備は他の人に頼んでるわ」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらいます、ジュンもいれば良かったですね」
「あら、もう帰ったの?あの子ったら…フフッ」
「どうしたんですか?そういえばアイツさっき妙にソワソワしてたのよね」
「フフッ、あの子ね『へそ曲がりな2人を素直にさせたいから、お邪魔虫はさっさと帰るんだ〜』とか言っちゃってね」
「「あのバカ…」」
しかしこの後ビックイベントを控えてるオレにとってはアイツの気遣いが嬉しかった、実際どうしてトモコと2人っきりになるか考えていたからだ
「貴方達を見ていると飽きないってホントね、そして2人共本当に意地っ張り」
「バカいわないで下さいよ、コイツと付き合うなんて私はイヤですよ!」
「お互い様だろ!」
「ハァ〜、本当に意地っ張りね」
「「そんなんじゃないですって!!」」
「でも2人ともお互いに嫌いって訳じゃないんでしょ?」
「それは……
「…そうですけど…」
「いいこと?お姉さんからのアドバイスよ、貴方達は今の関係が壊れる事が怖いだけなのよ、2人共自分の本当の気持ちには気遣いているはずよ」
「「………………」」
「…説教臭くなっちゃったわね、さあ!パァーっと飲みましょう!」
「はい、いただきます!」
「どうも、すいません」
その後レイコさんの店でしばらく飲んだ後俺達は店を出た、ジュンとレイコさんの恋愛話しもとびたして賑やかなひとときをすごした
「面白い人だったわねレイコさんって」
「なんか『お姉さん』って感じだったな」
「そうね、あ〜あ、ちょっと飲みすぎたかしら?」
「ああ、どうだ?酔いを醒ましていかないか?」
「ええ、どこに行くの?」
「秘密基地にいかないか?」
オレは告白をするなら秘密基地しかないと思っといた、俺達3人だけの秘密の場所
「いいわね、じゃあ行きましょうよ」
そして俺達は秘密基地の山の公園へ向かった
「そういえばこんな時間にココに来るのって久しぶりね?」
「中学以来かな?夏に三人で花火やった時」
「そうね、2人で来るのは初めてじゃない?」
「…ああ、そうだな…」
「どうしたの?ひょっとしてレイコさんの言ってた事意識してるの?」
オレは一瞬頭の中を覗かれたと思い驚いた
「ちげーよ、そういえばお前門限大丈夫なのか?」
腕時計を見るともう九時を過ぎていた
「アンタ達と誕生日パーティーって言ってあるから大丈夫よ、母さんあんた達のこと信用してるから」
「『信用されてる』か…」
確かにトモコの両親はオレとジュンの事を信用してくれている
「何よ?しみじみしちゃって」
「何でもねーよ」
「でも最近母さんたら『マーちゃんかジュンちゃんどっちかに絞りなさいよ、二股なんていけないわよ』とか言うのよ、全く…」
オレはふと不安になった、もしかしてコイツはジュンの事が好きなんじゃないのか?オレにはすぐにどなったり殴ってきたりするがジュンにはそんな事はしない
「お前、ジュンが好きなのか…?」
「……………」
「そうなのか…?」
頭の中が真っ白になった、やっぱりそうだったのか…、そうだとしても2人はオレにとって大切な幼なじみという事には変わりはない、でも……
「プッ…ククッ…ククッ…」
「…?」
「アハハハハハハハ!ヒーヒーッ!」
「どうしたんだよ?」
「クッ…アンタ…何、 プッ…言ってんのよ? アハハハハ!」
「ジュンが好きなんだろ?何で笑ってんだよ…」
「ププッ…止めてよ…これ以上笑わさないで… ククッ…」
「……?」
「スーハー、スーハー、スーハー」
トモコは深呼吸をして呼吸を整えた
「アンタねぇ、私にとってアイツは『出来の悪い弟』なの、アンタにとっても似たようなモンでしょ」
「まぁ…、そうだな」
「全く何言うかと思ったら、笑わさないでよね」
「でもそう思ったんだからしょうがないだろ?」
「はぁ、何いってんだか?」
オレは正直安心した、そして気持ちを打ち明けるなら今しかないと思いついに切り出した
「じゃあ他に好きなヤツいるのかよ?」
「いきなり何よ?今日のアンタ少し変よ?酔ってんじゃない?」
「いるのか?いないのか?どっちだよ?」
オレは強い口調で言った
「………いるわよ、そう言うあんたはどうなのよ?」
「オレも、いるよ…」
足が震えていた、運動会で走る時より緊張していた
「へぇ〜誰よ?同じ学校の人?」
言うんだ…、今しかない!!!
「…お前だよ」
「へっ?からかわないでよね」
「お前の事が好きなんだよ…」
言ってしまった、ついに言ってしまったんだ
「………何よ、からかわないでよ!言っていい冗談と悪い冗談もわからないの!!!!!」
見るとトモコは肩を震えさせて泣いていた
「からかってなんか…
「ウソよ!私の事そんな風に思ってないくせに!」
「嘘じゃない!お前が好きなんだよ!!!!!!!」
トモコは涙を溜めた目でオレの顔を見上げた
「…………本当…なの…?」
「ああ、お前が好きだ嘘でも冗談でもない、オレはお前が好きなんだ」
「………ここまで長かったわね…」
「………?」
「まさかアンタから言ってくれるなんて思わなかったわよ」
「えっ?」
「私もアンタが好きよ」
良かった、本当に良かった、オレはとても幸せな気分になった、今なら誰に何をされても許せそうだ
「アンタ中学の時のキャンプの時の事覚えてる?」
「遭難した事か?」
「ええ、ワタシはあの時アンタの事を好きだって気付いたの」
中学2年の夏休みオレとジュンはトモコの家族と一緒に山へキャンプに行った、その時にトモコのオヤジさんの提案で山登りをする事になったが途中で雨が降って来て、オレ達は山小屋に非難した、しかしそこでトモコがいない事に気付いた、オヤジさんは自分が探しに行くからオレ達に小屋から出ない様に言った、しかしオヤジさんが探しに出かけたあと、オレはトモコのオバさんやジュンの制止を振り切って雨の降る中外へ飛び出した
「ワタシあの時『もう皆に会えないんじゃないか?』って思って泣いていたの」
「ああ…あの時は本当に大変だったな」
雨の降る中オレは必死にトモコを探した、アイツにもう会えなくなると思ったら体が勝手に動いていた、そして岩の陰で泣いているアイツを見つけた、足を挫いて動けなくなっているらしくオレはアイツを背負って小屋に向かった
「あの時アンタ自分が泣いているのに『お前は絶対に助かるから泣くな!』って言うんだもん、今考えると矛盾よね〜」
「言うな、あの時は本当に怖かったんだよ」
「フフッ、でも嬉しかったの『コイツ本当にワタシの事心配してくれてるんだな』って」
「………」
「それがアンタの事を好きになったきっかけね、三年間も片思いしてたんだからワタシって健気よね〜」
「鈍感で悪かったな」
「まぁまぁ、で、その鈍感君がワタシの事好きって気付いたきっかけって何なの?」
「この前お前が高校の先輩と付き合ってるって噂を聞いたって言っただろ?」
「ええ、あの噂ね」
「あの噂聞いた時に何か凄く悲しい気分になったんだ」
「ヤキモチ妬いたの?」
「そんなトコかな?でもお前から勘違いだって聞いた時にホッとした、それで気付いたんだ『お前が好きだ』ってね」
「ふーん、でもやけに行動が早いのね、ワタシなんて三年間よ?三年間?」
「もういいだろ、プレゼントやらないぞ?」
「えっ…用意してくれていたんだ?」
「…当たり前だろ、ほらよ」
オレは上着のポケットから小さなオルゴールを取り出してトモコに渡した
「これ、この前の…」
この前トモコとアンティークショップに行った時アイツが眺めていた木彫りの小箱に入ったオルゴールだ、手のひらサイズで可愛らしいクマが彫られている
「この前ずっと眺めてただろ?」
「うん、このクマが『クイッキー君』に似ているなって思ってね」
「前から気になってたんだけど『クイッキー君』てなんなんだよ?」
「熊とアンタを足して÷2したのがモデルね、私のオリジナルキャラクターよ」
「オレがモデルだったのかよ…」
「そうよ、アンタの無愛想なトコとかクマみたいじゃない」
「でも今はその無愛想な男がお前の彼氏なんだぞ」
「あら?アンタと付き合うなんて言ったかしら?」
「えっ…?」
「だって『好きだ』って言われたけど『付き合ってくれ』っては言われてないわよ」
「…………」
「イヤならいいわよ、他にいい男探すから♪」
「…オレと…ああ、あれだ…その……つまり…」
「はっきりしなさい!」
「オレと…付き合ってくれ」
「 どうしようかな〜、返事は少し待ってくれない?」
「何でだ?オレじゃダメなのか?やっぱり他に好きなヤツが…」
「違うわ、私の気持ちは伝えたはずよ」
「じゃあどうして…?」
「私は三年間ガマンしたのよ?アンタだけすぐに返事して貰えると思ったら大間違いよ!」
「しつこい女は嫌われるぞ?」
「でもそのしつこい女がアンタの彼女になるのよ?そうね……明日から!」
「たった1日じゃないかよ?」
「待たされっぱなしじゃ私のプライドが許さないのよ、でも私のガマンももう限界だから1日くらいが妥当なトコね」
「意地っ張りめ」
「フフッ、鈍感男め」
「「アハハハハ!!」」
俺達は声を揃えて笑った、多分これからもコイツと一緒に歩いていけると思った
「ねぇ、ちょっとこっち向いて」
トモコに言われオレは横を向いた
「ンッ!!!!」
オレはいきなり唇を塞がれた、塞いだのは…トモコの唇だった
「プハッ!!いきなり何するんだよ?」
「何ってキスよ?知らないの?」
「そうじゃないって、俺達、今はまだ幼なじみなんだろ?」
「ええ、だから幼なじみとしての最初で最後のキスよ」
「…………ああ………わかったよ」
「照れてるの?意外とウブね?」
「勝手に言ってろ…」
「怒らない♪怒らない♪ねぇ、オルゴール聞いていい?」
「ああ…」
オルゴールは優しくて暖かい音楽を奏でた、しばらく音楽を奏でた後音が少しずつ小さくなりそして止まった「キレイね…」
「そうだな…」
月が俺達を照らしていた
「もうすぐ冬ね」
「そうだな…」
冬はすぐそこまで来ていた
「あちこち遊びに行こうね?」
「そうだな…」
「相変わらず無愛想ね?」
「悪かったな…」
「あら?聞いていたのね」
「当たり前だ」
「じゃあ今日はそろそろお開きにしよっか?明日学校あるし」
「そうだな、明日学校終ったら遊びにいかないか?その…デートってヤツを…」
「ええ、先に終わった方がメールして待ち合わせましょ」
「ああ、じゃあ帰るとするか」
「そうね」
「送ろうか?」
「いいわよ、方向逆だし」
「そうか、じゃあ明日な」
「うん、バイバイ……幼なじみ!!」 オレは家に帰り着くと風呂に入った、両親とも今日は出かけていたので家には一人きりだった、『ru!ru!ru!ru!ru!ru!ru!』突然電話が鳴った、
「オヤジ達かな?」
「はい、もしもし?」
『あらマーちゃん?』 電話はトモコのオバさんからだった
「はい、お久しぶりです、オフクロに用事ですか?」
『違うのよ、トモコがお邪魔してないかしらって思ってね』
「えっ!さっき別れて家に帰ったはずですけど…」 『それがまだ帰ってきてないのよ、どこ行ったのかしら?』
「今からお邪魔していいですか?」
『えっ?』
「何か胸騒ぎがするんです…」
『わかったわ、私たちも家の周りを探してみるから』
「はい、ジュンも連れて行きます」
『ええ、じゃあ後で』時計を見ると11時を過ぎていた、こんな時間までアイツが家に戻らないなんで絶対おかしい、オレは携帯からジュンの番号を押した 『もしもし〜マ〜ちゃん?』
「ああ、今からオレの家に来てくれないか?」
『ん〜どうしたの〜もう11時過ぎてるよ〜』
「トモコがまだ家に帰ってないらしいんだ」 『えっ!』
「今アイツのオジさんとオバさんが探してる」
『わかった、すぐにいくから、父さん達も連れていくね』
「わかった、すまないな」
オレは電話を切り家にカギをして外にでた、5分と経たない内にジュンとジュンの両親が来た「夜遅くにすいません」
「話はジュンから聞いたよ、署にも連絡して応援を頼んだ、マサキ君はジュンと2人で探してみてくれ」
「わかりました」
ジュンのオヤジさんは刑事をしている、こんな時一番頼りになる人だ、性格はジュンにそっくりだがいざとなると豹変する
「俺達はトモコちゃんの家まで行ってみる」
「はい、ありがとうございます」オレとジュンは2人で街を走った
「ハァハァハァ…どこに行ったんだ?」
「ハァハァ…どこで別れたの?」
「秘密基地だ」
「じゃあ秘密基地からトモコちゃんのお家までの間を見てみようよ?」2人で秘密基地に向かってそれからトモコの家までの道のりを辿った、昼間は気付きにくいが、この時間になるとこの辺りは人通りが全くと言っていい程ない、そしてオレ達が曲がり角をまがるとそこには……「……何だよ…これ…?」
「……ト、トモコちゃんは?」
おびただしい量の血液が道に広がっていた
「マ、マーちゃん…これって…トモコちゃんの携帯じゃ?」
中身が見えているアイツの携帯、そしてついさっき渡したオレのプレゼントが粉々になっていた『ピピッ』 ジュンの時計が日付が変わった事を知らせた (バイバイ……幼なじみ!)アイツの声が頭に響く
「ウワァーーーーーーーーッッ!!!!!!!!!!!!!」
オレは大声で叫んでいた 続く…