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底冷えのする夜に恋愛相談をする若い男。

相談に乗っていた男の本当の姿。

中学を卒業し、気づけば大人になっていた彼女。


そんな人々の話。

<雪がちらつくある年のホワイトクリスマス>

 <時刻はイヴを終えたばかり>

 <凍り付く大気を吸っても暖かくときめいた胸が>

 <それをまるで霧が晴れるがごとく四散させていく聖なる夜>

 <ネオンが華やかな歓楽街から少しはずれたところにひっそりと佇むファミレス>

 <そこの一番奥の席で、男二人が生ビールを飲みながらなにやら話し込んでいた・・・>

 <一人は黒いセーターとジーパン、もう一人は白いセーターとジーパン姿>




男A:「あのー先輩、マジで今夜やるんすか?」


男B:「おぉーい。なにいってんだよ、深夜に人呼び出しといて今更怖じ気づくんじゃねぇ。

 

    お約束なタイミングだがお前にはちょうど良い」


男A:「だって、オレと彼女じゃやっぱり釣り合いが取れないっすよ。

    いい殺し文句でもないっすかね」


男B:「一流大卒だってなぁ一人の女には変わりはないんだぞ!!」


男A:「はあ・・・しかもこんな夜遅くですかぁ?」


男B:「彼女が残業終わったらTELもらえんだから楽じゃねぇか。

    

    まぁ仕事明けは疲れてるから遠回しは『殺』だな」


男A:「はぁ機嫌次第、ですよね・・・飯食ってかえろうかな」


男B:「だから今更そんなガキみたいなこと言ってんじゃねぇチキンが」


男A:「ええ、ほんと食中毒もんですよねマジオレ」


男B:「なんかお前に笑えてきた」


男A:「からかわないでくださいよ。そんじゃこの際酔った勢いで言わせてもらいますけどね


   先輩の彼女みたいに清楚で大人しく、また可愛いチェリーガールじゃないんですよ

 

   年上はなに見ているかわかんないんです! 誤魔化しがきかないんですから」


男B:「はぁ・・・だったらぶつかるしかねぇんじゃねえのか?」


「できたらいいんですけどね・・・あー変な汗出てきた」


 <ピーピー!!・・・ピーピー!!>

 <と、その時相談に乗っていた年長らしい白いセーターを着た男の携帯が鳴った>

 <男は分かった。とだけ答えて携帯を切ると、素っ気なく青ざめている男に頑張れよ、

  とだけ答え店を後にした>



 <・・・ファミレスから徒歩十五分ほど歩いた所にある

  ファーストフード店に入る白いセーターの男>

 <喫煙コーナーで煙草を吸っているピンク色のドレスの上に黒いコート

   を羽織った若い女の向かいに座る>


女A:「遅えなぁ!」


男B:「ごめん、後輩に呼ばれてさ」


女A:「はぁ? 後輩の呼び出しとてめぇの女との約束、どっちが大事なんだよ!!」


男B:「わるかったよ」


女A:「後輩って誰だ?」


男B:「●●」


女A:「あぁ、マザコンのあれか?」


男B:「うん、まぁ・・・」


女A:「ロリコンのてめぇが気軽に肯定すんじゃねぇ!!」


男B:「すみません」


女A:「まぁそれより、クリスマスになったらしいじゃんか? 世間様はよぉ」


男B:「はい」


女A:「はい、じゃねぇよ! 男だったらもっとクールにしろよ! 


    あたしといくつ違うんだよ! 19と30、極端に年の差だけで言えば


    小六と大の大人が付き合ってるようなもんだろが! リードしろよわかってんのか」


男B:「一応、ほら指輪とネックレス」


女A「ほう?・・・見せてみぃ。はぁ、つまねぇなぁ個性がないよね


   ・・・これどっかで換金してその金ちょうだい」


男B「・・・はい」




ピーピー・・・ピーピー・・・


<その時、女の携帯が鳴り電話にでる>




女A:「はいもしぃ~もしぃ~だーれぇ? あぁ●●たん!? 


    ええ? 誰だろぉアハハごめーん

 

    今日なんで来てくんなかったのぉ?ずっと待ってたんだよぉ? 


    えぇやだ許さなぁ~いぞアハハ♪ うん、うん、うん、いいよぉわかったぁ。


    そいじゃ~あ♪ 明日待ってるね絶対だよぉーバイバイ♪」



<携帯を閉じ、煙草へ新たに火をつける>



女A:「それで、あとなんかないの?」


男B:「えぇーと。うん今日は・・・明日もあるよ。君も仕事上がって疲れてるから帰ろうか?」


女A:「あたしはママ達と飲み直すから飯炊いて先に寝てな。鍵閉めたらわかってるよな?」


男B:「はい、わかりました」



・・・・・・




<ほとんど灯りの消えたオフィスビルのある一室で、向かい合わせで座る一組の男女>

<仕事を終え、安堵したのかぼーっと天井を主に眺めながら談笑している窓際に座る男>

<女はココアの入ったマグカップを持ちながら向かいの席で腰掛ける男の肩越しから

 窓の外を覗き、瞬くネオンの明かりに視線を止める>



女B:「単に好奇心だけど、●●さんって彼女いらっしゃるんですか?」


男C:「えーっと残念ながら、いません。募集中、●●さんは?」


女B:「うーん、どうかな」


男C:「気になる男性とかも?」


女B:「うーん、いるようないないよーな・・・そんな●●さんはどうですか?」


男C:「じつは若い子が好きなんですけど、あいにくおばちゃん方に人気があるので、

   

   そこらへんに折り合いをつけるのに困ってます」


女B:「あはは、なんか複雑ですねぇ」


男C:「ええ、複雑です」


女B:「そういえば、もういつのまにかクリスマスなっていましたね・・・」


男C:「そうですねぇ、なにか特別な思い出とかありますか?」


女B:「はい。いい思い出が」


男C:「いいなぁうらやましい。詳しく聞きたいね」


女B:「中学最後のクリスマスなんですけどね。

   

   当時付き合っていた男の子に、一緒の高校へ行くと前から約束していたのに

   

   親の仕事の関係で愛知の高校を目指すことを打ち明けた日なんです」


男C:「それで?」


女B:「その時はちょっとふくれてあまり喋ってくれませんでした。

   

   多分かなり驚いて返事なんてできなかったと、今では分かる気がします」


男C:「・・・そうかぁ」


女B:「だから毎年この日が来るたびに。ふと思い出しては、


    ちょっとだけ心臓が女らしくなります(笑)」


男C:「そっか・・・いいね。彼もそうだと良いね」


女B:「えぇ、私もそう思います」



 ピーピー、ピーピー

 <と、その時女の携帯が静かな部屋に鳴り響いた>

 <女は着信の相手を携帯のディスプレイで視認すると思い出したように舌打ちした>

 

女B:「あーもしもし、お疲れ様ごめんね、こんな時間まで待たせて。

    

    そろそろ残業終わるよ

    

    うん、あとー三十分位で着けると思う。はい、じゃまた」





 <この後も夜は続く、行き交う人々を純白の宝石で包みながら・・・>


 


 時には切なく、

 残酷に、暖かく、

 行き交う足取りは無数で誰もが己の歩みを確実に知ることもなく、

 まして他者のことなど完全に分かるはずもなく、

 思い思いに歩み続ける。

 ただひたすら・・・ひたすらに・・・幸福を求めて





これ書いた頃は気づかなかったけど、今観ると背中がかゆい(笑)

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