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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

"死の時は終わりて"

掲載日:2026/02/05

「子供だけでこんな所、来て良かったのかな……」


臆病風に吹かれだした兄の尻を、後ろから蹴り上げる


夕暮れの陽射しは僕たち吸血鬼には少しキツいけど、これから訪れるであろう優しい夜を感じられて、僕は好きだ



「お兄ちゃん、ここは恐ろしくて気持ち悪い場所だから禁止されてるだけで、別に危険では無いんだよ?」


呻く兄の背に情報を補足する

優しい兄ではあるし本当は大好きなのだが、頼りない所はいつも腹が立つ


「あっ、ほら……」



「着いた!!」


初めて辿り着いた興奮に、僕は走り出す

眼の前いっぱいに草木の生い茂る道は終わり、視界の先に目的の場所───『人類最後の地』が広がって居た



正確には人類は終わって居ない

自分達の存在から『死』を切除した人類は、それでも戦争を捨てる事が出来なかったのだ


ここに在るのは、その結果としての大地だ



「うわっ………」


兄が、泣きそうになりながら眼前の光景を視る

地平線の先まで続く真っ白な平野には、ピン止めされた虫のように、巨大な鋲を躰に幾つか打ち込まれ、地に繋ぎ止められた人間達が、死ぬ事もなく蠢きながら整然と並んで居た



「すごい!」


人間がうねの様に埋め込まれた中を駆け巡りながら、僕は兄に言った


「お兄ちゃん!これ、全部人間なんだよ!」



「どれか連れて帰ろうよ!!」


兄は人間が言葉も発さずに蠢く様、人間そのもの……とにかく、色んなものが怖いみたいだった



「あっ……」


「この子!この子にしようよ!」


僕は仰向けの姿勢で胴を何箇所か突き刺された、白く華奢な人間の少年の腕を掴むと、ぐいぐい引っ張りながら兄に叫んだ


事前に、色んな本で学んだから解る

かつて僕たちは、こうした人間から血を吸って生活して居たらしい


今では僕たちに適した空気が世界を満たして居るから、そんなものは必要無い


でも、話として聞けばやってみたくなる

なんとしても人間の血を吸ってみたかった



「こんなの、ウチでは飼えないよ………」


「それに、なんか悪さとかするかも知れないし……増えたら困るし……」


僕は大股で兄に近寄ると、両手で兄の胸板を太鼓のように叩き、抗議の意志を示した



「死なないから簡単に飼える!拘束すれば悪さは出来ない!一匹では増えない!」


兄は解った、解ったと言いながら、おろおろと僕の意見に同意した



そして僕は、少年を飼う事にした


力が弱いので人間達は鋲を外せなかったみたいだが、僕と兄が小一時間苦闘したところ、鋲はなんとか外す事が出来た

…………厳密には「最終的に二つほど鋲を外せず、少年の側を引き千切って対処した」のではあるけど



少年を抱き上げる


「可愛い!!」



「………こいつ」


「僕くらい大きくない?」


兄が、お前が小さいんだよと言うので、仕方無く僕はもう一度だけ兄を蹴飛ばした

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