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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介
暗殺者の弟子として

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第四十二話 少年達の死

「K、お前まで脱走しようだなんて考えるなよ?」

「あ、師匠。脱走って、何のことですか?」

「……。ふむ、お前が逃げる気がないのならそれで良い、そうだ、言っておくか。あの馬鹿どもに会いたいと思ったら、お前は死ぬしかなくなったな。」

「……。はい。」

 四人が出て行って一日経って、師匠が戻ってきて修錬場に来た、と思ったら、四人はもう死んだみたいだ。

 思ったより早かった、って言う感想しか出てこない、それ以外の感情が湧いてこない、師匠に歯向かったら、って言うか、居場所がないのに逃げたら、それはそうなる他ない、って言う感情だから、だから、あの子達が死んだとしても、私には関係がない、私は、師匠の元に残る事を決断した、私は、暗殺者として生きていく事を選んだ身だ、だから、他人の死にどうこう言える立場じゃないことくらいわかってる、他人の死にどうこう言って、悲しんで、そんな当たり前のことを出来る立場じゃないことくらいわかってる、だから、何も思わないし、何も言わない。

 ただ、何か遺す言葉があるんだとしたら、きっといつか、あの子達も幸せになれる未来があったなら、それが良かったんだろう、私達が当たり前に失った、私達が手に入れられることはもう二度とない、私達が手に取ってはいけない、幸せな未来、という事を、あの子達は来世では手に入れられる事だけ、そう思う。

「さて、お前もそろそろ実戦を覚える時期だな。」

「はい。」

「身体能力に関しては上々だ、って事は、後は思考力と行動力の強化、それをやらんとな。実弾を避ける訓練、にこれからは時間を使う、お前が生き残る為に必要な事だ、それに、俺にとっても、お前にまで死なれたら、手駒がいなくなっちまうもんでな、死なれちゃ困るってこった。」

 実弾を避ける訓練、って言う事は、拳銃か小銃か狙撃銃か、そう言う銃弾を避ける技術と動体視力、反射神経が必要になってくる、って言う事だ。

 今の私に出来るだろうか、今の私にそんな高等技術を体得できるだろうか、不安は残るけれど、でも師匠がそれをしろって言った以上は、やるか死ぬかどっちかしかない。

 こなすか死ぬかの二択なら、こなす方を選択したい、そう思って私は生きてきた、師匠の所に来てから三年半、私はそう思い続けて生きてきた、復讐の為にと思って行き始めたのはいつからだっただろう、でも、復讐を遂げるまでは、私は死ぬわけにはいかない、生き抜いて、足搔いて、藻掻いて、生き抜かなきゃならない。

「明日から鍛錬だ、今日くらい休んでおけ。」

「はい。」

 鍛錬場からアジトに戻って、シャワーを浴びて軽く食事をとって、もう他には誰も残っていない地下二階の部屋に戻る。

「……。」

 T,タロントン達は死んだ、逃げた事を咎められて、師匠に殺された、それに関して、私はどうしようもなかった、逃げたとしたら殺されるだけだ、って彼女達に話をしたとしても、結局は彼女達は暗殺者としては不適合だった、不適格だった、私がそれを出来るのか、って聞かれたら、まだわからないと答えるしかないけど、あの子達に人殺しは出来なかったと思う。

 逃げたとしても殺されて、逃げなかったとしても鍛錬について行けなくて死んで、どっちにしろ、あの子達が生き残る道はなかった、それはなんとなく理解してた、私が適性があって、こうして生き残ってるのがそうである様に、アルビアが村に戻ってどう過ごしているかは知らないけど、村に戻って生きている様に、私はこの道を選んだ、選ぶしかなかった、私は、その為に力をつけなきゃならなかった、私は、復讐という道を選んだ以上、それを為す為だけの力と能力を身につけなきゃならなかった。

 だから、仕方のない事なんだ。

 私に必要な事、今の私に必要な事、それは、師匠に従って、暗殺者としての腕を磨いて、一人前の復讐者になる事、それだけ、それだけが私の生きる意味、それだけが私の生きる道、それだけが、私が生かされた意味。

 だから、悲しんでる暇なんてない、悼んでる暇なんてない、あの子達はそうじゃなかった、私とは違う道を生きるべきだった子達、私が生き残ったのと同じで、「そうだったから」死んでいった子達、私とは違う道を生きるべきだった子達、それだけ。

「……。」

 久しぶりに、少しだけ気を緩めて寝よう、あの子達の事は忘れよう、どうしようもない事、どうしたって、終わってしまった事なんだから。


「そろそろかしらね。」

 情報屋から得た情報だと、この時間になったら、少佐は基本的に一人で喫煙に行く、喫煙を基地の中とは言っても、屋外でする習慣があるという話で、その既定の時間、が今から三十分後程度の時間のはずだ。

 私は基本的に腕時計をつけない、だから体内時計の感覚で物事を判断しているのだけれど、それが狂っていなければ、そろそろその時間がやってくる。

 森の中の洞を出て、ボストンバッグは置いて、アコニートを装備して、森の端から基地の方に入って行く。

 鉄柵があったとしても、それを飛び越えるのは簡単だ、今日も吹雪、警戒が敷かれていたとしても、視界不良は止めようがない、つまり「やるなら今だ」という事だ。

 陸軍少佐が喫煙の為に独りきりになる場所、まで気配を殺して向かう、道中で誰かとすれ違ったりしない様に、誰かに痕跡を見つけられない様に、慎重に、星の力を使う程でもないけれど、最大限、呼吸を殺して、気配を殺して、その場に進む。

 不必要な殺しはしない、それが私のポリシーだ、必要ならばいくらでも殺すけれど、不必要だと感じたら誰であっても殺さない、それが私のやり方だ。

 だから、少佐以外の誰かに見つかるわけにはいかない、その時点で、その人物も殺さなければ私が死ぬだけなのだから。

「……。」

 目的のポイントすぐ近く、木が一本、大きな針葉樹が一本、その裏側に私はいる、そして、情報が間違っていなければ、少佐はその木のすぐ近くでサボタージュをする、それがルーティーンだ、という情報だ。

「まったく、最近の若いもんはたるんどる……。」

 独り言を言う声が聞こえる、吹雪の中、針葉樹を屋根にして喫煙をする、それは、ここが年中雪が降っている北の地域だから、という特性もあったが、それと共に、ターゲットの少佐のサボタージュの目的として便利なのだろう、とは推測出来る、私とターゲットの距離は、測って五メートル、針葉樹が幅二メートルあり、徐々に近づいてきている。

「ふー、けしからん……。」

 煙草の煙のにおいがする、ターゲットは喫煙を始めた、視界は基地の方を向いていると推測して、私はターゲットに近づく、徐々に、足音を立てずに、ターゲットの背後に立って、アコニートに気を送り込む。

「だ、だれ……!?」

 刹那、アコニートの刃でもって、貪る流星を繰り出す、ターゲットが私の気配に気づいたのか、こちらを向いた刹那に、腹を掻き切って、喉笛へと刃を向ける、血が付着しない様に、血しぶきが散る前に離れる、誰かが異変に気付いて、警戒態勢が敷かれる前に、私はターゲットの死を確認して、気配を殺したまま基地から離れて、森へと入って行く。

 誰かの視線を感じていたら、その時はその人間も殺さなければならない、ただ、誰かに目撃された感触はない、誰かの視線も感じない、という事は、暗殺には成功した、という事だ。

 今回は、ターゲットを殺してすぐに場を離れる判断をするのが良いと感じていた、だから、森の洞に戻って、すぐにボストンバッグにアコニートをしまって、基地の反対側から森を出る、森から出る間、吹雪が降り続けてくれれば万々歳、吹雪がやんでしまったとしたら、その時は星の力の存在の不証明を発動する、そう言うプランだ。

「……。」

 誰かに目撃された痕跡はない、こういった吹雪の日に出歩く人間も少ない、視線を感じる事がないのであれば、それは目撃されていないという証左になる、だから、私は今回も大丈夫だと感じていた。

 ただ、まだ気を緩めるわけにはいかない、ここから、アンドルに戻ってホテルに行って、表向きとしての貿易商として活動をしなければ、よそ者である私は真っ先に疑われえる、それ位の事は理解している。

 ただ、目下の所問題は起こっていない、それを確認して、私は森を出た。

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