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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介
暗殺者の弟子として

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第四十話 摘出

「ん、Kお前、初潮が来たな?」

「初潮って、何ですか?」

「所謂生理ってやつだよ、生理。そういや、Tもそろそろそんな歳か。……。ふむ、明日お前とTを連れていく場所がある、黙ってついてこい。」

「は、はい!」

 師匠と一緒になって鍛錬をしてて、今日は師匠から一つ技を教わってた、貪る流星、って言う技、腹部にナイフを刺して、上向きにして首を斬る、って言う暗殺の技を、ゴムナイフで教わってた。

 今日は私一人、その技に関しては一人一人にしか教えられないから、って言われて、今日は私だけだ、普段は他の四人もいて、基礎的な鍛錬を積んでるんだけど、技を教えるってなると、師匠も一人一人じゃないと教えられないんだと思う。

 私はそれでもいいって言うか、他の四人と一緒だとちょっと息が詰まるって言うか、「私以外の四人は本気で暗殺者になるつもりがない」って言うのがなんとなくわかってたから、一緒に居ても勉強にならないと思ってた、だから別に一人で師匠に教えられること自体は嫌じゃなかった、明確に復讐を意識し始めてから、私は暗殺の鍛錬に集中する様になってた、それは生存本能って言う事なのかもしれない、ただ、私の中で、もうこうして生きていくしかない、もうこうしてやっていくしかない、って言うのを定めてから、私の中で何かが変わった気がした。

 最初は、師匠に投げ飛ばされたりするのが嫌だった、痛くてたまらなかったけど、今ではゴムナイフで火傷をしたとしても、別に痛くない、って言うとちょっと強がってるのかもしれないけど、痛くても平気だ。

 四人が「師匠が怖いから嫌々言う事を聞いてる」って言うのと、私が「生きていく為に必要だと思って習ってる」って言う違い、その違いについては、師匠はわかってるんだと思う、だから、私に対してちょっと違う鍛錬を付けてきたり、特別扱い?してるんだと思う。

「今日くらいは休んでおくんだな、手術が終わって傷が塞がったら、それ以上は手を抜くような甘ちゃんにはならないからな。」

「えっと……、はい!」

 手術、って言うのは、ツァギールがいじられてたあの機械って言うのかな、メスとか、そう言うのを使って「病巣」を摘出するものだ、って基地の本には書いてあった、病巣って言うのは、病気の元になる傷だったり、病気の元になる場所だったり、そう言うのだって書いてあった気がする。

 って言う事は、私は病気?なのかな?でも、初潮って言うのがわからない、生理って言われても、お股から血が出てるのが生理で、っていう知識はあっても、それが師匠にされてるから出てるものなのか、それとも整理として出てるのか、その違いが私にはわからない、私にとって、お股から血が出る、は日常茶飯事だったから。

 でも、師匠がそう言うのであれば、それに従うしかない、もしかしたら、私は病気なのかもしれない、そう考えると、病巣は早めに摘出しておかないと、病気が進行しちゃったら駄目だ、癌って言う病気だったりは、進行する前に何とかしないと、色んな所に転移しちゃって、内臓がどうしようもなくなっちゃうんだ、って言う話だったはずだから。

「部屋に戻れ。」

「はい!」

 ちょっとだけ怖い、今更怖がることがあるの?って聞かれると、わからないと思うけど、怖いというべきなのか、それとも私が復讐を明確に目的として生きてるから、それを達成する前に死ぬのが嫌なのか、についてはわからない、ただ、私は今は死にたくない、ってだけ思ってた。

 それがどんな意味を持ってて、どうして私は死にたくないのか、って言う事まではわからなかった、ただ、私はまだ死にたくない、死ぬわけには行かない、とだけ漠然と感じてた。

「T,明日、私とTは師匠と一緒に手術を受けに行く、って。」

「え?うち、どっか悪いん?」

「えーっと、私もわからないんだ。ただ、師匠が私とTは明日手術だ、って言ってたよ。」

「……、そっか。」

 Tにそのことだけ伝えて、私は部屋に戻る、師匠が私とTだけが手術って言ったって事は、女の子がかかる様な病気なのかもしれない、だとしたら、どんな病気があっただろうか、もう三年前になる、基地で過ごしてた頃に読んだ、医学書の中身を思い出そうとして、思い出せない。

 そっか、基地を出てからもう三年位経つ、って言う事は、私は十二歳になったんだ。

 生理、って言うのは、って思い出そうとするけど、思い出せない、どういう事で、どういう症状で、女の子の特徴だったかどうだったか、ならM、E、Lはいかない理由は、きっとそこにあるんだと思う。

「……。」

 医学書の中身、って言うのが思い出せない、ただ、大事な事が書いてあったような気がする、気がするだけなんだけど、そんな気がする。

 もやもやする、何か大切な事を忘れてる気がする、ただ、それが何で、どんな事だったのか、それを思い出せない、もやもやする。

 寝よう、今日は寝て、師匠について行って、それで良いんだ。


「……。」

 アンドル北の基地の近くの森、に潜伏しながら、過去の事を思い出す。

 あの日、生理という事柄を体験してすぐ、師匠に連れていかれた先、闇医者が経営していた裏病院、に連れていかれた私とTは、子宮摘出の手術をされた。

 それは、覚えている、忘れられなかった、部分麻酔だけされて、意識がある状態で、痛みこそなかったけれど、意識があって、子宮を摘出されるのを、見てしまったのだから。

 あれが子宮だった、私が子供を成すために必要な機構だった、臓器だった、と知ったのは、そののちの話だ、私はあの頃は、まだ知らなかった、それが子供を成す為に必要な臓器で、私にとっては、女として生きる事を捨てろ、と言われたも同然な手術だった事、それこそ、それで女性ホルモンが出なくなって成長しなくなった、だとかそういう話ではなかった、私はそれなりに胸部は発達している方だ、とルーサーによこしまな目で視られた事もあった、アルミニア程豊満な体、という訳でもないけれど、それなりには女としては成長をした方だ、という認識がある。

 ただ、それとこれとは違う、私は明確な欠落者、かちゃかちゃと音がする中、体の中から何かが抜かれる感覚、何かが切り取られて、何かが引っ張られて、何かを引きずり出されて、何かを失った感覚、その感覚を、私は忘れる事が出来なかった。

 女として生きる道を、母として子を育てる道を、強制的に途絶えさせられた、Tはもう死んでしまっているから何も言う事はないけれど、私に関してはそうだ、今の私からしたら、子供なんていたとしても、人質にされるか情報漏洩の元になってお終い、なのだからいらないと答えるだろうし、そもそも子宮摘出のおかげで生理が来ない、という意味合いでは、いちいちナプキンを持って、という手間が省ける時点で、有意義な事だとは認識している、つもりだ。

「ここね。」

 森の中、野営が出来そうな大きな洞窟、何か動物が冬眠していたとしたら、その邪魔をすることになりそうだ、と感じそうな横穴、の情報を得ていた私は、目印を頼りにそこにたどり着く。

 火を起こす為に枯れ木を集めて、ライターと着火剤を使って火を点けて、少しだけ温まる、ここから数日から一週間、をかけて暗殺をして、そしてそれを隠す為の貿易商としての仕事をして、ミルギールに戻る、それが私の「当たり前」だ。

「ふー……。」

 体を冷やすこと自体には慣れている、体を冷やしたとしても、生命活動に支障が出るレベルにならなければ平気だ、ただ、火を見て、温まると、落ち着くという私もいるにはいる。

 油断してはいけない、油断をしてしまったが最期、私達は殺されてお終い、なのだから、私は油断をしない、警戒を緩めない、ただ、落ち着くという感情自体は残っていてもだめではないだろう。

「……。」

 子宮を摘出した日、あの日は、確か今の様な大雪の日、真冬の暮れ、私が十二歳になった頃の話だ。

 子宮を闇医者に摘出されて、女としての欠落をして、そして、暗殺者としての当たり前を得て、私はそして生きている。

 Tを始めとした四人は死んだ、師匠の鍛錬に耐え切れずに、脱走を試みて師匠に殺された、そして、その二年後に出会ったシードルは私が殺した、だから、私は痛みを分かち合う事をしない、出来ない、しようがない。

 それでもいい、それでも復讐を遂げたい、と願ったから、今の私がいる、今の私は、復讐の為の装置でしかない、それで良い、ただ復讐さえ遂げられれば、それで良い。

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