第三十八話 ぐちゃぐちゃ
「あー、すっきりした。じゃ、K、部屋戻れ。」
「……、はい……。」
何かをされ続けて、何かをお股の中に出されて、私は解放された。
師匠は満足したっていって葉巻を吸ってて、早く部屋に戻らないと、同じ事をされそうな気がする、だから、私は裸で地下二階に降りて、部屋に入る。
「……。痛かったよぉ……!」
部屋に戻って、ベッドに入って、布団をかぶって。
涙が流れる、だらだらと、だらだらと。
「怖かったよぉ……!お父さん……!」
助けて欲しかった、何をされてるのかはわからなかったけど、でも、怖かった、痛かった、怖くて怖くて、怖くてい痛くてたまらなかった。
助けて、お父さん、お母さん、ゴラン、誰か、私を助けて。
誰でも良い、大尉さんでも良い、長老さんでも良い、誰か、私を助けて、痛いよ、痛いよ、痛いよ。
「……!」
部屋の外には声は聞こえないんだと思う、だから、泣いたって誰も助けになんて来てくれない、そんな事、わかってた。
でも、女の子として、大事な何かを侵された事、だけは理解してた、私が捨てちゃいけなかった事、捨てなきゃならない事、それが、師匠に捨てられたんだ、って。
そんな事はわかってる、そんな事は、わかりきってる。
ただ、今は泣きたい、今は泣き言を言いたい、誰かに、助けてほしい、お股からぬるぬるした液体が流れてる、それが何かもわからない、師匠に出されたものなのか、それとも私自身が出してるものなのか、それもわからない。
血が出てるだとか、そんな事もわからない、私は、お股から何かが出てるって言う認識し出来ない。
「……!」
涙が止まらない、涙が、私が私の泣いてる声を五月蠅いって思う位、涙が止まらない、泣くのをやめられない。
私は、大切何かをなくした、それだけはわかった、捨てなきゃならない、捨てたく無かった何か、をなくしたんだって、それだけは理解した。
「うわあぁぁあっぁあああぁあぁあぁあ!」
壊れそうになる、叫ばないと、泣き続けないと、私は私でいられなくなっちゃう気がする。
壊れたんだ、、私はもう、壊れたんだ。
だから、叫ぶのがやめられないんだ、だから、涙が止まらないんだ。
「ごめんなんさいごめんなさいごめんなさい……!」
ゴラン、男の子に、好きな男の子に、初めてを上げられなくてごめんなさい、お父さん、お母さん、汚れちゃって、悪い事をしちゃって、ごめんなさい。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
許して、お願いどうか、どうか、これが夢であってほしい、目覚めたら、爆弾も落ちてなくて、ゴランもツァギールに殺されてなくて、お父さん達も爆弾に壊されてなくて、家だって、壊れてなくて。
きっとこれは夢なんだ、悪夢なんだ、この痛みは、この痛さは、きっと夢なんだ。
師匠なんていない、大尉さんもいない、きっと、バベルだって無かったんだ。
きっと、目が覚めたら、ゴランとアリィと、雪の中で星空を眺められるんだ。
「……。」
夢だったら、これが悪夢だったら、そんな事をかつては考えていた、そんな哀れだった私は、現実を知らなかった、とも言えるのかもしれない。
師匠に犯された日、師匠に処女を奪われた後、あの不愉快な体液にまみれながら、私は叫んでいた覚えがある。
九歳の子供を犯す神経もわからなければ、私があの場で「気持ちいいふり」をした理由もわからない、ただ、そうしなければ殺される気がした、それは所謂本能という事柄なのだろうと思う。
「……。」
姿勢を少し楽にして、もう少しで北の都市アンドルに到着する、そんな機関車に揺られて、私は外を眺める。
北の方は私が住んでいるミルギールより更に豪雪地帯で、もう少し時期が悪ければ、機関車が動かないか、それとも除雪用の車両が動かなくなっていて、という話になってくるか、そう言うレベルの豪雪地帯だ。
「……。」
私には、子供を成す機構が遺されていない、それはわかっている、そんな事はわかってる。
ただ、ゴランが生きていたら、村に戻って、そしてゴランの嫁として生きていた未来があったのかもしれない、ゴランは軍に入りたいと言っていたけれど、それを止めて、祭事を扱う家系に婿入りしてもらって、そして生きていくという道があったのかもしれない。
ただ、それは潰えた夢、一度崩壊した村で見ていた、儚いというべきか、何も現実を知らなかった少女の、儚い夢だ。
それは私の夢じゃない、私は復讐者、この戦争の原因であるアルマノの大統領と、そして神への復讐を為す者。
ただ、どうすれば神を討てるのか、伝承にすら残されていない、そんな「人間の運命を弄る」神、情報屋ですら知らないと言ってた神、その神に対する復讐、そんな馬鹿げた話を遂げられるのかどうか、それはわからない。
けれど、それを言ったら、私が使っている「星の力」に関しても、伝承は遺されていない、片田舎の村娘が持つような力ではない、という事は理解しているけれど、でも、どうして私だったのか、ならばどうして私だったのか、私がそれを「星の力」として認識している理由は、何処にあるのだろうか。
星の力、その由来すら私は知らない、ただ使えるから、ただ利用できるから、と言って使っている、危うい力、それを持っている事に関しては、師匠ですら知らない。
そもそも私がそれを認識したのが十五歳の頃、師匠に放逐された後の話だ、放逐されて、今のアジトに居を構えてすぐ、にその力を知った。
アコニート、今はボストンバッグにしまってあるこの武器も、どうして使えるのか、どうやって使っているのか、ならばどうして私が所有者として持っているのか、それすらわかっていない、ただ、使う理由があると思ったから使っているだけ、使い方を知っているから使っているだけ、その理由も、その根拠も、その論拠もわからない。
ただ、私には扱えて、そして必要だと感じただけだ、だから使っている、身体能力の向上から、暗殺の為のアコニートの毒の配合から、気を練るという行為自体から、そもそもどうして出来ているのかを、私自身は知らない。
使えると直感して、そして実際に使えるから使っている、毒を持っている刃、その毒の意味合いを変えられる刃と言うのは、暗殺には向いている、暗殺において、軽く斬っただけで良い、軽くさえ傷を付けてしまえば、後はアコニートの持つ毒が殺してくれる、と言うのは、私にとってはありがたい話だ。
「……。」
ただ、神にその毒が効くのか?と問われると、私は否だと思う、だからこそ、技を磨き続ける事には暇をつけない、貪る流星、という、師匠から習った殺しの技を起点として、アコニートだからこそ出来る、私だけの殺しの技、については鍛錬を欠かさない、と言っても、街中や街に近い場所でその鍛錬をしてしまうと、私の存在がばれかねない、だから、私は暗殺に赴いた先、の森や隠れ場で鍛錬を積んでいた。
貪る流星、それは師匠から教わった殺しの技、私が星の力を知る前に教えられた、確殺の技。
そして、シードルを殺した技、私が、友と呼んでいた子供、シードルを殺した技、それを機に、私の精神性は暗殺者としては及第点になっていったのだろう、それまでの私は、甘ちゃんも良い所で、人殺しの技を習っておきながら、心のどこかで殺しなんてしたくない、と願っていた覚えがある。
ただ、それもシードルを殺してからは感じなくなった事柄だ、私にとって殺しは技術であり、必要経費であり、必要な事柄だ。
生きる理由ではなく、死ぬ理由として、私が尊厳をもって死んでいく為に、殺しの技は必要だった、ただそれだけの話、ただそれだけの事実だ。




