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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介


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第三十二話 アジトについて

「ほれ、着いたぞ。降りろ。」

「えっと、はい。」

 何時間車に乗ってたか、途中で寝ちゃったけど、多分一日ずっと移動してたんじゃないか、って言う位移動をして、師匠さんの家?についた。

 って言うのも、光が入ってきてる場所があるから、多分今は昼間だと思うんだけど、その光が遠くて、地下室?って言う場所なのかな、そう言う場所に到着したみたいだった。

「ついてこい。」

「はい。」

 車を降りて、玄関じゃないドアを通って、なんだか煙たいって言うか、嗅ぎ慣れない匂いがする部屋につく、確か、煙草って言ったっけ、ゴランのおじいちゃん、長老さんが何時だったか吸ってたっていう話だった気がする、だからゴランのお家は、そう言う匂いがするんだ、って。

 ただ、ゴランの家で嗅いだ時より、だいぶん強いにおいな気がする、煙草の種類が違うのかな、でも、煙草って種類の違いで匂いが違うのかな?なんて。

 長老さんが吸ってたのは、確かパイプって言う煙草の種類で、パイプって言う煙を吸う為の木材?を加工したのがあって、それに葉っぱ、って言うのを詰めて、って言う話だった気がする。

「煙草の匂いが気になるか?」

「えっと、煙草って、私の知ってる匂いと違うなって……。」

「カカカ、そりゃ結構なこったな、匂いに敏感だってのは、こっちとしちゃ有難い話だ。」

「そう、なんですか?」

 そう言うと、師匠さんはソファにドカッと座って、お父さんが何時だったか、おじいちゃんが吸ってたんだよって言ってた、葉巻って言う煙草の端っこを切って、マッチで火を点けて吸ってる。

 その匂いは決して良い物とは言えなかった、体に悪い匂いって言うのかな、そう言う気がするだけだったんだけど、私は吸わないと思う、って言う感じ。

「ま、これからの事に関しちゃ、他の連中が来た後で構わんだろうな。飲み物は飲むか?今のうちだけだがな、甘やかすつもりもない、それなりにはきつい修行を付けるからな、今のうちに心の落ち着く場所でも作っとけ。部屋は地下二階の角部屋を使え、降りりゃわかる、部屋が五つあるからな、その一番奥の部屋、それがお前がこれから暮らす部屋だ。」「は、はい!」

 師匠さんは案内をするつもりがないのか、葉巻を吸いながらラジオを点けて、私になんて何の関心もないみたいな素振りを見せる。

 一旦部屋を見てみようか、と思って、廊下に出て地下に続く階段を探す、すぐに見つかった、電球が薄暗い灯りになってる階段、木でできてない、って言う事は、コンクリート?って言う素材なのかな、学校を立て替える時に、そう言う素材の建材?を使うかも、なんって先生が言ってた、コンクリートって言う素材で出来た冷たい階段を下りて、まるで本で読んだ、刑務所みたいな廊下に降りる、本で読んだ、犯罪を犯した人、悪い事をした人達が捕まったら入る場所、刑務所、脱走が出来ない様に、コンクリートで鉄の柵があって、そんな場所とイメージとしては似てる場所、を歩いて、私の部屋を探す。

 角部屋、一番奥の部屋が私の部屋だ、って言ってたから、薄明りの中でそっちに向かう。

 なんだか埃っぽい、って言うのかな、普段から使ってる感じじゃない、普段は使っていなくて、管理って言うか、掃除もしていない部屋なんだろうな、って言う感じの匂いがする、それこそ、私達が基地に行ったばかりの頃、ツァギールの伯母さんに言われた「すえた匂い」って言うのかな、そう言う匂いがするし、歩いてると埃がフワフワしてる、だから、普段は使ってない場所なんだと思う。

「ここだ。」

 一番奥の部屋、鉄の扉をギギギって音をさせながら開けると、簡素な生活空間があった、ベッドとタンスが一つだけ、それ以外何もない、誰かが昔には生活してたのか、ちょっと汚れたベッドに、タンスの中は私のサイズにちょっと似た女の子の洋服が入ってる、ただ、虫に食われてるのか、ところどころ穴が開いてたり、洗濯はしてないんだろうなって言う感じがする。

 これを着て過ごせ、って言う事なのかな、だいぶん軽装って言うのかな、薄着な服が多くて、冬を越せるかどうかはわからない、今は厚手の上着にミトンをして、耳を掛けられるニット帽をかぶってるから、暖房が無くてもギリギリ耐えられるけど、子の洋服で冬を越せ、って言われたら、だいぶん難しい事だと思う、でも、人を殺して過ごすって言う人間が、厚着なんてしてたら、血がついちゃって大変だ、って思わない事も無いから、だから、これを着て過ごす、って言うのが正解なんだと思う。

 ただ、まだ心の準備が出来てない、人を殺す仕事をするって言う話になったのも、まだ昨日か一昨日の話で、師匠さんが言うには、他にも四人誰かが来る、五人を取ったって言う話だったから、後四人いるはずだけど、他の部屋からは人の気配はしないって言うか、人がいる感じはしない。

 だから、まだ大丈夫、心の準備をする時間はある。

「……、ゴラン……。」

 ゴランが私の選択を知ったら、どう思うんだろう、信心深くて、人を傷つける事を怖がってすらいたゴランが、私が人殺しをして生きていくって決めた、そう言う道を選ぶしかなかったのかもしれないけど、そう言う道を選んだ、って聞いたら、どんな顔をするんだろう。

 怖がるのかな、嫌われるのかな、軽蔑されるのかな、怒られるのかな、どうなんだろう、私はゴランの事を良く知ってるつもりだったけど、よくよく考えたら、ゴランは七歳で死んじゃったんだし、今のゴランが生きてたとして、どういう人間に変わったのか、って言うのはわからない。

 もしもゴランが生きてたら、私はこの道を選ばなかったかもしれない、ゴランと一緒に、村に戻るって言う選択肢を取っていたのかもしれない、それかもしかしたら、ゴランと一緒になって、ここにいたのかもしれない。

「ゴラン……。」

 涙は出てこない、涙を流しても、意味が無いから。

 私が泣いても、誰も何もしてくれない、何も変わってはくれない、だから、意味がないんだ。


「……。」

 ゴランがツァギールに殺されたのは、丁度今の時期だった、十二年前、私達が七歳の頃、私の誕生日が過ぎて少し経った頃、ゴランはツァギールに刺されて、絶命した。

 ただ、結局の所ツァギールの動機はわかっていない、動物を殺す事で何かを得ていた、感情として何かを得ていたのだとしたら、それが人間に向かっただけの話、でもある、ただ、それ以外にも理由はあると思ってもいる、あの神がツァギールをいじった光景を見たのを覚えている限り、あれが無ければツァギールが人殺しになる理由は無かった、と私はそう推察をした、ならば、私がこうして暗殺者をしている理由も、それに連なる事になってくるのだろうか。

 私が神と呼称している存在、あれは何なのか、どういった意味合いを持つ存在なのか、については考察の域を出ない、神話をかじった事もあったが、あんな形状をしている神を見た事はない、人間の脳を開いて、メスで何かを施すなどという神の存在を、私は知り得ない、だから、本当に神なのかどうか、についてもわかってはいない。

 ただ、人間の運命に干渉をして、人間の宿業を狂わせる存在、それが出来る存在が、私の夢幻ではなくて、本当に存在するのであれば、それは神か悪魔か、どちらか、という話になってくるだろう。

 悪魔、この国ではその存在は知られていない、土着信仰的に自然に神が宿っている、という地域があれば、そもそも神は私達を見守っている超常的な存在だ、という地域もある、その地域差はあれど、アルマノという国に「悪魔」という概念はあまり一般的な思考としては存在しない。

 かくいう私も、悪魔という単語を何処で知ったのか、と問われると、ベイルのラジオ放送を聞いている時に知った単語だ、ベイル出身の情報屋曰く、ベイルでは天使と悪魔、という概念が一般的で、神ではなく天使が導く者、そして悪魔が人間や世界に害を為すもの、という位置づけらしい。

 詰まるところ、ベイルにとってはアルマノという国自体が悪魔の国で、悪魔を信仰している、とまで言われている国だ、という事だ。

「そろそろかしらね。」

 ベランダに出て、干し肉を確認する、丁度良い干し加減になってきている、あと二日程度干せば完成だろう、感触的には殆ど乾いているが、そういう時に数日待つ、が師匠から習った勉学だ、万が一それで道中で肉が腐ったら、私達は食べるものがなくなってしまう,だから、肉の干し加減に関しては、師匠も私もシビアだった。

 飢えで死んだ、だなんて馬鹿げた話にならない様に、という話だけだけれど、飢えて死ぬのは殺されるよりよっぽど拷問的だ、と私は考えている、修行中、一週間を水だけで過ごすという事をしていた時期、私はそれが一番きつかった覚えがある、というよりは、そこで脱落者が出る程度には、普段の修行をこなしながら一週間食事を抜く、という行為は自滅的で、自壊的で、頭の悪い事だ。

 それが修行ではなくて、本番の暗殺に変わった、と言っても、それは変わらない、私はある程度は栄養補給をしなくても生きていける自信はある、きつかった覚えはあるけれど、耐えきれなくて餓死する程では無かった、けれど、そこに関してはシビアなのは、最低限の栄養を取らないと、暗殺の為の活力とでも言えば良いのだろうか、動く為の動力が足りなくなってしまう、だから、私はそこに関してシビアだった。

「そう言えば……。」

 機関車のチケットも取っておかなければ、ある程度の移動であれば、その日に買うチケット出こと足りるのだけれど、一日を掛けて移動する場合、チケットを事前に購入しておかないと、席が無くなってしまう可能性がある。

 アルミニアにそのあたりの事務手続きは任せている、三日後に出発と言っても、アルミニアは嫌な顔一つせずにチケットを取ってくれるだろう、彼女はそういう人種だ。

 騙し続ける事、申し訳ないという感情はとっくのとうに捨てたけれど、施政者や神を討った後、私がどうするのか、それでも生きていたら、生き延びてしまったんだとしたら、貿易商として生きていくんだろうか。

 未来は視えない、私には、暗殺を終えた先の未来が見えない、だから、考えるだけ無駄なのかも知れない、しかし、考えてしまう事だ。

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