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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介
暗殺者の弟子として

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第三十話 師匠との出会い

「ではリリエル君、君の引き取り先なのだが……。」

「ほう、お前が俺の弟子になる子供ってやつか、ふむ……。ま、弾避け程度にはなってくれるだろうな。」

「貴方は?」

「俺か?俺は名乗らない、俺の事は師匠とでも呼べばいい、お前に、これから生きる術を叩き込むんだからな。」

 アリィとは別室で待ってたら、大尉さんが来て、恰幅の良い大きな男の人を連れてきてる、きっと、この人が私達の国にとって都合の悪い人、反乱分子を殺して回ってる、所謂「殺し屋」だったり、「暗殺者」って言われる人なんだと思う。

 名乗らないって言う理由はわからない、名前を言ったら何か悪い事があるんだろうか、何か不都合があるんだろうか、そんな事を考えるけど、答えは出てこないし、私はそれを知らない。

「えっと、リリエルです。」

「名乗る必要はない、お前も名前を捨てる準備をしておくんだな。俺達って言うのは、そう言うもんだ。」

「えっと……。」

「ではリリエル君、ここで我々とは別れの時だ、二年間という短い期間だったが、君という人材を育てられたことについては、喜ばしく思おう。何か、村へ帰るアルビア君にいう事はあるかね?直接合わせる事はもう出来ないが、言葉を伝える程度なら出来るだろう。」

「……。きっと、幸せなお嫁さんになってね、そう伝えて下さい。私達は、ずっとずっと友達だよ、ずっとずっと、心は一緒だよって。」

「ふむ、伝えておこう。」

 部屋の入り口、とは違う場所から入ってきたその人について行く、それが私のやるべき事なんだと思う、これから先、軍の命令で、軍の指令で、反乱分子を殺して回る事、それが私の未来なんだろう、それはわかった。

 というよりは、大尉さんにこの部屋で待つように言われてから何時間か、ずっと考えてた、ずっと、私には何が出来て、私はどう生きるべきなのか、どうすれば、皆は幸せになれるのか、そんな事を考えてた。

 でも、その「皆」に私は含まれない、含められない、私は、私として生きていく為には、幸せになっちゃいけない、ゴランを守れなかった時点で、お父さん達を失った時点で、私が一般的な幸福、って言うのにたどり着く為の道はなくなっちゃったんだと思う。

 それを私は理解してる、ゴランのおじいちゃん、村の長老達が、軍人さんの子達を殺して、それでのうのうと軍に頼って村を復興して、そんな「厚顔無恥」な人達と、一緒に暮らしたとしても、いつかは一緒に居られなくなる、いつかは、私にとってそれは駄目な事だ、って言う結論になる。

 なら、どうして軍の反乱分子を排除する役割?のこの「師匠」について行くのか、については、私もわからない、ただ、それ以外に選択肢がない、っていうのが正しいんだと思う、それ以外に選択肢がない、それ以外に方法がない、それ以外に、私が選べる道がない、んだと思う。

「さ、誰かに見られても面倒だ、行くぞ。」

「はい。大尉さん、ありがとうございました、アリィの事、お願いします。」

「ふむ、達者でな。」

 隠し扉、師匠さんと大尉さんが入ってきたのとはまた別の隠し扉、棚に見えた隠し扉を通って、基地の裏側に入る、ここはアリィも知らない場所だろうな、アリィは、基地の中を良く探検してたけど、でもここに関しては知らないと思う、それ位、人気がない。

「それで、お前を拾うにあたって、お前の経歴を調べたんだがな、お前、親無しだな?」

「……、えっと、親無しって言うのは、お父さん達がいないって事ですか?」

「ガキにわかりやすく話すんじゃ、そうなるか。」

「……、はい、お父さんもお母さんも、爆弾で死んじゃいました。おじいちゃんとおばあちゃんの事は知らないので……。だから、親無しって言うか、天涯孤独?って本に書いてあって……。そう言う事なんだと思います。」

「そうか、見た目の割に賢いんだな、お前。それ位はわかってもらわねぇと、これから先の修行についてこれねぇだろうしな。あの大尉が目を掛けてたガキ、なんだからそれ位の事は知っててもおかしかねぇか。」

 師匠さんについて行きながら、細くて少し暗い通路を歩いてく、師匠さんの足は速くて、私は早歩きにならないと追いつけない。

 私の事を調べた、っていう事は、私の村が爆弾で崩壊したことも、その後復興したことも知ってるのかな、なら、今村には誰が残ってて、誰が生き残ってるんだろう、それも知ってるのかな。

「さて、お前は名前を捨てろ。リリエルアステリアコーストだったか?なら、お前のこれからの名前はKだ、K以外に名乗る事をまずは禁止する、それが暗殺者ってもんだ、人間らしい生活が出来るなんて、生ぬるい考えは今捨てろ、K、お前はKだ。」

「名前……、を捨てる理由、って……。」

「そりゃ勿論、アキレス腱になるから、だ。弱点ってのは、一個でも少ない方が有難いだろうに、それもわからん程阿呆なのか?」

「えっと……、はい。」

 アキレス腱、確か弱点の言い方だった気がする、軍にとってのアキレス腱になり得る事、って言う言葉が何処かに書いてあったはずだ。

 名前を捨てろ、って言う事は、私はこれから、リリエルとしては生きていけない、生きていってはいけない、って言う事なんだと思う、私が私としている為に必要な名前、お父さんが、お母さんがつけてくれた名前、それを捨てなきゃならないって事だから。

「ほれ、早く来い、K。」

「あ、はい!」

 それで良いんだ、私が生きていく為には、私が生き残るためには、そうするしかないんだ。

 だから、この師匠さんについていって、暗殺者として、人を殺して生きていく、それが私が生き残る、唯一の道なんだ。


「さて、そろそろかしらね。」

 K、と呼ばれる様になってから十年、リリエルという名前を偽名として使い始めてから四年、私にとって、リリエル・アステリア・コーストという名前は、現在進行形では偽名でしかない。

 名もない村の出、だからこそ本名を偽名として使えると言うのがあるのだろうけれど、私はこの名前に特別何か感情を抱いてるわけじゃない、ただ、名前を考え直すのが面倒だから、そう言った単純な理由で、今では偽名としてその名前を使っている。

 ただ、それを本名としては使っていない、コードネームの一種、として使っているだけだ、師匠に聞かれたら、本名に未練があるのか、だなんて言われそうだけれど、そんな感情も残っていない、私はただ、新しい名前を考えて、偽名を浸透させて、という手順を踏むのが面倒だっただけだ。

「そう言えば……。」

 あの日、師匠に連れていかれたあの日、アルビアとは別れを告げずに袂を別ったあの日、アルビアは何かを言っていたんだろうか。

 村に帰ったはずだ、という事に関しては知っている、というよりは、師匠がもたらした情報では、村に戻って両親と共に暮らしている、という話だった。

 私自身は会っていないし、会うつもりもない、今更どんな顔をして会えば良いのかもわからない、ただ、アルビアには幸せになってほしいと願った、微かにそんな記憶が残っている。

 記憶に残っている、と言っても些末な記憶だ、袂を別った以上、アルビアがどうなったとしても私には関係がない、幸せだろうと不幸だろうと、あの時願った、「幸せなお嫁さんになってほしい。」という願い、呪い、それが成就しているかどうかもわからない、そこに関する情報はない、ただ、師匠曰く、アルビアは無事に村に戻って、生きている、という事らしかった。

「……。」

 アルビアとゴラン、私、三人揃えば何だって出来る気がしていた、シードルと一緒なら、何だって叶う気がしていた、そんな子供らしいと言えば子供らしい、甘っちょろいと言えば甘っちょろい幻想、それをずっと抱いていた覚えがある、それこそ、シードルをこの手で殺めるまでは、ずっと、希望は何処かにあるんだと信じていた。

 ただ、現実はそうではなかった、現実に希望はない、現実に光はない、現実にまやかしの希望は効果がない。

 だからこそゴランは死んだ、だからこそ、師匠は私にシードルを殺させた。

 まやかし、全てはそう、希望とはまやかし。

 私にとっては、なのかもしれない、一般的な人間からしたら、それは現実として存在する希望という現象なのかもしれない、ただ、私にとって希望とは、夢とは、まやかしや幻の類でしかない。

 夢、希望、そう言った事柄を、私は知らない、知っていたのかもしれないけれど、捨ててしまった、だから、私にとって、それは幻の類でしかない。

「……。」

 そろそろ干し肉が出来上がる、それが出来上がったら、次の暗殺に赴く。

 次のターゲットは、軍幹部の中でも上層に位置する人物、少佐と呼ばれる地位にいる人物だ。

 暗殺は難航するかもしれない、ただ、私はそれ以外の方法論を知らない。

 いつか、施政者を討つ時まで、いつか、神に復讐をする時まで。

 私という刃を、刃こぼれさせてはいけない、それだけは純然たる事実なのだから。

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