表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/28

第二十七話 雪解けの時期に

「リリィ、今日もいかないの?」

「うん、邪魔になると思うから。」

「そっか。」

 軍の基地に来てから、一か月くらいの時間が経った、村の事を忘れたわけじゃないけど、テントで暮らしてた頃に比べると、今の生活はホッとする。

 アリィは毎日どこかに行ってて、探検だって言って基地の中をフラフラしてるらしい、私は大尉さんの所に時々行ったり、ツァギールの伯母さんとお話をしたりはするけど、基本的には部屋に沢山ある本を読んでる。

 軍関係って言うのかな、戦争に関わる本がおおくて、勉強になるっていうのもあるんだけど、それ以上に、これが軍隊の人達、軍人さん達の中での当たり前で、私達にとってはおかしな事なんだ、って言う事が多くてびっくりする。

 軍人さん達がずっと無表情で、無感情でいる理由、って言うのもツァギールの伯母さんから聞いた、軍人さん達は、基本的に笑ったりしちゃいけない、私語って言って、自分達の用事で喋っちゃいけない、って言ってた、ツァギールの伯母さんはまだ、軍の中でも下の人って言うのかな、前線に出る役職の人じゃなくて、基地の中で色んな事をする人だから、って言う理由で私語も許されてる、って言ってたけど、怖いくらいに黙ってる人達、例えば大尉さんの部屋の前に立ってる人達は、大尉殿、入室許可を、って言ってるところしか見た事がない、それ以外の言葉を話してる所を見た事がない、それ位、軍って言うのは「規律」って言うのを大事にしてる、って言う話なんだって。

 そんな中で、アリィがフラフラと基地の中を歩き回っても怒られない理由、って言うのは、アリィがまだ子供で、軍の機密情報に関してもわからない位子供だから、って言う理由だ、って言ってた、それ位子供だから、ある程度フラフラしても、機密に関わる事をみたり探ったりしなければ、大丈夫なんだ、って。

「雪、とけてる……。」

 雪がとけるころ、って言うのは、お父さんが雪解け水を神様から受け取って、それを街に売りに行く時期だ、って言うのは覚えてる、去年までずっとそうしてた、お父さんは祭事をしてる人で、水を売りに行く人で、そういう家に生まれたんだから、覚えてる。

 雪解け水、神様から受け取った、大切なお水、それをお父さんは街に売り出して、村に街の品物を持ってきて、それを私が生まれる前からずっとやってた、って言ってた。

 お父さんとお母さんは、煙突を村に置く事を駄目だって言ってた、それは大尉さんから聞いた事、お父さんとお母さんだけが、煙突を村に置くのは危険だ、って言って反対したんだって。

 他の大人の人達、ゴランのおじいちゃん達は、村の発展の為に、って言って、煙突を村に置く事を決めたって言う話だった、村の発展って言うのは、電気を引いてガスを引いて水道を引いて、そう言う「便利」な事、私達からしたら当たり前にあった事でも、私達が生まれる前は当たり前じゃなかった、そんな設備の為に、村に煙突を置く事を決めたんだ、って。

 私達からしたら、それがない生活、水が蛇口から出ない、コンロが使えない、電気が点けられない生活、って言うのがどんな生活なのかはわからない、お父さんが言ってたのは、昔はお父さんのお父さんの頃は、馬車を使って移動をしてた、私のおじいちゃん、私が生まれる前には死んじゃってたおじいちゃんとおばあちゃんは、馬車を使って移動をしてたんだ、って。

 馬車には乗った事はない、車にも乗った事は殆どないけど、私達が生まれた頃には、馬はもういなかった、育てる人がいなかったってお父さんが言ってた、だから、私は馬車って言うのを教科書でしか知らない。

 それがあって今がある、って言うのはわかってる、発展の為に、村の未来の為に煙突を置いた事もよくわかってる、ただ、だからって戦争に巻き込まれる様な事をわざわざ自分達からしておいて、それでいざ砲撃にあって、村が壊滅したら軍人さん達のせい、って言うのは、私は納得がいかない。

 わかってて、誰かを殺す為の兵器だってわかってて、ベイルって言う国に向けて砲弾を撃ってる事を知ってて、煙突を置いたはずなのに、それが壊されたから軍人さん達のせい!はおかしいって。

「……。」

 軍隊さんの所の子達、三人だけ生き残った子達は、ゴランのおじいちゃんから、アリィのお父さん達に殺された、その時点で、私は村の大人の人達と、ツァギールの違いがわからなくなった。

 人を殺す事は悪い事、ゴランのおじいちゃんはそう言ってた、だから、ツァギールを許せないんだ、って。

 なのに、軍隊さんの子達を殺した、その差がわからない、それに、人殺しの兵器を村に置く事を決めた人達が、人殺しはいけませんって言っても、それはムジュンしてるんじゃないかな、って思っちゃう。

 ここの人達、基地にいる人達は、死ぬことも仕事の内だ、って言う風に教えられてる、って大尉さんが言ってた、ここにいる軍人さん達は、殺されることも覚悟して、殺す覚悟をして、それでここにいるんだ、って。

 それが正しいのかどうか、あってるのかどうか、はわからない、私は、殺す覚悟も殺される覚悟も怖いと思う、だから、どっちがあってて、どっちが間違ってて、なんて事はわからない。

 でも、それはあってると思った、殺す以上は、殺される覚悟を持っていなきゃならないんだ、って、殺すって事は、命を奪う事なんだから、命を奪われたとしても、それは仕方がない事なんだ、って。

「……。」

 軍略に関する本は、読んでて楽しいとは思わない、でも、読んでて勉強にはなると思ってる。

 将来軍に入るのか、それとも村が治ったら村に戻るのか、それは私にもわからない、租もそも村に戻って幸せになれるのか、その頃に戦争が終わってるのか、それとも続いてるのか、続いてるのなら、また煙突を置くのか、それもわからない。

 だから、私は迷ってる、あの日からずっと、ゴランを殺されたあの日から、神様みたいな「何か」が人の事をいじっているのを知った時から、ずっと悩んでる、迷ってる。

 もしかしたら、私も知らないだけであれに「いじられた」結果なのかもしれない、あの時、続いてる線と途切れてる線、は、生きてる人と死んじゃった人の違い何だろうなって言うのはわかってた、でも、誰が生き残って誰が死んじゃって、まではわからなかった。

 もしもツァギールが生きていて、何処かで生き延びていたとしたら、私はゴランの仇立って言って、ツァギールを殺すのかな。

 それとも、やっぱり人を殺すのは悪い事だから、って言って止めるのかな。

 ツァギールに感じてる事、私が殺されてたかもしれないって言う事実、そうだったかもしれないって言う可能性、それを考えると、ゾワゾワする。

 ただ、あの時ゴランじゃなくて私が殺されてたら、こんな事で悩まずにいられたのかな、悩む事も無くて、お父さん達と一緒の所に行けたのかな、とは思う。

 ただ、そうはならなかった、ゴランは死んじゃって、私は生き残って、お父さん達は死んじゃって、村の殆どの人が死んじゃって、それで、残された軍隊さんの子達を殺して。

 だから、それはどうしようもないんだと思う、私にはどうしようもない事、どうにかしようとしても、私にはどうも出来ない事、なんだと思う。

 軍略の本を読みながら、知らない言葉が出てきたら辞書を引いて、それをずっと繰り返して、この一か月過ごしてきた。

 冬を越して、これから暖かくなって、だから、そろそろ暖房は消さないと、暑くて体がかゆくなっちゃうから、って考える。


「……。」

 星空を眺めながら、あの頃の事を少しだけ思い出す。

 軍の基地で過ごしていた頃、あの頃の教育と言うのは、私にとっては本を読む事だけだった、誰かに強制されたわけでもなく、アルビアの様に基地の中をうろつくでもなく、ただ軍略に関する本を読み続けていた。

 最初に手に取った本、よく覚えている、コラテラルダメージに関する本、そこから始まって、戦争とは何か、戦場とは何か、戦場における犠牲とは何か、軍における機密とはどんな事を言うのか、そう言った事を学んだ。

 大尉に話を聴きに行った事もあった、大尉は基本的に司令官という立場の人間で、前線に出るタイプではなかった、年齢的にも、あれ以上になるわけでもなく、あれ以上の立場を欲している訳でもなく、という人間だった覚えがある。

 懐いていた、とは少し違うのかもしれないけれど、私にとっては者を教えてくれる人、という印象だった、勿論、戦争の理由に関しては後ほど知った、開戦した理由は、アルマノが資源を求めてだ、とは大尉は口が裂けても言わなかった、あくまでもベイルからの侵略を受けている、という体であり続けた、それ子供に言った所で理解出来ないだろうと判断したのか、それとも大尉以上の上からの圧力だったのか、そういった類の情報統制だったのか、それに関しては私は与り知らぬところだ、ただ、ツァギールの伯母は、大尉からそう聞いている、と言っていた。

 軍隊の人間達、軍人達は、そう信じていたのだろう、自分達が侵略戦争を仕掛けているとも知らず、資源の為に起こされた戦争だとも知らず、彼らは「自らの尊命」として、国を守る為に戦争に参加していたのだろう。

 それが侵略だと知らず、知らされず、認知する事もなく、侵略戦争の片棒を担いでいた、少し考えればわかりそうな事だけれど、けれどあの空気の中でそれを正しく理解しろ、と言うのも酷だろう、私達の村に、私達子供がバベルの意味を知らずに生きていた様に、彼らもまた、それを知らずに戦争をしていたのだ。

 大尉は知っていたのだろう、だからこそ、私という人身御供を交換条件に、師匠に対して「反逆者の始末」を秘密裏に依頼しようとしたのだろう、しかし、それを逆手に取られて、結局大尉は殺された、私という駒を師匠が手に入れてからすぐに、その情報を潰すべく大尉は殺された、それが私の記憶だ。

 結局、誰が正しくて誰が間違っていて、という話になってくると、私にはわからない、が正解になってしまう、戦争とは、それ位複雑怪奇な理由で起こるものだ、と私は認識していた。

 軍関係者が、施政者が、敵国が、言いたい事は言えるのだろう、言えない事はないのだろうけれど、でも、それが正しいとは決して断言できない、それが戦争という事柄だ。

 ただ、私にとって復讐すべき相手、と言うのが、侵略戦争を仕掛けたアルマノの施政者、表に出てくることも泣く、ただ虎視眈々とまた侵略の機会を伺っている、という情報屋の言葉の通りであれば、また近いうちに戦争を引き起こすつもりであろう、その人物だ。

 戦争を止めたいだとか、戦争をしたくないだとか、そんな綺麗ごとを言うつもりはない、ただ、私は復讐する、私は報復する、ただそれだけの話だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ