第二十四話 基地に到着して
「さ、リリエル君、アルビア君、ここがこれから君達が生活する場所だ。」
「はい、お願いします。」
「リリィ、良いのかな……?」
「……。アリィ、でも行く場所がないんだから、どうしようもないよ。」
朝の日が昇ってすぐに村を出て、今は日が沈んで夜になってる、それ位長い時間を車に揺られて、移動してきた。
検問、って言われる場所を通って、街のはずれにあるのかな?あんまり周りは見えないけど、でも、人が沢山いる気がする、でも、基地の中にはあんまりいなくて、ちょっと離れた場所かな?って言う感じがする。
人の気配、なんて考えた事もなかったけど、アリィやゴランが秘密基地に来るのを、私はいつも足音がする前に気づいてた、って言う事は、誰かがいる事はわかってる、って言うのが私なんだと思う、だから、ちょっと離れた場所に人が沢山いる、基地の中には多分軍人さん達がいるだけ、だと思う。
「こっちだ。」
「はい。」
「リリィ……。」
基地の中を歩いて行く、怖がって私の服の裾を掴んでるアリィを後ろに、偉い人に連れられて、基地の中を歩いて私達がこれから生活する場所に向かっていく。
基地の中は重たい空気で、軍人さん達が色んな所を、小銃をもって警備してるけど、誰もかれも表情一つ変えない、真顔で小銃をもって、担当してる場所を守ってるんだと思う。
「さて、この国が今どうしているか、君達は知っているかな?」
「この国?って、国って……。私達は、村と街がある事しか知らないです……。」
「そうか、まずはそこから話さなければならないか。今、我が国アルマノは、隣国ベイルと戦争状態にある、戦争と言うのは、争いあうという事だ。そして、君達のいた村には、バベルと呼ばれる砲台があった。あの砲台が何故村に設置され、君達子供に何も言わずに稼働していたか、それに対する疑問は無かったかね?」
「えっと……。煙突は、一日一回大きな音を出すから……。煙突、バベル……、砲台……。」
「君達は確か七歳だったか、君達にはまだ早いと、大人が考えて真実を伝えていなかったのかもしれないね。戦争、それは国家間での殺し合いの言葉だ。君達の暮らしていた村は、隣国ベイルとの国境に位置する村だった、だからこそ、ベイルに攻撃をするのに、都合が良かったのだ。であるからして、君達が生まれる頃には戦争状態になっていた我が国とベイル、その牽制と攻撃の為に、バベルは設置された、という経緯だ。そこまで聞けば、君達のいた名もない村が攻撃された理由、についても考えられるのではないかな?」
村が攻撃された理由、って言うのは、爆弾を落とされた理由だと思う。
アリィは怯えて話も聞いてない、私達が暮らす場所に向かいながら、偉い人が私に問いかけてくる、その答えを、私ならわかるだろう、って。
でも、私だってアリィと同じ七歳の子供で……、でも、偉い人が言いたい事、については分かった、カタログを眺めてた頃には、それが何の意味があって、どんな使い方をして、って言うのが想像出来なかったけど、今ならわかる。
「私達の村が、隣の国を攻撃してた……?」
「その認識で間違いがない。我々アルマノの軍は、名もない村にバベルを設置する事で、敵国ベイルの認識を誤認させていた、我々が軍の基地から砲弾を撃っている、だから辺境の村で何かがあるはずがない、とね。しかし、敵国は掴んでしまった、君たちの住んでいた村が、実際の所には牽制と戦争の引き金として作用してしまっていた事にね。その報復の為に、村ごと爆撃した、と言うのが真実だろう。我々が通信途絶から三か月動かなかった理由は、そうだな……。村に生き残りがいたかどうか、それを確かめるすべがなかったからだ。あの地域は豪雪が有名であるからして、たどり着くこと自体が困難だった、雪の中で遭難してしまっては本末転倒なのだから、という理由で現地への到着が遅れた、という事だ。……。軍関係者は、全滅したと聞いている。我々が現地に赴いた際にも、その痕跡は残されていなかった。軍関係者は全滅、そして村には生き残りが数十名、それが私の認識している事実だ。」
「それで、今になって……。」
「到着が遅れてしまった事に関しては、謝罪の言葉を。朝発砲したのは、村の残られた方々の声を鎮めるためだ、誰かを撃つためではなかった。怖がらせてしまったのなら、それも謝罪しよう。」
「は、はい。」
そろそろ部屋につく、と言って偉い人はとある扉の前に立つ、そこにも軍人さんが処す銃をもって立ってて、偉い人が近づくと、ビシッと敬礼をして部屋の入り口からずれた。
この建物、私達が知ってる、木造建築?とは違って、鉄とかの素材で出来てるからなのか、歩くとコツコツ音が響く、軍隊さんの子達は言ってた、確か、足音を立てない忍び足をしても、それでも歩く時に音はなっちゃうから、自分達の自由には部屋の外には出られない、出ちゃったら、すぐに大人の人にばれるから、って。
それがこの音だとしたら納得出来る、私とアリィの足音まで響いてるんだから、軍の子達が履いてた靴だったら、それはそれは大きな音がなると思うから。
「入りたまえ。」
「は、はい!」
「リリィ……。」
「……。大丈夫だよ、アリィ。きっと、大丈夫。」
金属でできた扉をあけられて、中に入る。
中は子供が何人か暮らせる位の広さで、本がたくさんあるって言うのが少し印象的だった、壁一面に本がずらっと並んでて、その反対側にベッドが何個かあって、勉強机があって、そんな部屋だ。
多分、元々ここで暮らしてた人達がいたと思う、でも、今は使われてない、そんな感じ。
匂いがするって言うか、基地の中とはちょっと違う、そんな匂いがする、だから、ここを使っていた人がいたんだと思う、そんな感覚になる。
「君達は基本的には基地の中で過ごしてもらう事になる、基地の外に出る事は基本的に許可できない、ただ、この部屋の中だけで過ごせ、というのも酷だろう、そうだな、基地の中、機密に触れない程度、であれば自由に行き来してもらってかまわない、子供らしく基地の中を探検する事、基地の中の人間と話をする事、については許可しよう。ただ、機密に触れてしまう様な事をしてはいけない、それだけは私と約束をして欲しい。それが出来ないのであれば、私だったとしても君達を庇いきれないからね。」
「えっと……、はい。それで……、おじさんの事は、なんて呼べばいいんですか?」
「私かい?私は役職が大尉でね、大尉殿、と呼ばれる事が殆どだ。殿、は点けずとも構わない、大尉と呼んでくれたまえ。」
そう言うと偉い人、大尉は、帽子を脱いで顔を見せてくれる。
おじさん、って言うよりはおじいさん、な大尉は、皺の寄ったおでこに、眉間に傷跡が残ってる、よく見ると、頬っぺたにも傷があるおじいちゃんだった。
声を聴いた感じ、おじさんだと思ったけど、声よりも見た目の方がおじいちゃん、って言う感じだ。
「それでは、この部屋は自由に使ってくれ、私に用事があったら、大尉の所に行きたい、と誰かしらに言ってくれれば、通じるからね。」
「了解、です。」
「では、私はこれで。食事に関しては食堂を後で案内しよう、そうだな、まずは入浴をすると良い、暫く風呂に入っていないだろう?すえた匂いがするな。女の子がさせていい匂いではない。男所帯な基地だが、幾人かの女性隊員の為に、一か所そう言った風呂を用意している、そこに行くと良い。今、女性隊員を呼んでこよう。」
「ありがとう、ございます。」
匂い、だなんて気にする余裕が無かった、すえた匂い、って言うのがどんな匂いかはわからないけど、確かに何か月もお風呂に入ってないんだから、臭くなっててもおかしくないと思う。
大尉はそれだけ言って、帽子を被り直すと部屋を出ていっちゃう、私とアリィは二人で、女性隊員さんが来るのを待ちながら、変な空気の中で過ごす。
「えぇ、ありがとう。店の方は変わりないかしら?」
「はいですとも、社長に店を任されている以上、何があったとしても店を守り抜くのが僕の役割ですから!」
「その気概はありがたいけれど、貴方それでこの前体調不良になっていたと言っていなかったかしら?体調を管理するのも仕事のうち、だと思うのだけれど。」
「あはは、それを言われちゃうと、どうしようもないですね。でも、社長が色んな所回って色んな方とやり取りをされて、それで店が成り立ってるんですから、僕も張り切って売らないとです!」
カンパニーの社員が来て、野菜を届けるついでに少し世間話。
今話している男性は、私がダミーカンパニーを創立した頃、つまり四年前からの社員のルーサーという青年だ、私よりは年上だけれど、まだ年若く、子供がそろそろ生まれるか生まれないか、という話を小耳にはさんだ覚えがある、という社員だ。
カンパニー創立時、学校を卒業したばかりで職に着けていない、という話で面接を受けに来た青年であり、私にとっては社員という部下第一号でもある。
そんなルーサーは、私の正体にも気づかずに懐いている、年下に懐くというのが意味が分からない話かもしれないけれど、懐かれている自覚はある、恋心ではない、ルーサーには奥さんがいる、結婚をしているのだから、それはないだろう。
ただ、その感情を抜きにして懐かれている、という自覚はあった。
「それじゃ、店の方はお願いね。また私は仕入れに行くけれど、次は何が良いかしらね。」
「うーん……。社長、肉が欲しいって言ってませんでした?でもそっか、冷蔵庫の問題があるのか……。うーん、でも、今の会社の利益なら、冷蔵庫を導入しても問題はないでしょうし、後は地域とのやり取りですかね。」
「じゃあ、そのあたりはアルミニアに任せましょうか。」
「はい、伝えておきます!」
アルミニア、というのは、女性の社員の名前で、ルーサーの次に入ってきた、所謂交渉を担っている社員だ。
地域とのやり取り、私が買い付けてきたと表上している品物のやり取りの交渉、そう言った事を一手に担っている社員、その社員の名前がアルミニアだ。
交渉担当、としては一流なのだが、店に出すと世話話ばかりをしてあまり使い物にならない、と言うのが私とルーサーの中でも結論で、最初は店に出てもらう為に雇ったのだけれど、それがうまくいかず、その時に交渉役としてやらせてみたら、ピッタリと出来る様になった、という経緯を持つ社員でもある。
「それじゃあ、気を付けて帰りなさいね。まだ雪はやまないでしょう?」
「はい!社長も、買い付け気を付けて!」
ルーサーが出ていく、葉野菜と根菜を受け取って、それを家の中に入れて、冷蔵庫にしまう野菜は冷蔵庫に、根菜類は日の当たらない場所において、それで終了だ。
次の暗殺まで約一か月、干し肉が完成し次第、移動を開始して、現地に入って様子を見る。
ついでの如くで貿易商としての仕事をする、品物をやり取りする中で、そう言った「日常」を暗殺の間に忍ばせておくことで、返って怪しまれないから、という理由だ。
ただそれだけの為に社員達を利用している、という事実に心傷まなくもないけれど、でもそれは仕方がない、私は私の目的の為に生きている、それを曲げるつもりはないのだから。




