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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介


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第二十二話 村を離れる

「銃の音……?」

 ゴランのおじいちゃんが軍隊の偉い人と話しに行くって言ってから少し経って、軍隊さんが良く使ってた銃の音が聞こえた。

 軍隊さんは残ってない、って言う事は、誰かがそれを使ったのは、きっと来た偉い人、だと思う、でも、どうして銃の音がしたんだろう?

 怖い、私の中で壊れた感情が、虫が這い上がってくるみたいに、背筋を上ってくる、このままじゃ、村の人達が皆殺される気がする、発砲音を聞いただけでそこまで考えるなんて、って思わなくもないけど、もしかしたら、ゴランのおじいちゃんが軍隊さんの所の子達を殺したのがばれて、軍隊の偉い人に撃たれたのかもしれない、そんな事を考えちゃう。

「……。」

 発砲音は一回だけ、今は村の広場の周りにテントが立ってて、音は村の広場の中央の方から聞こえてきた。

 出ていこうか、でも、ゴランのおじいちゃんが撃たれたんじゃなかったら、私は約束を破った、って言って村を追い出される事になる、そしたら、私は生きていけない。

「……。」

 耳を澄ませる、何かが聞こえないか、広場の中心にいるはずの軍隊さん達と、ゴランのおじいちゃん達、その声を聞こうとする。

「……まれぇ!鎮まれぇ!」

 鎮まれ、そう聞こえた、確かその言葉は、お父さんが荒神って言う、悪い神様を落ち着かせる時に言う言葉だ、って言ってた、山の神様に対抗して、村に災いをもたらすって言う荒神、その荒神を鎮める為に、鎮まりたまえ、って言ってたって、ゴランが言ってた。

 って言う事は、その荒神がいるのかな、でも、山の神様は私達を助けてくれなかった、その時点で、私は神様を信じられなくなってた、村の人達も、神様がいるはずの山から流れてくる川の水を、神事をしないで使ってた、だから、皆神様を信じてない、と思う。

 なら、軍隊の偉い人が荒神を鎮めようとしてるのか、でも、軍隊さんの所の子達は、そもそも神様を信じてないって言ってた、だから、それも違う。

 なら、何がどうなってて、誰が何のためにそれを言ってるんだろう。

「……。」

「……人は保護せよ!くり……す!村……は保護せよ!」

 むらびとはほごせよ、そう言ったと思う。

 保護って言うのがどういう意味なのか、それがわからない以上、軍隊の偉い人がどうしたいのか、がわからないけど、悪い言葉じゃない気がする、保護する、って言う言葉も、何処かで聞いた事がある様な……。

 ……。

 お母さんだ、ツァギールを保護してあげないと、そう言ってた、お父さんが反対してて、それでお話はお終いって言ってたけど、お母さんが、ツァギールも子供なんだから、保護してあげないと、って言ってたんだ。

 じゃあ、保護って言うのはどういう意味なんだろう?

「アステリアちゃん、出ておいで。」

「ゴランのおじいちゃん?」

「大丈夫、軍隊の人達が、爺達を守ってくれるからね。」

 少しの間耳を澄ませてると、ゴランのおじいちゃんがテントを開けて、私に出て来てって言ってる。

 守ってくれる、って事は、やっぱり悪い言葉じゃなかったんだ、なら、どうして発砲音がしたんだろう?

 拳銃の使い道、については知ってる、カタログにも書いてあったし、お父さん達にも、軍隊さんの子達にも聞いた事があった、拳銃、重火器は、人を撃つためにあるんだ、って。

 なら、撃たれたのは誰?撃ったのは誰?

 背筋が凍った様な気がして、怖いって言う感情に包まれながら、でもいう事を聞かないと追い出されちゃうかもしれないし……、と思って、テントを出る。

「君は?」

「えっと、あの。」

「君の名前は?」

 テントを出てすぐ、周りをぐるっと見まわすけど、誰かが撃たれた感じはしない、撃たれてたとしたら、もっと騒ぎになってると思う、だから、誰かが撃たれた訳じゃない。

 そんな事を考えてると、軍服に勲章を何個か付けた軍人さんが、私に声をかけてくる。

 しゃがれたって言うのかな、ゴランのおじいちゃん程じゃないけど、お年寄りの人の声をしてるその人は、小銃をもって、太陽に照らされて、なんだか威圧感がある。

「えっと、リリエル、アステリア、コーストです。」

「君がコーストか。……。君のお父さんは、死んでしまった様だね。……。そうさな、君に言っても仕方がないんだろうが、済まなかった。」

「え?」

 済まなかった、そう言って偉い人は私に頭を下げる、ごめんなさい、って言う言葉の一つが、済まなかったって言う言葉だって言う事は知ってた、だから、軍隊の偉い人が私に謝る理由が分からなかった。

 どうすればいいんだろう、どう答えればいいんだろう、私は、何を選択すれば良いんだろう。

「君達を保護、つまり守る事が、私達にとっての贖罪だろう。長老は村の再建をしたいと言っていたが、君はどうかな?この村に残って村人達と過ごすか、それとも私達と共に街に行って、基地で過ごすか、どうしたい?」

「えっと、あの。」

「アステリアちゃん、アステリアちゃんとアルビアちゃんは、軍に保護してもらいなさい。大人達と軍の人間で、何とか村を直したら、迎えに行くからね。」

「ゴランのおじいちゃん……。」

 選択肢を与えられてるみたいで、そうじゃないんだと思う、私とアリィは村では役に立たないから、軍の人に保護してもらいなさい、ゴランのおじいちゃんはそう言ってる、それが正解なんだと思う。

 でも、一度出て行ったら、戻ってこれなくなっちゃう気がする、気がするだけで、なんの証拠もない、なんの心配をしてるの?って言われたらそこまでなんだけど、村を一度出ちゃったら、二度と戻ってこれないかもしれない、ふとそう思った。

 村に爆弾が落とされた時、あの時にあのお姉さんが言ってた、私はリリエル・アステリア・コーストじゃなくて、Kっていう名前で呼ばれるようになる、って言う話、あれが本当なら、これから先に何かがある、そう思うのが当たり前だな気がする。

「遠慮はいらない、君達を保護する事が、コースト氏への弔いになるのであれば、我々はそれをしなければならないからね。」

「……。アリィは?」

「アルビアちゃんも一緒に行くんだ、村に残った子供は、アステリアちゃんとアルビアちゃんだけだからね。」

 アリィが一緒、って言うのは嬉しいし、ホッともするんだけど、今のアリィをお父さん達と離しちゃったら、余計に寝不足が酷くなっちゃうんじゃないかな、とも思う、ただ、私とアリィだけ、って言うのが、多分軍の人とゴランのおじいちゃん達の話し合いの結果なんだと思う、今は遠巻きに私見てる大人の人達は、邪魔な子供がいなくなるって言うのが良いんだろうな、って言う顔をしてる、アリィのお父さん達も、同じ様な顔をしてる。

「……。はい、行きます。」

「では、アルビア君とコースト君は我々が預かる、それでいいな?長老。この村には災害派遣の者を出す、再建した暁には、村にもう一度活気が出るまでは面倒を見よう、それでいいな?」

「わかっとりますわい。アステリアちゃんに何かあったら、今回の騒ぎじゃ済まん事を理解しておいて下されよ?」

「……。承知している、我々の尊命に掛けて、守り抜こう。」

「リリィ?パパ達とは離れ離れになるって……、でも、リリィが一緒に居てくれるのなら、良かった……。」

「アリィ……。」

 軍の人の使ってる軍用車に乗せられて、村の人達に嫌な目で見られながら、私達は村を出る、村に残した物はない、残されたものもない、だから、私達だけが軍用車に乗って、村を出る。

 ゴランとお父さん達の物を何か持ち出したいと思ったけど、それを許してくれる空気でもなければ、そもそもお父さん達の持ち物が瓦礫の中から出てきたわけでもない、だから、これで行くしかないんだ。


「……。」

 星を眺めながら、軍用車に揺られて街に出た頃を思い出す。

 あの時、長老と軍幹部が話し合いをしていた結果、と言うのは、軍がバベルを壊されたという結果を隠蔽して、そして無かった事にする為に、私達を人質にして、結果として村の再建までは災害派遣隊を出す、という結論に至ったのだろう。

 あの時、誰かが小銃で撃たれたのか?と考えていたけれど、あれは荒れていた村人達rを制する為の威嚇射撃、宙に向かって撃たれた一発だったのだろう。

 結果として、私は村に戻る事もなく、こうして暗殺者稼業をして、保護してくれたはずの軍関係者を暗殺してまわっている、アルビアは、確か村に戻ったはずだ、村が再建されたかどうか、については知らないままだったが、私が師匠に引き取られて少し経った頃に、アルビアを村に返す事を条件に、私は暗殺の鍛錬を受ける事になったのだから、その約束を反故にされていなければ、アルビアは無事に村に戻った、はずだ。

 はずだ、と言うのは、そのことに関してその後の話を聞いていない、というだけだ、軍関係者に、軍に離反する者への粛清の為の暗殺者として、師匠と軍幹部が契約をして、そして私は師匠の下へ、その代わりにアルビアを村に返して欲しい、何も言わずに、私が暗殺者に引き取られる事も知らせずに、表むきは私が死んだから、という理由を付けて、アルビアを村に戻す事、それが私が暗殺者になるにあたって、一つだけ出した条件だった。

 そして、その軍幹部は、師匠が殺した、私の様な身寄りのない子供を暗殺者へと仕立て上げている事、それを知られては生かしておけない、とその軍幹部を殺したのだ。

 階級がどうだったか、という話は聞いた事がなかったが、中尉か大尉か、その程度には軍の中で上に立っている人間が、私を引き取って、そして暗殺者に渡した、その事実を隠す為に、その中尉か大尉は殺された。

 村に残ってるであろう人間達には、私は死んだ事にされているだろう、暗殺稼業に身を置いて、などという情報は不要であって、そして私にとって弱点足り得る情報だ、だから師匠は、軍幹部を殺し、私という「リリエル・アステリア・コースト」が生きた痕跡を消した。

 軍の中でも、その人間しか師匠との取引を知らなかった、つまりその幹部の独断専行で暗殺者と取引をしていた訳だが、結局はその幹部は私が引き取られてすぐに殺されてしまった、表向きは軍に離反しようとして射殺された、という情報になっていた覚えがある、けれど、事実としては師匠が殺した、それを師匠本人から聞いているのだし、情報屋にも、その頃に死んだ幹部がいたか、と聞いたら、いたと答えられたのだから、間違いは無いだろう。

「……。」

 今日は標星が見えない、雲間に隠れて、連れ立ちの星だけがフラフラとしているようにも見える、まるで、標星を探して彷徨っている様な、どこか寂し気に漂っている様な、そんな風に見えなくもない。

 標星が見えない時、は旅人は動いてはいけない、そもそも夜に旅人は動く事を推奨されていない、どうしても動かなければならない時には、標星を頼りに動け、という話だった、だから、こういう標星が見えない日、と言うのは、旅人は何があっても動いてはいけない、それが旅をする者達の鉄則だ、と誰かが言っていた。

 標星が見えないと、私も少しだけ悲しくなる、連れ立ちの星が寂しそうに彷徨っている姿を見ると、少しだけ寂しくなってくる。

 それは、かつてあった関係値の話だ、今の関係値の話じゃない、今の関係値で、その感情になる相手はいない、私にそれはいらない、必要がない、弱点にしかならない、それをわかっているから、私は連れ立ちを作らない。

「……。」

 雪豆のコーヒーを一口すすって、ベランダから部屋に入って、一階のリビングに戻る。

 コーヒーを淹れたタンブラーを洗って、水出しをして寝る準備をする。

「……。」

 Hが言っていた事、友達という関係値、今では必要としていない、過去には必要だった、その関係値、少しだけ、懐かしく感じなくもない。

 ただ、それをいま得た所で、失うリスクが増えるだけだ、そう考えを纏めて、私は目を閉じた。

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