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聖獣達の鎮魂歌外伝~復讐者の物語~  作者: 悠介


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第二十話 アリィの変化

「雪、やんだね。」

「うん、そうだね、でも……。お家を立て直すって言うのは、難しいんだって。」

「そうなの?」

 冬を何とか越した、私達は、テントの中で過ごして、壊れちゃった村が雪の中に埋もれていくのを見ながら、冬を越した。

 真冬のあの時、ゴランのおじいちゃんからした血の匂いは、結局軍隊さんの子達のだった、って言う話だけは聞いた、噂って言うか、アリィのお父さんが、アリィのお母さんに、「俺達は人を殺した」って言う話をしてた、って言う事をアリィが教えてくれた、それに、軍隊さんの所の子達がどうしてるのか、って言うのを誰も知らない訳がない、誰かが知っててもおかしくないはずなのに、誰もその事を言わない、って言う時点で、あの血の匂いはそう言う事なんだろう、ってなんとなく理解した。

 誰もそうとは言ってない、誰もその事を話題にもしない、まるで、村の残った人達皆で、秘密の事をしてるみたいだ、私とアリィは子供だから、教えられてないだけなのかもしれない、私達以外の大人はみんな、知ってる事なのかも知れない、でも、あの時ゴランのおじいちゃんから言われた、「知ってしまったらこの村を追い出さないといけない」って言う言葉が、私に質問をするなって言う、つっかえになってる。

「……。ゴランはさ、リリィの事、本当に好きだったんだろうね……。」

「うん。」

「でも、ゴランはツァギールに……。」

「うん。」

 秘密基地、って言っても、大人の人達は忙しそうにしてるから、其れの邪魔にならない様に、ってアリィと一緒に秘密基地に来たのは良いんだけど、アリィは爆弾を落とされてからずっと、笑わなくなった。

 私もそうだけど、どんな時でも笑ってるいい子だ、って言われてたアリィから笑顔が無くなってしまった事、それはとってもびっくりだし、悲しい事なんだと思う。

「……。あたし、ツァギールが憎いよ。ゴランが生きてたら、あたし達とずっと一緒で……、リリィは、ゴランと結婚をして……。」

「……。そうだね。」

 アリィは、いつも同じ事を言ってる、ゴランが生きてたら、私と結婚をして、その結婚式でアリィがブーケトスを受け取って、って言う事をずっと願ってた、だから、ずっとそれを言ってる、この何か月か、ずっとそればっかり言ってる。

 だから、じゃないのかもしれないけど、大人の人達は、アリィを嫌がってる、子供だからって言う理由で、何時までも夢を見て、って言うのが鬱陶しい、って言ってた、それは、わからなくもない。

 私だって悲しい、私だって泣きたい、でも、ゴランが死んじゃった事は変えられない、私達がめそめそしたって、お父さんもお母さんも、ゴランだって生き返るわけじゃない。

 アリィはお父さんもお母さんも生きてる、なのに……。

 なのに、お父さんとお母さんが死んじゃった私よりも悲しそうにしてる理由、がわからなかった。

 でも、それを言ったらアリィを傷つける事はわかってた、アリィだって、仲が良かった友達も死んじゃってる、私しか子供は残ってない、アリィと私以外、皆大人だから、って言って、今は村の建物のがれきを片付けてる、復興、って言って、村を元通りにするんだ、って言って、みんな頑張ってる。

 私とアリィは、まだ七歳だから、何かできる訳でもない、何が出来るの?って言われたら、わからないから、せめて邪魔にならない様に、って思って、秘密基地にいる、位だ。

「……。」

「リリィ、どうしたの……?」

「え?ううん、何でもないよ。」

「そっか……。」

 アリィは寝れてないのか、目の下に大きなくまが出来てる、私はまだ夜になったら寝ちゃう方だけど、アリィは眠れてないのか、お昼にこっくりこっくりとしてる事が多い。

 それだけの事が起こった、それはわかってる、私達にとって、村が爆撃にあった事、ゴランが死んじゃった事、村の殆どの人が死んじゃった事、それは大きな痛みになる、ってゴランのおじいちゃんが言ってた、心の痛みだ、って、心の傷だ、って。

 だから、軍隊は報いを受けないといけない?って言ってて、報いって何だろうって思ったんだけど、悪い言葉な気がして、それを聞けないでいた。

 報いを受けるべきだ、って言う話は、放送でもやってた、お父さんが聞いてたラジオで、ベイル?って言う国は報いを受けるべきだ、って言うお話があって、お父さんに報いって?って聞いたら、まだ私には早い言葉だよ、って言われたのを覚えてる。

 ただ、怖い言葉なのはわかる、お父さんが教えてくれなかった時点で、子供な私達が使っちゃいけない言葉だろうな、って。

 それだけはわかってた、だから、報いを受ける、の意味を知るのはきっと、もう少し大人になったら、なんだと思う。

「アリィ、少し眠ったら?」

「うん……。」

 アリィに毛布を掛けて、普段眠れてない分寝かしてあげようと思って、少し秘密基地から外に出る。

 雪はやんだけど、まだまだ雪解けには早い、っていう時期、大人の人達は、今頃村の瓦礫をどかして、建材を用意しようとしてると思う。

 村の再建だ、って言ってたけど、皆で他の村に行った方が良いんじゃないかな、とも思わなくもない、大切な村だけど、でも、壊れちゃったものはしょうがないと思う、って。


「……。」

 Hの元を離れて、アジトに戻りがてら、街のマーケットに立ち寄る。

 食材が無くなりそうなのと、そろそろ干し肉を作る為に牛肉を調達しておきたい、と考えたから、牛肉を干し肉に加工するのにだって時間はかかるわけで、そうなってくると、逆算してこの時期に仕入れておかないといけない、と思ってマーケットに入る。

「あ、コーストちゃん!今日は何が入り用だい?」

「牛肉を幾分かと、そうね、鶏肉も頂こうかしら。野菜は私の店で仕入れているし、それは構わないわ。」

「あいよー。」

 ダミーカンパニーでは、主だって取引をしているのは野菜類、その中でも、雪国でも育つ葉野菜の類をよく取引している、ベイルから入ってくる珍しい野菜を仕入れる事もあるけれど、基本的には葉野菜が主だった取引の物品だ。

 だから、ではないけれど、マーケットで買うよりは自分の会社の品の方が安心出来る、そのうち肉類も取り扱おうと思っているけれど、それをマーケットと調整して、どの様に差別化を図るか、について、現状マーケットの店主とカンパニーの社員達が、協議をしている所だったはずだ。

 要するに、場を荒らすなという話なのだが、このマーケットが私の会社と競合しない理由、については、取り扱っている地域が違うから、という理由だ。

 それが肉類になったら、また問題が起きるかもしれない、それに、肉類は繊細な扱いをしなければならない、業務用の冷蔵庫だったり、冷凍庫だったり、そう言った機械も仕入れなければならない、ベンに関しては足りているけれど、怪しまれない程度の動かし方をしなければ、何処から来た金だ?という疑問を持たれてしまったら、そこで疑心が生まれる、それは駄目だ。

 私が何処で資金を調達したか、現在はカンパニーで稼いだ金と言っても問題はないけれど、急な事業の拡大は疑心の元になる、だから、あくまでも「カンパニーで稼いだベン」という体裁を保たないといけない。

「五千ベンになるよ!」

「はい、ありがとう。」

「毎度あり!」

 肉を買って、そこから一時間半かかるアジトに戻る、吹雪は少しだけやんでいて、歩きやすいと言えば歩きやすい、ばれやすいと言われればばれやすい。

 大量の肉を買って帰る人間、と言うのも珍しがられる、アルマノでは魚こそ普段から食べられているが、肉に関しては地方にいる人間が食べるもの、と言う印象が強いだろう、都市部の人間は、肉より魚を好む事が多い、とマーケットの店主がぼやいていたのを覚えている、だからではないけれど、肉を買って帰る姿、と言うのを印象付けられても困る。

 私の村では肉や魚を食べる文化自体が珍しかった、肉は一週間に一度のご馳走で、魚に関しては祝い事の際の料理、という印象だ、基本的には葉野菜と根菜、それらが主流だった、私の実家は祭事を扱っている神官の家系、という事で特別に普段から肉を得ていたが、基本的には、食べたとしても鶏卵だった。

 逆に、鶏卵は都市部ではあまり扱われない食材で、怪我や病気の見舞いの際に、栄養価の高い鶏卵を送る、という文化があるらしい、というのは聞いていた、だから、カンパニーの社員が病気になった際には、鶏卵を送るのが基本だった。

「……。」

 アジトに向かう中、気配を殺して、出来る限り人間として認識されない様に、景色の一部だと思われて「そこに人間がいる」という事を気取られない様にしながら、アジトに戻る。

 Hの言っていた、お友達感覚というやつ、について、少しだけ考える。

 私には、友人はいらない、私にとって友人とは過去のものであり、子供だからこそいる間柄であり、今となっては必要としない間柄だ。

 かつてゴランやアリィとそうだった様に、かつてシードルとそうだった様に、子供にとっては必要な物なのだろう、子供にとって、友とは必要な事柄なのだろう。

 ただ、私にとっては、いらない、必要がない間柄だ、友達など、いるだけで弱点になり得る、情報が何処かから漏れだしたら、弱点として友を使われて、そして私はそれを殺すだけだ、そんな間柄に、必要性を感じない。

 弱点にしかなり得ない関係値というのは、シードルを殺した時に学んだ、師匠が、私とシードルが仲が良かった事を知っていて、そして敵対する組織同士の人間だという事を利用して、私にシードルを殺させた、そこから出てきた綻びを利用して、師匠は敵対組織を壊滅させた、そう言う関係値でしかない、そういう関係値としてしか、友人という存在を見る事が出来ない、それが私の現在だ。

 カンパニーの社員達も、深入りしないと言うのはそう言う事だ、深入りしてしまったら、それは無辜の一般人である彼らを殺す事になりかねない、だから、必要以上に深入りしない、必要以上に他人に関わらない、それが私のスタンスだった。

「ふー……。」

 ある程度経験を積んでいて、それを理解しているはずのHが、それを言った意味を考えるけれど、それの答えを私は知り得ない。

 友を必要としていない私にとって、友達感覚というのは、心底理解が出来ない感情だ。

「……。」

 Hと関わるのは、少し警戒した方が良いのかもしれない。

 そんな事を考えながら、私はアジトに足を戻す。

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