第四章 老害の密談
浅慮しか浮かばない軽い脳みそが詰まった頭を突き合わせ、ふたりの老害がヒソヒソと密談している。
必殺技「焼き芋バラマキ」を身につけたハツオと、必殺技「ぶちょうにいっとく」を振りかざすヒロユキだ。ヒロユキの台詞が平仮名なのは、70歳も近い年の割に幼児性を発揮するからである。
ふつうに考えておかしいでしょ?
ちなみにハツオの「焼き芋バラマキ」は、特売で手に入れたカチコチの焼き芋を恩着せがましく女性社員に振舞うのだ。
またまた、ヒロユキの「ぶちょうにいっとく」は、懇意である総務部長の権力を笠に着て、人を脅すのである。
ヒロユキ「なんだG材倉庫はやけに仕事が多いぞ、めんどくさいではないか」
ハツオ「そうだ、リーダーは仕事を引き受け過ぎている」
ヒロユキ「ぶははははは。いまに見ていろよ。もうリーダーなんて名乗れないようにしてくれるわ。ふむ、都合よく魔女がここへ異動で来たことだしな」
ハツオ「おうおう、魔女はめんこいのう……」
ヒロユキ「……」
ふがふがと大きな鼻の穴を膨らませるヒロユキと、鼻の下を伸ばすハツオは気持ち悪いことこの上ない。
ハツオ「エヘンエヘン! で、どうするつもりだ?」
ヒロユキ「あの魔女は前にこっぴどく痛めつけてやったからな、絶対に俺には逆らえない。いい機会だ、魔女を利用してG材倉庫のリーダーを追い出してやるか!?」
ハツオ「それは面白い。あいつには『ばかぁ!』が通じなくなってきたからな」
だからそれは【精神的な攻撃・侮辱・暴言・名誉棄損】パワハラだというのに。
お前、あと一回の『ばかぁ』でレッドカードだぞ? そんなイエローカード老害は崖っぷちにいてもどこ吹く風だ、羨ましいほどの図太さである。
ハツオ「うへへへい! うまく行けばG材倉庫は我らの思い通りだ。この機に乗じて仕事を減らしてやるわ。そして営業部の宇宙人、ゴンダイに目にもの見せてくれる」
ヒロユキ「待て待て焦るな。まだ魔女への躾が足りない、こうなれば完全に恐怖で支配してやる。ぶはははははは。この倉庫は我らの城となるのだ」
ハツオ「ええ、でもでも魔女にはお手柔らかにのぅ」
ヒロユキ「……キモ」
あのなぁヒロユキ。「てへぺろ」とかやってたお前もじゅうぶんキモかったぞ。
G材倉庫を手に入れて、いったい何の得があるのか……。
誰も知らない、本人達すらわかっていない。
そしてG材倉庫は混沌と化す。
ヒロユキとハツオはG材倉庫のリーダーを追い出そうと、後先を考えずに策謀したのだ。
それこそ『ばかぁ』だよね。
なぁ老害ども、わかってるのか?