第二章 パワハラ老人の嘲笑
その老人の名はハツオ。
「パワハラ老人」と「サボリ魔老人」彼は二つの異名を持つ。得意技は「天気予報」で、インターネットの天気図を見ては自前の天気予報を誰彼となく捕まえては喋りまくる。
そう、この老獪極まりないハツオは、いつも時間を持て余していた。
なにか面白いことはないかと始終業務中にネットサーフィンを繰り返していた。
そんなサボり魔老人ハツオは昼休憩に本社で弁当をかっ食らう。その時ハツオの地獄耳にとびっきりの情報が飛び込んできたのだ。
(うほほう、なるほど。これは使える……。使えるぞぉ。これで魔女は会社を辞めなくて済みそうだ。くふふふぅ、えへへへへぇ)
白髪を揺らし皴に埋もれた垂れ目を細めたハツオはほくそ笑んだ。
そしてG材倉庫の運命の歯車を狂わせた「二〇二四年十一月八日」。
ハツオは自分がとった休みにもかかわらず、だれも頼んでいないのにのこのこ会社へとやってきた。
G材倉庫事務所、自分のデスクチェアへ老いてガタガタの体を落ち着ける。息を整え垂れ目を光らせてベストタイミングを狙った。
「G材倉庫リーダー。お前の後任は決まった、ここからとっとと出ていけぇ!うへへへぇい!」
なんだ「うへへへぇい!」ってのは。
てか、お前はパリピか、いい加減にしろ。
ハツオは決まった!と思っただろう。儂、超かっこいいと感慨にふけっただろう。顔のしわを震わせて得意げに、そして楽し気に笑った。
もう寿命まで踊ってろよ。
――ハツオの哄笑は、天気予報よりも的確に、嵐の到来を告げていた。
そう、G材倉庫の地獄の始まりだった…。
ハツオという存在は、現場の秩序や誠意を軽んじる“享楽思考の象徴”として描きました。
いい加減な仕事で周囲に迷惑をかけても反省はなく、ミスすらも「しょうがない」で済ませてしまう。
そのくせにしゃべりだけは達者でくだらない話題で一日を終える。
そんな彼を“害悪”と表現せずして、何と言えばいいのでしょう。
この物語における彼の存在は単なる敵役ではなく、日々の現場で実際に起こりうる“疲弊の原因”そのものなのです。