第十四章 裁定!神官長ウメーダ
「さてさてさて、いらっしゃいGさん」
神官オバラのお出迎え、もう驚かないもんね。
何か『Gさん』が『爺さん』に聞こえて釈然としないけど。G材倉庫リーダーは再び神殿へと呼ばれてやって来た。
今日は裁定が下されるかもしれない日。
ハラスメント行為を告発するためには、証拠や第三者の証言がなければならない。ハラスメント行為を受けているとき、事務所には女神様が一緒にいらしたのよ。
G材倉庫リーダーは女神様に証言をお願いした。これね、迷惑かけちゃう場合があるんだ。でも女神様は証言してくれると言ってくださった。
もう、ホントに女神様だから女神様だよね。……ありがたくてありがたくて(泣)
「神官長ウメーダ、裁定の場へ……」
おお、心なしか神官オバラの口調が重々しい。
すると大聖堂に鎮座する神像の足元が、いきなりぱかりと開いた。ぽっかりと空いた穴からじわじわと見えて来る白頭巾。途端にふしゅーっと噴出した冷気が大聖堂を満たしてゆく。え? なにこれなんの演出?
ちょうど一分三十秒くらいかかって神官長ウーメダが神殿の床下からせり上がってきた。
登場の仕方はアレだけど、黄金色に光っている突かれるとトゲトゲで痛そうな杖を片手に、豪奢な神官衣を纏うその姿はまさに正義の神に仕える神官長だ。
色黒でがっちりしていてちょいと天パ気味。でも貫禄はじゅうぶん、噂によると神官長の導火線はかなり短いらしい。舐めてかかるとぶっ飛ばされる。
はい、誠実が一番です。あなたの身を護る行動です。
神官長ウメーダは、懐から運動会で使うリレーのバトンよりちょいと太い書状を取り出した。それをばさっ!と振って開くのではなく、くるくる回してちょっとづつ開いていく。
「G材倉庫リーダーからの訴え、神官オバラから話は聞きました。この神殿は私を含めて三人しかおらぬ故、精査に時間が掛かった。貴殿を疑う訳ではありませんが、公平公正の為第三者の証言が必要になる」
「はい承知しています。ええと、女神様、よろしくお願いします!」
G材倉庫リーダーがそう呼びかけると。
何もない空間に、まばゆい純白の光が現れ、そして弾けた。
とんっ! 光の余波が収まるとふわりと髪を揺らした女神様が神殿の床を軽やかに踏んだ。
「すーぱーゆるふわかみわざおしごとけいめがみ、しょうかんにこたえてただいまさんじょうです」(棒)
女神様のバックに、ぽん!ぽん!ぽん!と軽快な破裂音が響いたあと、ふわりふわりときらめくたくさんの羽根が舞い降りる。
なんか決めポーズを取ってる女神様が、ほんのりもじもじしている。
そのもじもじ女神様が、足元に散らばっている羽根の中に……なぜかひとつ、スーパーのレシートが混じっているのを見つけた。
「あ、もう! このスーパーどこ? わ、私のじゃないからっ!」
あわあわしている女神様。
今度は天井辺りから声が響いてくる。
「召喚コード:YURUFUWA-001。女神、神殿に到着しました」
「だ、だからそういうの、いらないって言ってるでしょ!」
耳まで赤くした女神様が、両手を握ってぶんぶん振っている。
その場にいる全員が、なんかほわんと癒された。体力ゲージが全回復するあれね、あの感じ。ケアルガとかベホマズンとか?
「うおほん。それでは、証人も招致した、始めようか」
神官長ウメーダは、厳めしい咳払いでほんわかした雰囲気を引き締める。
「ゆるふわかみわざけい……ゴニョゴニョ女神に聞く、清らかな御心のまま嘘偽りなく答えよ。G材倉庫リーダーの訴えによれば、恫喝、脅しなど数々のハラスメント行為が行われていた際、現場にいらしたのは確かか?」
「はい。私の目の前です。日常的で、とても見ていられませんでした」
「ほほう」
すらすらすいすいと、何やら巻物に書き付ける。
うんうんと頷いた神官長ウーメダは、女神様へと顔を向けた。
「その時、あなたはなんと言ったのか?」
「『ちょっと、落ち着いてください!』……です」
一瞬の『間』があった、女神様以外が一瞬だけ金縛りにあった気がした。
うん、気のせい気のせい。
「女神様の証言、しかと記録しました。訴えには正当性があり、この件ハラスメントと認定いたします」
なんかもう女神様にみんな持っていかれた感はあるが、なんとかハラスメント認定をしてもらえたのである。




