プロローグ
その会社は広い広い土地に立っている、古い古ーい巨大な工場だ。
最近、本社ビルだけはやけに立派に建て替えられたが。
本社勤務の社員を羨む現場社員の呪いがぐーるぐると渦巻いているのだ。
無理もない……。
通路はぼこぼこ、錆びて穴が開いた配管から吹き出る蒸気、夏場の熱中症は当たり前、現場の佇まいはどよんとした廃工場のようである。
そんな大工場の一角に、現場と一番近しい関係にある部署がある。
「G材倉庫」その部署は、そう呼ばれていた。
G材倉庫は常に戦っていた、まさに戦場と呼ぶにふさわしい部署だ。
日々流れ込む多くの案件。
納期を無視した現場からの材料要求、あまりの無茶ぶりに困り果てている仕入先との納期調整という名目のお願い。電話対応で声は枯れ、鼻血が出るほど頭を下げてお願いしなければならない。
それらの難しい案件を捌くためにG材倉庫の人間は常に動いていた。
現場の為に己の仕事を全うすること、それがG材倉庫の誇りだった。
だが、ある日を境にG材倉庫の努力と秩序は崩壊したのだ。
☆★☆
闇から流れ出るしわがれた声が、G材倉庫の隅々へと染み渡るように響いている。
死を纏う瘴気をはらみ、ゆっくりとゆっくりと。
大切な材料を侵し、測定器具を狂わせ、常備品の数が伝票と合わなくなる。ん?あれれ?
「魔女を、早く魔女マツダを何とかしてやらないと会社を辞めてしまうぞぉ……おお」
それはまるで呪詛のように聖域を侵し流れ続ける。
恐怖の舞台です。
2024年11月から2025年3月中旬まで、まさに地獄を味わいました。
これでもかと痛めつけられ、まるでゴミのように扱われ――人としての尊厳すら踏みにじられた日々。
それでも、老害たちの思い通りにさせるわけにはいきませんでした。
正直、生きて今日を迎えられたのは劇中に登場する「現場社員」や「現場課長」そして「女神様」「菩薩様」の存在があったからです。
彼らのような温かい人たちが、確かに現実にもいたのです。