今日の麦生は何人目?お代わり
前回の登場人物。
・枝 豆子
・冷 奴子
・串 盛子
・八木 餃子
・高 玉男
・博多 麺子
俺の名は、樽酒 麦生。
今日は終電を逃してしまった寒空の下。
タクシーでは福沢?渋沢?が飛ぶだろう。
それならばいっそ新しい出会いを求めたい。
そうして俺は未知の扉を開く。
「はじめまして、お店は初めてか?」
「あぁ、今夜はよろしく」
彼女は角 照子。
ポニーテールが似合う女バーテンダー。
シェイクする度に揺れる尻尾が魅力だ。
「問おう。わたしがこの店のマスターか?」
俺は分からない。なぜ客に問うのかを尋ねる。
すると思わぬ答え。
「そう切り出すとカッコイイでしょ」
「なぜ自分に疑問形?」
「そういう決まり文句なの」
それならそれでもいい。
俺が口説くには充分な理由だ。
「君がマスターだ。でも俺は振らないでくれ」
「あら?シェイクはお嫌い?」
俺は揺すられると気が抜ける。
すなわち、魅力は半分。捨てられる男さ。
シュワ~~~~~
激しさを増す上下運動。
8の字を描く軌跡は、新たな奇跡を呼ぶ。
さぁ、どんどん行こう。
今夜はオールナイトだ。
「こんばんは、指名ありがとう!」
「あぁ、よろしく」
次の彼女は歩手 沙良。
さっぱりした性格の女の子でどこか優しい。
俺は既に2人目だ。今夜もペースが早いな。
「私は潰されちゃうんだ」
「人気者はつらいな」
「最近は酸っぱくもあったりするんだよ」
林檎や蜜柑の香りがとても似合う女の子。
だけど俺はピリリとスパイスが好きだ。
2人目の俺はとてもプレミアムな俺だ。
「好みは人それぞれさ」
「麦生さん!貴方は太陽の鳥居ね!」
よせやい。そんなに褒められると照れるぜ。
麦と芋。薫る太陽の恵み。今、一つになる。
シュワ~~~~~
柔らかい彼女のボディにひんやりした指。
あぁ、人生とは素晴らしい。
そう思える一時だった。
時計の針は進み、丑の刻が半ば。
気分が良い俺は、3人目になった。
「沙良ちゃんじゃ物足りないでしょ?私はどう?」
「いいね。俺は好きだぜ」
売り込みに来た彼女は唐 揚美。
からっとした性格の彼女は国民的スターだ。
その太ももからは逃れられない。
「寒暖差がキツくってさ。最近つらいの」
他の店はいざ知らず、照子の店ではスパルタだ。
氷のような部屋から急に熱湯風呂へと放られる。
彼女のお笑いは、常に体を張っている。
「俺はサウナでも一向に構わないぜ」
「へぇ意外。もっと本格派かと思ったわ」
湯上がりの彼女が最も魅力的だろう。
冷めた彼女をサウナで温め直す。
シュワ~~~~~
ジューシーな彼女はとても情熱的。
今宵の主役は揚美。何度も彼女の重さを確かめる。
流石に彼女をお代わりは重すぎたか?
少し胃の辺りに張りがある。
「ねぇ、私とご休憩しない?いいでしょ?」
「お姉さんにはいつも助けられてるぜ」
よく知る子の妹で、彼女は枝 豆乃。
姉の豆子にはいつもお世話になっている。
深い意味は無いぞ?
「私、お姉ちゃんと違って皮がないから……」
「いいじゃないか。皮なんてなくても」
「ねぇ、お姉ちゃんとどっちが好き?」
彼女はむき出しのまま晒されている。
姉とは違い、ノーガードだ。
だからこそ開ける多くの扉がある。
「業務用だっていけちゃうぜ?」
「えー、ほんとかなぁ?」
彼女の道を切り開く。徳用サイズなら尚更。
そこには素敵な出会い、無限の可能性が待つ。
シュワ~~~~~
今宵の彼女はバターの香りと塩気が心地よい。
今日の新しい出会いに幸せを感じていた。
バターが重くて、休憩にならなかったな。
俺も、もう7人目。ペースダウンが必要だろう。
「おう、兄さん。久しぶりだな」
「へっ、今日は懐かしい顔に良く会うな」
彼は、高 檸檬。
俺とよくつるむ高 玉男の弟だ。
特に檸檬は、揚美とコンビを組む事が多い。
「久々に……やらないか?」
「ウホッ!いい男…」
兄とは違う、爽やかさが俺を誘う。
シュワ~~~~~
そしてやっぱり駆け込む男子トイレ。
どうしても咲くのかレインボー。
後で照子に謝らないとな。
チャンポンをしてはいつも訪れる後悔。
俺は9人目。既に始発は動き始めているだろう。
「ハロー、ナイスガイ!」
「あぁ、よろしくハニー」
彼女は、秘 旅行。
イタリア出身のバイリンガルな女の子。
パワフルな彼女はカロリーがお高めだ。
「ムギオ、モット、エンジョイ!」
「結構、限界なんだが……」
「レッツ!ベルトオープン!」
彼女は言う。限界を超えろと。
濃厚なチーズ。胸焼けがハンパない。
シュワ~~~~~
もうすぐ始業時刻。これはヤバい。
限界は超えるものじゃない。トマレ!
……いや、これホントマジヤバイ。
今日の麦生がまた1杯……