おにぎりはウマい
おにぎりは、うまい。
ただの米を丸めただけなのに、うまい。
海苔が巻いてあれば、さらにうまい。
塩がまぶしてあれば、だいたいうまい。
中に具が入っていたら、そうとううまい。
おにぎりは…とにかく、ウマイのだ。
炊いた米を食べやすい形に成形し、パクリと口に入れる。
口の中でほぐれる米粒が、咀嚼という至福の時間を与えてくれる。
米そのものの味もウマイが、米以外のものもウマイ。
米と具材が織りなす、摩訶不思議な融合が奇跡のウマさを生み出す。
一粒の米が集まって、おにぎりという物体を形成する事で…感動をもたらす。
一粒の米があったからこそ、おにぎりという物体が生まれ…満足という至福を味わえる。
減った腹を満たすのは、炊かれた米たちの…繊細かつ巧妙な合体活劇。
ギュウギュウにかたまっていては、損なわれるものがある。
適当に丸められていては、見出されないものがある。
おにぎりは、『おにぎり』として存在しなければ…そのウマさは半減してしまうのだ。
おにぎりとしてこの世に存在しているものは、すべて…ウマい。
おにぎりとしてこの世界で食されているものは、すべて…貴い。
おにぎり、ああ…おにぎり。
おにぎり…、ああ、おにぎり。
腹が減ったら、まずおにぎり。
手軽に食べるなら、やっぱりおにぎり。
塩むすびに、鮭、昆布。
ツナマヨネーズに、たらこ、焼き肉。
梅に、アサリのしぐれ、明太子。
野沢菜に、煮卵、おかか。
出汁巻き卵に、たくわん、いくら。
唐揚げに、肉みそ、エビマヨ。
角煮に、わかめに、炊き込み。
握れば握るほどに美味い、米の塊。
おにぎり…、おにぎりは、本当に…ウマい。
……この仕事が終わったら、絶対におにぎり、食べるんだ。
決意を胸に、仕事に取り組む私であったが。
買い置きの米は、すっからかん。
近所のコンビニのおにぎりの棚も、すっからかん。
すっからかんの胃袋を抱えたまま、菓子パンとカップ麺、ホットスナックにポテトチップス、ジャンボプリンと3色団子を買い込んだという、悲しいお話……。