13:果たし状と、ネックレスの新機能
「ステラちゃん、どうしてお姉ちゃんとお揃いの髪飾りを着けてくれないの……? 色が嫌だった?デザイン?」
「お姉ちゃんとお揃いというのが嫌」
「せっかく似合うと思って選んでやったのに、どうして着けないんだ」
「選んでくれなんて言ってない。そもそも、髪飾りを着けるとも言ってないのに勝手に選んで運ばせるな」
アマネとレナードの訴えをステラが尽く拒否してやれば、二人が一瞬話を止め……、
「明日はピンクのリボンにするね。私は水色のリボンにするから、一緒に着けようね」
「明日は花のデザインにするから絶対に着けろよ」
と、まったく懲りる様子も無く、明日もまた髪飾りを贈ってくることを宣言してきた。
どちらの希望にも今日まで一度として応えた事はないのに、どうして自信たっぷりに宣言出来るのだろうか。
堂々とした二人の態度にステラは小さく唸りつつ「明日以降も絶対に拒否してやる」と心に誓った。反骨精神がふつふつと湧き上がってしまう。こうなれば根競べだ。
そんなやりとりの中、サイラスが「それで」と割って入って場を改めてきた。
「二人はステラを探してたみたいだけど、用事でもあったの?」
「あぁ、こいつがアマネに果たし状を出したらしくて、どういう事かと話を聞こうと思ったんだ」
「果たし状? ステラ、果たし状って、そんなの出してたの?」
サイラスに問われ、ステラは頷いて返した。
次いでアマネに視線をやるのは、彼女に『果たし状を出して見せろ』という意味だ。察したアマネがポケットから一通の封筒を取り出す。
そこに書かれているのは『果たし状』の文字。
それと……、
『お姉ちゃんへ♡』
という文字。
「いったいどういう情緒でこの果たし状を書いたのか確認しておこうと思って探してたんだ」
「情緒も何も、文字でさえ『お姉ちゃん』に変えられただけだ。しかも抗って書き直し続けてたらハートマークまで強制で書かされるようになって……、うぅぅ」
「事情は分かったから唸るな。それで、そもそもなんで果たし状なんて書いたんだ?」
「このまま負けっぱなしではいられない……。それに、逃がせとは言わないけど、せめてこの首輪を外させたいから。どうしてもっていうなら首輪はそのままでも、この忌々しい『お姉ちゃん』呼びだけはどうにかさせたい」
ステラが忌々し気に首輪をカチャカチャと揺らしながら訴えれば、気持ちは分かると言いたいのかレナードが肩を竦めた。
ちなみにアマネはと言えば「可愛い妹からのお手紙」と嬉しそうにし、サイラスはそんなアマネと果たし状を交互に見て……、「手紙、良かったね」とアマネの言い分を肯定しだした。どうにもサイラスはアマネに甘く、それがまた彼女の暴走に拍車を掛けている。
「可愛いステラちゃん、もちろんお姉ちゃんは応じるわ。妹からの遊びのお誘いを断るわけがないもの」
「遊びじゃない、果たし状だ。果たし状! 私が勝ったらこの首輪を外してもらうからな!」
「えぇ、良いわよ。もしお姉ちゃんが勝ったら、一緒におやつを食べようね。お姉ちゃんがあーんしてあげるから、ステラちゃんもお姉ちゃんに食べさせてね」
「よしわかっ……、えっ、それは……、いや、よし、分かった。私が勝てば良いんだ!」
アマネの出す条件に一瞬躊躇ったものの、ステラは気合いを新たに「行くぞ」とアマネを誘い出した。
食べさせ合うなど想像するだけで寒気がするが、要は勝てば良いのだ。勝てば首輪を外させられるし、もちろんおやつを一緒に食べる理由も、ましてや食べさせ合う理由も無い。
そう自分に言い聞かせ、指定した中庭へと向かっていった。
二人が去っていった部屋。残されたのはサイラスとレナード。
執務室の窓からは中庭が見下ろせ、しばらくサイラスが覗いているとステラとアマネが現れた。
闘志を燃やしているのか意気揚々と歩くステラと、そんな彼女に付き纏いながら嬉しそうに話しかけるアマネ。背格好が同じで長さこそ違うが共に黒髪の二人は、遠目に見ると姉妹どころか双子のようではないか。
年若い二人の少女が美しく整えられた中庭の開けた場所に出る。……と、そこまでならば絵になる光景である。シートでも引いて楽しくお茶会でも開きそうな長閑さだ。誰も一騎打ちとは思うまい。
そんな二人は数歩の距離を取ると、どちらとも動かなくなった。相手の出方を窺っているのだろう。
「レナード、見なくて良いの?」
「見なくても結果は分かる」
レナードが言い切るのとほぼ同時に、ビターン!!と大きな音が響き、ステラの悔しそうな唸り声が二階の執務室まで聞こえてきた。




