国債を償還する方法を考えてほしい(その2)
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は架空であり、実在のものとは関係ありません。
<その1からの続き>
さて、日本国債の残高の推移を示したのが図表14だ。
【図表14:国債残高の推移と日銀の保有比率】
出所:財務省、日本銀行
2000年3月末時点で387兆円であった国債残高は、2023年6月末時点で1,230兆円まで増加した(2000年3月末比では3.2倍)。国債残高は今後も順調に増え続ける見込みだ。
また、2000年3月末時点で20%弱であった日銀の保有比率は2023年6月末時点で50%弱まで増加した。
日本は財政赤字を補填するために国債を発行しているのだが、利回り(国債金利)が低すぎて投資家が買わない。だから、しかたなく日銀が新発国債のほとんどを引き受けることになる。
このまま国債金利が上がらなければ、日銀保有比率は上がり続けるだろう。
ここで、日本の国債利回りについても少し触れておこう。図表15は1986年12月末から2022年12月末における新発1年、5年、10年の国債利回りの推移を示したものだ。
【図表15:日本の新発国債利回りの推移】
出所:財務省
1990年代初めのバブル崩壊直前には国債利回りは7%近くまで上昇していた。
バブル崩壊後、国債利回りは急激に低下し、さらに短期金利のゼロ金利政策が採用されたことによって1990年代後半から1年国債利回りはほぼゼロになった。また、短期金利の低下に影響を受けて2000年代には10年国債利回りが2%を下回わった。
ゼロ金利政策は2006年に一旦解除されるものの、その後、2008年のリーマン・ショックによる市場悪化を避けるために金融緩和策を採用すると国債利回りは更に低下した。
2023年の日銀の金利政策の修正により少し上昇したものの、2023年10月末時点で1年国債利回りがマイナス、5年国債利回りは0.47%、10年国債利回りは0.95%と低い水準にある。
さて、国債残高は2000年末から2023年で3.2倍に増加している(図表14)にも関わらず、国債の利払費はほとんど変化していない(図表13)。むしろ、利払費は2000年の10兆円から2023年の8.5兆円に減少している。これは、2000年以降国債利回りが低下したのが原因だ。
3カ月ごとの国債平均残高と利払費(当初予算)から計算した国債の平均利回りは図表16のようになる。
【図表16:国債の平均利回り】
※上記は3カ月ごとの国債平均残高と利払費(当初予算)から計算したものであるため、正確な数値ではありません。
図表16を見ると2000年には2.5%であった国債利回りは、2023年には0.7%まで低下している。2000年から2023年の間に国債残高が3.2倍に増加したにも関わらず、国債利回りは0.28倍(=0.7%÷2.5%)になったことから利払いが減少しているのだ。
現在の日銀はマイナス金利政策とイールド・カーブ・コントロール(YCC)によって金利を極端に低い水準に押しとどめている。最近になって総裁が「10年国債利回りが1%を超えることも許容する」との発言をしたが、他の先進諸国の国債利回り(例えば、10年米国国債利回りは約5%)と比較すると依然として低い水準にある。
もし、国債の平均利回りが現在の2倍(1.4%)になれば年間利払費は17兆円(8.5兆円×2)になるから、歳出がさらに増える。
欧米の中央銀行はインフレを抑えるために利上げを行ったが、日本は追随せずに低金利政策を継続している。これは、国債金利を上げれば日本の財政が本格的に破綻してしまうからだ。
この点から、国債残高が増え続ける日本において、利上げ政策を採用する可能性は極めて低い。
長々と説明したが、日本の財政と国債については以下のことがいえる。
・日本の財政赤字は短期的に解消する可能性は極めて低い
・日本の国債残高はこれからも増え続け、減ることがない
・国債利回りが上昇すると財政が破綻するため、金利は上がらない
さて、仕事だ。国債を償還する方法を考えなければ……




