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こちら国家戦略特別室  作者: kkkkk
第1章 物流・運送業界の2024年問題を解決しろ!
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物流・運送業界の2024年問題を解決しろ!

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。


 僕の名前は志賀しが 隆太郎りゅうたろう。28歳独身だ。日本政府直轄の国家戦略特別室で課長補佐をしている。僕の仕事は国で発生した問題を解決することだ。


 僕の業務はやや特殊だ。具体的にどのような業務内容かを先に説明しておこう。


 まず、日本における問題の本質について説明しよう。

 日本では立法機関として国会が存在している。国会は日本に必要と考えられる法律等の整備を行い、国の進むべき方向を定めていく。

 国会は国会議員で構成されており、国会議員は国民から選挙によって選出される。選挙システムは民主主義国家の根幹であるから、このプロセスについてどうこう言うつもりはない。

 ただ、国民から選ばれた議員にもいろいろいる。


 例えば、代表的な国会議員を3つに分類してみよう。


 1.地盤を引き継いだ議員

 2.政党から誘われて、または募集に応募し、選挙で選ばれた議員

 3.自主的に立候補した議員


 まず、1の国会議員は二世議員、三世議員などと言われるケースだ。父親が政界から引退する際に親族に地盤を譲ったケース。このケースは後援会がしっかりしており、候補者がよほどの問題を起こさなければ国会議員として選出される。


 2は政党が勢力拡大のために候補者を立てて、当選した議員だ。専門家、有名人などが選ばれるケースがあるが、政党の支持者によって支えられている。


 3で当選するのは組織票を持っているか、知名度がある議員だ。会社の経営者、有名人などが多い。


 つまり、国会議員は票田となる団体・組織の意向を汲み取って行動するから、国家として好ましくない方向で法律が制定されることもありえる。そうするとどうなるか?


 混乱が起きるのだ。


 有象無象の労働者組合、業界団体、宗教団体、環境保護団体などを忖度して法律を制定する国会議員がやらかした問題を処理するのが僕の仕事だ。


 国家戦略特別室は室長の新居にい 幸子さちこ、僕と同じ課長補佐のあかね 幸子さちこの3人で動いている。女性2名、男性1名の少数精鋭の部隊だ。


 国家戦略特別室は「室」だから、課長補佐じゃなくて室長補佐じゃないか?というツッコミはやめてほしい。その辺りは他の部と合わせた役職になっている。


 新居室長は30代前半で独身だ。正確な年齢は知らない。そして、国家戦略特別室で唯一の男である僕は、新居室長の視線を常に感じながら業務を行っている。


 ちなみに、新居室長と茜の名前が被っているのだが、このことに新居室長は不満を持っている。

 新居室長は僕に「幸子室長」と呼んでほしいらしい。でも、僕としては茜と同じ名前だから呼びにくい。

 挙句の果てに、新居室長は茜に幸子から別の名前に改名するように圧力を掛ける、という暴挙に出た。

 立派なパワハラだ。が、茜は「室長が変えれば?」と何とも思っていない。


 茜の場合は、茜も幸子も下の名前のようなので紛らわしい。

 僕が友人に会っている時に茜からの電話に出たら、こういう事態が起こる。


「いま電話が掛かってきた茜って、彼女?」

「違うって……同僚だって」

「同僚なのに苗字じゃなくて下の名前で呼ぶって……何かあるんじゃないのー?」

「違う違う、茜が苗字」

「えぇ、男?」

「それも違う。茜は女。苗字が茜で、名前が幸子」

「へー、そんなことあるんだー」


 まぁ、この話はどっちでもいい。先に進めよう。



 僕たちは日本の問題を解決するためにスーパーコンピューターを利用している。スーパーコンピューターがいだ。

 処理速度はスーパーコンピューターけいの10,000倍速い。もちろん、スーパーコンピューター富岳よりも速い。


 僕たちがいま解決しようとしているのは「物流・運送業界の2024年問題」だ。

 知っている人もいると思うが、念のために概要を説明しておこう。


 まず、「物流・運送業界の2024年問題」とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称のことだ。具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離輸送ができなくなると懸念されている。


 年間の残業時間が960時間だから、月換算すれば80時間が上限となる。

 厚生労働省が公表した資料によれば、1カ月が22日とした場合、法定労働時間週40時間、1日の休憩時間1時間、1カ月の残業上限時間80時間からドライバー1人の1カ月の拘束時間は274時間となる。

 ※週5日で計算すると278時間だが、厚生労働省は4.3週間として計算しているようだ。


 2021年度のドライバー全体のうち拘束時間が274時間以下(275時間未満)であった割合は66.3%であることから、ドライバーの33.7%は2024年の労働時間の基準を超過している。つまり、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、全てのモノが運べない事態が生じる。

 これが「物流・運送業界の2024年問題」だ。


 ちなみに、これは宅配ドライバー不足によるラストワンマイルの問題とは別の問題だ。

 物流におけるラストワンマイルとは、最終拠点からエンドユーザーへの物流サービスのことをいい、こちらも不在時の再配達などの問題を抱えている。


 不足するドライバーは14万人と試算されており、政府は業務の効率化、船や電車での輸送の活用などを検討しているようだ。


 さて、説明はこれくらいにして……これから国家戦略特別室の会議が始まる。


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