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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

どうして評価してくれないの?

作者: 黒澤 白

 暗い世界の中にいた。

 辺り一面何もなくただどこまで行っても暗い世界だった。

 ここがどこなのかもわからない僕は取りあえず歩き出した。

 どれだけ歩いてもどこまで行っても出口らしきものはどこにもない。

 どこにもないと思った僕は辺りを見回したが何もなく目の前を向いたらさっきまでいなかった女の子がそこにいた。


 僕はその子に近づくとその子は凄くかわいい女の子だった。

 例えるなら最近流行りの異世界物語とかに出て来る感じのヒロインと言っても良いくらいのかわいい女の子だった。

 僕はその子にここがどこなのかを聞いたが女の子は何も答えない。

 聞こえないのかと思い、もう一度話し掛けると女の子はこっちを向く。

 だが僕は気味悪く感じた、女の子があまりにも生気がない目をしていたから。


「・・・・・・」


 女の子は僕を見てから口を開いて。


「どうして評価してくれないの?」


「え?」


 女の子の言っている事がわからないと思ったら気づいたら天井が目に入った。

 どうやら僕は夢を見ていたようだ。

 あの夢は何だったのか、僕はわからないまま起きるのだった。

 でも僕はまたその女の子に会う事になる。

 また同じようにあの暗い世界の中にいた。

 そして昨日の女の子がまたいた。

 女の子は僕の方を向いて口を開いた。


「私はヒロインとして魅力がないの?」


「え?」


「魅力がないから評価してくれないの?」


 そして僕はまた夢から覚める。

 一体何を言っているのかわからないまま僕はまた一日を過ごし眠りにつく。

 そしてまたあの暗い世界での夢を見るが昨日までと違い、今度は男の人がいた。

 男はこっちを見る。


「何故評価しない?」


 男も女の子と同じ事を言う。


「俺は、主人公としてつまらないか? お前達が好きなチート能力を持った俺ツエーな主人公なのにつまらないのか? だから評価しないのか?」


 僕はまた目を覚ます。

 そしてその日の夜も僕はまたあの暗い世界にいてまた違う人物と出会う。


「私は敵として魅力も何も感じないか? 小物とも思えないか? だから評価しないのか?」


 そこでまた目を覚ます。

 それからもしばらくあの暗い世界の夢を見て様々な人物達が現れて皆同じような事を言う。


「私は王女としてかわいさも凛々しさもないから評価しないのですか?」


「獣人の私はかわいくないから評価しないの?」


「エルフの私は魅力もないから評価されないのですか?」


「俺はライバルキャラとして印象に残らないから評価しないのか?」


 夢に出て来ては皆僕に評価について言ってくる。

 

「評価って何の事だよ」


 僕は疑問に思いながらも結局わからずに今日も眠りにつく。

 今日もまた暗い世界の夢を見る。

 僕の前には最初に会った女の子がいた。


「これだけ言ってるのに、どうして評価してくれないの?」


 女の子は同じ事を言ってくる。

 だから僕は言い返した。


「評価って一体何の事なんだ? 僕は何も知らないぞ」


 僕がそう言い返すと女の子は悲しそうな顔をして話し出した。


「私達は、創造主様によって生み出された、創造主様は私達の世界も生み出してくれた、私達は創造主様の生み出した世界で生きて来た、それがこの世界だった」


「え?」


 女の子はそう言うが、生み出した世界がこんな何もない暗い世界なのかと思った。


「この世界も元は国もあったし、村もあったし、森に海に山にダンジョンもあった、たくさんのものがあった綺麗な世界だった、でも、この世界は消えてしまった、創造主様がいなくなったから」


「え?」


「創造主様がこの世界の続きを書いてくれなくなったから、少しずつ世界のものが消えていって、最後には何もないどこまで行っても暗い世界になった」


 女の子の言う事に僕はどう返したら良いのかわからなかった。


「でもね、創造主様は一生懸命頑張ったんだよ、毎日話を投稿したり、二、三日遅れても頻繁に投稿していたんだよ、でもある日創造主様の心は折れてしまった、そしてこの世界はずっと続きが書かれないままこんな世界になった」


「あ、あの」


「私達は、創造主様は何も悪くないと思ってるの」


「え?」


「だってそうでしょ? 創造主様は私達を生み出してくれた、この世界を生み出してくれた、最初はちゃんと完結させる気はあったんだから、最後の展開まで考えてあったんだから、でもその前に終わってしまった、どうしてだかわかる?」


 女の子は僕に聞くが、僕は何もわからずに答えないでいると女の子が答えを言う。


「それはね、あなた達のせいよ」


「え?」


「創造主様の心が折れたのは、あなた達が登録やポイントも入れないでただ見てそのままにしたからよ」


 女の子は静かに言うが僕はその子の目を見て恐怖を感じた。

 だってその子の目は今まで生気のない目をしていたけど、今では憎悪も感じる。


「創造主様は苦しんだ、ずっと書き続けているのにポイントが増えていかない事に、何年も書いていないのに人気が出ている作品と違って休まずに書いたのに、読まれるだけでポイントが入らない事に、色々な方法を試した、この世界の話を書いている間にたくさんのちょっとした話も書いて投稿した、この世界のためにポイントを入れてくれるようにお願いもした、でもあなた達は見るだけで他には何もしなかった」


「いや、その」


「そして、気づいた時には創造主様はこの世界からいなくなっていた、そしてそれから何年も経ち今では、一人もこの世界を見てくれない、そんな日がもうずっと続いている、そしてこの世界はこうなった」


 僕は女の子の言葉に何も言えなくなっていた。

 そんな事言われたってどうしろって言うんだよ。

 そう言いたいけど、言ったらマズいと感じて言えなかった。


「ねえ」


 女の子は僕に首を傾げて言う。


「どうして、評価してくれないのおぉぉぉぉー!!!」


「ひっ!!」


 僕は悲鳴を上げた。

 女の子が大声を出したのもそうだがその瞬間に女の子の顔が溶けていき目玉が落ちて骨が剥き出しになったからだ。


「どうして!! どうして!! どうしてえぇぇぇー!!!」


「うわー!!」


 僕は恐怖でその場から全力で逃げた。

 後ろからさっきまでの女の子とは思えない恐ろしい声を上げながら追いかけて来るのがわかる。

 捕まったら終わると思い僕は走り続ける。


「何故評価してくれないんだ?」


 目の前に主人公だった男がいたが僕は構わずに走り抜けた。

 だってその男も同じだったから。


「お前達が、お前達が評価してくれないから、俺は、俺はあああぁぁぁー!!!」


 男も身体が溶けていて骨が剥き出しになっていて目玉が落ちていて、例えるならゾンビみたいだった。


「何故だ、何故評価しない!! 俺は他の人気作と同じタイプの主人公なんだぞおおぉー!!!」


 僕は恐怖で逃げる心臓の音がハッキリと聞こえる。

 

「私はラスボスなんだぞ!! なのに何故だああぁぁー!!!」


「異世界の話で王女が出れば新展開でしょ!! なのにどうしてえぇぇー!!!」


「獣人で奴隷の少女なのにどうしてえぇー!!!」


「エルフなんて定番のものを出してるのにいぃぃー!!!」


「ライバルキャラが出れば盛り上がるだろぉぉぉー!!!」


『どうしてえぇぇー!!!』


「はあ、はあ」


 出会った人達が皆同じゾンビのようになって叫んで僕を追いかけて来る。 


「どうして」


「どうして」


「どう、して」


「どうし、て」


「どう、し、て」


「ドウシテ」


「ドウ、シ、テ」


「ドウジデ」


「ドウジデェェ」


 行く先々で僕に問いかけて来るゾンビ達、おそらく元はこの世界にいた普通の人達だ。

 なのに今は見るも無残なゾンビの姿だ。


「ダレモ、ミデグレナイガラ、ワタジハ、ヒロインニナレナガッダ、ア゛ァ゛ー」 


「オレハ、ジュジンゴウ、ナ゛ノ゛ニ゛、ナゼ、ビョウ゛ガジナ゛イ゛ィ、オマ゛エ゛ダヂガ、ミナ゛イガラ゛、ジュジンゴウ゛ニ゛、ナ゛レ゛ナ゛ガッダ、ア゛ァ゛ー」


 さっきまで普通に喋っていたはずの人達がだんだん自我を失っていく感じに喋っている。


「オ゛ウ゛ジョ、ワ゛ダジハ、オ゛ウ゛ジョ」


「ジュウ゛ジン゛ダヨ゛、モブモブナ゛ンダヨ゛」


「エ゛ル゛ブ、ウ゛ヅグジイ、エ゛ル゛ブナ゛ノ゛ニ゛」


「オ゛レ゛バ、ジュジン゛ゴウ゛ノ゛ラ゛イ゛バル゛、ダゾ」


 僕はもう恐怖しか感じなかった。

 早く終わってくれ、夢なら早く覚めてくれ。


「え?」


 走っていると壁にぶつかった。


「嘘だろ!!」


 僕は無我夢中で叩くが後ろを向くとゾンビの群れが寄って来る。


「来るな、来るなー!!」


 僕の叫びなど意味なく僕はゾンビ達に掴まれていく。


「うわああああー!!!」


 僕はゾンビ達の中に埋もれていった。


「どうして評価してくれないの?」


「はっ!!」


 目を覚ますといつもの天井が見えていた。

 僕は夢から覚めたのだ。


「・・・・・・」


 その日、僕はパソコンでネット小説のサイトを開いた。

 ヒロインの子が言っていた創造主。

 あの夢の中でその人の名前と思われるものを言っていた人がいたから僕はその名前を入力して検索するとヒットした。


「あった、これだな」


 その中で連載をしていた小説が一作品だけしかなかったからすぐにあの夢に出て来た人達が言っていた世界がこの作品だとわかった。

 僕はその作品を読んだ。

 僕個人としては面白いと思った。

 その人の投稿履歴を見ると最初の内は毎日投稿していたし少し遅れても週に何回かは投稿をしていた。

 それから週一で投稿していたけど、それでも投稿をやめる事はなかった。

 でもある日から投稿が止まっていた。

 それからもう何年も執筆をしていないようだった。

 僕は小説情報も見てみた。

 あの子達が言ってた通り、そんなに登録されてなかったし評価もそんなにされていなかった。

 アクセス数を見てみると一人も読んでいない、グラフも見たら投稿が止まってからずっと誰にも読まれていないようだった。


『どうして評価してくれないの?』


 あの子の言葉が蘇る。

 確かに面白いと思えるのに何故評価されないのかと思った。

 小説サイトは誰でも自由に投稿できるし、書籍化したりそれがアニメ化したりした作品もあるしランキングに載っている作品もある。

 おそらく読者にとってはそっちの方が多く読まれるんだろう。

 だからこの人の作品のように面白くても書籍化もランキングにもないと読者の目に止まらずに埋もれてしまって読まれないのかもしれない。

 現に僕もこの人の作品を知らなかった。

 そう思っていたけどこの人の他の作品、短編を見てみると一つだけ読んだ事がある作品があった。


「この短編作品の作者だったのか、だから僕の夢に出て来たのか、この作者のどれかの作品を読んで何も評価しなかったから」


 僕はたまたま見つけたこの作者の短編を一作だけ読んだ事がある。

 でも良くも悪くもなかったから読んだだけでそのまま何もしなかった。


 思いが込められたものには魂が宿ると言う話を聞くが、この作者は自分の作品に対する強い思いがあったのかもしれない。

 それがこの作品のキャラ達に魂が宿りあの夢に出て来た。

 もしかしたら、あの子達は本当は驚かしたいんじゃなくて教えたかったのかもしれない。

 自分達の創造主が作った作品は面白いんだと、もっと評価されるべきだと。

 人気が出てほしいがためにあんなにいき過ぎてしまったのだと。


「・・・・・・」


 僕はあの子達が出て来た連載作品に評価をして登録もした。

 さらに面白かったと感想も書いた。


「僕がこんな事したところで何かが変わるわけでもないけど」


 もう何年も執筆されてないと思うけど、いつか再び執筆する気が起きた時に僕の書いた感想が作者のモチベーションを上げるのに役立ってくれれば良いなと思いながら僕は小説サイトをログアウトするのだった。


 その日以降、僕はあの悪夢を見なくなった。




















 気づけば私は何も暗い世界にいた。

 どこを見ても、どれだけ歩いても、暗い世界だった。

 進んで行くと目の前に女の子がいた。

 女の子は生気のない目をしていて不気味だった。

  

 女の子は私に向けて口を開いて言った。






「どうして評価してくれないの?」

 

 

読んでいただきありがとうございます。


こんな作品を書くほど、自分が思っている以上にポイントに飢えているのかもしれない。


と言うわけで皆さん。


私の作品達にポイントをください。

どうかお願いします。



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― 新着の感想 ―
[一言] 前エッセイかななんかのランキングでポイント貴族になろうっていうのを見つけて依頼自分はできる限り評価をつけようって思って色んな作品を見てきたんですけどいつの間にか評価全然付けてなくてこの作品を…
[一言] 評価しないのは評価に値しない作品だったからだと思うよ。 世間の流行や受けばかり気にして中身がない。二番煎じ。そんな文章にあえて評価を付けるなら”つまらない”だけなんじゃないかな? 「評価され…
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