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約束  作者: 榎 実
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8月6日①

布団に入ってからも、興奮した精神と疲れきった肉体のせいでずっと夢現だった。


まだ暗い内、ふと物音がしたので様子を見に廊下に出ると、外にイノリが立っていた。

「イノリ?」

「あ、ヒロ。ごめん起こしちゃった?」

「大丈夫だけど。どうしたの?」

「うん、帰るから」

「え、もう?」

水平線が僅かに明るくなってきたかどうかという空模様だ。

「うん、買い出しとか、やることいっぱいあるし、ちょっと海にも寄りたいから」

「海に?」

「まぁね」

何となく、声に微かな拒絶を感じたので、話題を変える。

「イノリは、このまま民宿で働くの?」

「多分ね~。おじいちゃんの漁の方も手伝いたいけど。海女とかやろうかな」

ふとイノリが人魚になって海の中で自由に泳ぐ姿を想像してしまった。

「…似合うな」

「え?」

「あ、いや、ごめん引き留めて。じゃ、また」

「うん、またね!」


(声に出てた…)

最後に見せたイノリの爽やかな笑顔に毒気を抜かれ、その後はヨシマサに叩き起こされるまで熟睡した。


朝、コウキは変わりない様子で挨拶してきたが、自分が上手く応えられたかは自信がない。


朝食を終え広間を整えていると、縁側から呼ぶ声がした。見るとミユキが立っていた。

「あ、お、おはよう」

「おはよ…コウキ、迎えに来た」

「あ、多分もう来ると思うよ」

「そう」

少し黙った後、ミユキがまっすぐこちらを見た。島に来てから初めて目が合う。ややあって、彼女が口を開いた。

「何か、あった?」

「え」

見透かされたようで心臓が跳ねる。ミユキは視線を外さない。

「えっと…?」

どぎまぎしていると

「あれ、ミユキどしたの?」

コウキが顔を出した。

「迎えに来た」

「えー、何急に過保護」

「お母さんが心配してる」

「…ん、わかった。すぐ行く」

コウキはそう言って本当に慌ただしく帰って行った。自分の気持ちの整理がまだできていなかったので、どこか安堵してしまった。

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