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約束  作者: 榎 実
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8月1日⑥

午後は本格的な荷解きやカメラの手入れ、庭の草むしりをしてあっという間に過ぎた。

夕飯の支度を手伝っていると、玄関から「ごめんください」と女性の声がするので迎えると、リエがいた。

彼女は

「…どうも」

と口を尖らせながらも挨拶する。台所から「誰ー?」との声に

「香織ちゃーん、リエ!おかず持ってきたから!!」

と応え、「ん」とタッパーがいくつか入った紙袋をヒロへ突き出した。

「あ、ありがとう」

慌てて受け取り台所へ運ぶと、リエを送るように指令を受けた。


少し後ろに下がりつつ並んで歩く。とりあえず今の共通の話題であろう猫のバーガーの話題を振ってみた。大学生の姉が所属するサークルの活動の手伝いだったらしい。

「地元活性化プロジェクトだってさ。ここに残るつもりもないくせに」

幼馴染みだと判明したからか、昨日の様な敵意は感じられず、普通に会話が続く。いざ二人で話をしてみれば、彼女の話すトーンは意外と穏やかだった。

思えば彼女は昔からグループの人数が多い程存在感を増すタイプだった。泣き寝入りはしない、意思表示をきちんとするという元々の性格から、はっきり主張するキャラクターという役割意識が強いだけで、案外本質的には大人しいのかもしれない。

「なんか、みんな変わっててびっくりした」

「当たり前でしょ。むしろあんたがあんまり変わってなくておかしいわよ」

ただやはり口調は変わらずキツいので少しむっとし、思わず刺のある声で返す。

「リエもかなり変わったよな。昔はロングヘアーなんて邪魔とかツインテールなんて絶対無理ー!!とか言ってたのに」

「…よく覚えてんね。別に、今だって鬱陶しいわよ。…でもまぁ、色々あんのよ」

急に声のトーンが落ちたので、慌てて話題を変える。

「コウキの眼鏡もびっくりしたよ。目が悪いって感じしなかったけどなぁ」

そう言いながらひとつ思い出した。引っ越し先に遊びに来た時、黄色いりんごと梨を間違えたことがあった。あの時は停電やら色々あったから、そんなこともあるだろうと気にならなかった。

(動揺しない方がおかしかったんだ。)

「…コウくんはあの事故の影響かもしれないけど」

リエがポツリと口にした。

詳しく聞こうとしたが家に着いてしまった。リエの母親に挨拶すると、大袈裟に懐かしがられたので、長くなる前に退散することにした。


「お祭り?」

鯵の竜田揚げをザクザク食べながら聞き返す。新鮮な魚介類が安く手に入るため、おかずにひとつは魚料理が並ぶ。島の子供は中学を卒業する頃には大抵の魚が捌ける様になっているので、香織もなかなかの腕前だ。

ちなみに捌いた時に出たアラをもらってクロにおじやを作った。

「うん。10日なんだけどね。島総出のイベントだから、手伝ってくれると助かるんだけど」

「全然いいよ。あ、でも当日、写真撮る時間あるかなぁ…部活の課題にちょうど良さそうなんだけど」

「大丈夫じゃない?むしろ記録係みたいな感じでどんどん撮ってもいいかも。メモリーカード貸すからさ。私からも言っておくよ。とりあえず4日に打ち合わせがお寺さんであるからそこの手伝いお願いします!」

香織は安心した様子で冷やしうどんを豪快にすすった。

お盆前で仕事の締切が重なっている香織にとって、ヒロが代わりに手伝うととても助かるしい。祭に携わることには、単純に興味がわいた。

(明明後日か…みんなにも会えるだろうか)

嬉しい半面、少し怖くもあった。

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