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約束  作者: 榎 実
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8月1日④

香織は仕事に戻り、ヒロはクロの食料を買いに行くことにした。基本的な生活費は事前に母親が香織に渡しているが、クロに関しては完全にヒロの管轄である。


一番近いホームセンターまで自転車で30分はかかる。借りた麦わら帽子 (それしかなかった)を被り、汗だくで向かかう道中、昨日会った幼馴染み達について考えていた。


最初に会ったイノリ。昔の彼女は明るくて、よく笑って、ちょっと天然で、いつも楽しそうだった。

仲間内でケンカが始まると絶妙なタイミングでその天然っぷりを発揮して、自然と周囲をクールダウンさせることが多々あった。

昨日の明るい声色や、マイペースな感じからも、あまり変わっていないのかもしれない。

体型も昔と同じ華奢な感じで、目のぱっちりした顔つきも変わらない。ただ、一つ大きく違うのが、昔は髪が長かったことだ。腰まで届きそうな猫っ毛が、風と陽を受けてキラキラと輝く様は美しくて好きだった。


次に現れたリエ。以前はボブヘアーにメガネをかけていた。昔から赤毛の天然パーマだったから、案外地毛のままなのかも知れない。

よく「にんじん」と呼んでケンカした。今思うと、自分の方が背が低くて悔しかったからな気がする(なんてクソガキ)。当時仲間内では彼女が一番背が高かったが、昨日はイノリとほとんど同じだった。

物事をはっきり言うタイプで、竹を割ったようと言えば聞こえは良いが、言い方がストレートすぎてキツイところがあった。昨日の態度からして変わってないらしい。

(…久しぶりの幼馴染みに会って昔の感覚に戻ったっていうのもあるかも)

一応、希望的観測も持ってみる。


ヨシマサは可愛い弟分だった。1つ下なので体も小さく、サッカーで遊ぶ時はいつも顔を真っ赤にして必死でついてきた。

(それが、あんなになるなんて…)

昨日受けたショックはいまだ続いている。

だが、改めて思い出すと、強さと穏やかさを合わせもった印象は、普段大人しいけど実は結構頑固だった昔の性格を彷彿とさせた。


そしてコウキ。近所で唯一の同い年の男子として、いつも一緒だった。島を出て半年程経ってから、引っ越し先に遊びに来てくれたこともある。幼いながらの親友だった。昨日の笑顔は昔の親密な時間を思い出させてくれるものだった。

(もし、クロの言う幽霊がコウキだったら一番ショックだな…)


最後にミユキ。学校の先生の娘だからなのか、ちょっとお嬢様っぽい感じの子どもだった。

毛先に癖のある髪は肩を撫でる程度の長さで、よく髪の上部を花やリボンの付いたゴムを用いて2つに結んでいた。伸びた前髪が真ん中で分かれ、真っ直ぐで長い眉と切れ長の目が露になって、堂々とした印象を与えていた。また、大切に愛されているが所以の余裕を感じさせるこどもだった。一方で"こどもらしさ"は他の子供と大差なく、思い切り動くし、ちょっと良さそうな服を汚してもケロっとして笑っていた。後でコウキが、親の前では大層しおらしく振る舞うので大したお咎めなしに許してもらえるのだと言っていた。そして大体原因をヒロにするので、姉弟の両親からヒロはガキ大将と認識されていたらしい。

(昨日はちょっとも笑わなかったな…)

香織の言っていた事故が本当に彼女を変えてしまったのだろうか。


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