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7月31日①
山を拓いて造られたというかつての"ニュー"タウンを出て市街地へ向かう。
冷房の効きの悪さに耐えきれず助手席の窓を開けると、熱気が湿った肌に纏わり付くように襲いかかってきた。
車は新興住宅地から市街地へ続く新道をまっすぐ、麓からの旧道との合流地点へ向かって下り続けた。申し訳程度の風に吹かれながら、ふと旧道を見おろす。
その瞬間、目の前にあの凍える朝の光景が広がり、思わず息をのみ無意識に片腕をさする。
運転席からミラー越しに目をやった母親が
「…まだ時々、あの長い車の列があるような気がするのよね」と独り言の様に呟いた。
思えば通学路や主要バスの路線ではないこの道を通るのは、ずいぶん久しぶりのことだった。
(だからかな。それとも)
今日の目的地のせいだろうか。