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7/12

それぞれの食べ方

最寄りの駅からだいぶ離れた駅にて電車から降りた眞砂利たちはようやく自宅兼会社である我が家にたどり着いた。

両手には灯が今日買ったものと眞砂利が先ほどスーパーで買った自分の分だけの夕食が入っている。


住宅街にあり、結構大きめの4階建ての一軒家。

1階は会社の事務室となっており、2階はリビング兼共同フロア、3階4階が従業員たちの生活スペースとなっている。

この家は昔は眞砂利とその家族含め5人で暮らしていたのだが、両親が離婚して今では眞砂利と母親の二人暮らしとなっていた。

滅多に家に帰ってこず、家のことに関してもほぼ無関心な母親なのをいいことに、特に母親の許可を取ることなく眞砂利が家の中を改造し、会社と名乗っているだけである。


看板もなければ所有権もない。

眞砂利の稼いでる金額で新しい会社のオフィスぐらいすぐに建てられるのだが、この家に愛着しかない眞砂利はどうしてもここから別の場所に移動することを考えられなかった。


「ただいまぁ」


気だるい声で家へと入る。

灯もその後に続き、中へと入る。


初め、このお嬢様靴を脱ごうとせずに入るものかと思いきや普通に靴脱いで来客用のスリッパに履き替えていたな。

そのことを指摘すると、『あんたお嬢様のことばかにしてんの?』とキレられ眞砂利は『いや、十文字さんのことを馬鹿にしてた』というと綺麗な右ストレートが眞砂利の顔面ど真ん中を貫いた。


灯が家に来るたびに眞砂利はこの時の出来事を思い出す。


奥の階段に行く前に扉がきちんと閉まらず少し空いた隙間から電気が漏れ出る事務室の扉をそっとあけて見てみる。

いつもならこの時間は業務終了時間なのだがまだ働いているのかと二人して思う。

忙しそうに事務仕事の二人が殺到する電話を対応しながら、パソコン業務をせっせとこなしている。


『アポロン』のことで今日はパンクするほど電話が殺到しているらしく、ほとんど戦力外であるヒョウカを除けば実質この会社を二人で支えてくれている大事な従業員である。


何かしらできるできるわけでもない眞砂利は後で差し入れでも持っていこうと心に誓い気づかれないようにそっと扉を閉めた。

役立たずな社長でごめんなさいと心で謝罪を忘れずに。


これからより『アポロン』が有名になりさらに『アフロディテ』まで活動するとなると彼らへの仕事内容が追いつかなくなるのでは?

ここいらで事務作業の従業員をもう何人か採用したいところである。

でないと、彼らは過労死してしまうだろう。


彼らは眞砂利たちと違って間違いのない一般人なのだから。


机の上に大量に置いてあった致死量のエナジードリンクの残骸が目に入った瞬間眞砂利は決心した。

またあの、ジジィから有能な人間斡旋してもらおうと。


奥の階段を登り、生活スペースのあるリビングに入る。

そこにはソファに我が物顔で座って今日の仕事を終えた赤い髪をツンツンとたてながら何かどえらいアルコール度数のお酒を水のように飲むスピリとベロンベロンに真っ赤な顔でよっぱらているヒョウカ。

流石にサングラスは外しており、その大きな赤い瞳が露わになっていたがマスクは依然としてつけたままである。


よっぱらったそのヒョウカにいいようにもてあそばれている10歳ほどの少年、罪口つみぐち正太郎しょうたろうである。


幼い顔立ちに腰まであろう、長い金髪。

灯の染め上げているものとは違い、こちらは完全な地毛である。

目の色はオレンジ色なのだがラメが入ったようにキラキラと光り輝いている。

ひと目見ただけでは少年と気づかれないずよく少女と間違えられる見た目であるが彼の股にはまだ成長途中のポークピッつがぶら下がっており立派なショタっこなのである。


そんなショタっこは精神年齢は自分よりも二つほど下の巨乳のオネェさんに撫でくりまわされている。

少年は少し迷惑そうにしながらも、この姉はこうなってはもうどうしようもないことを知っているので好き勝手にやらせながらどこか遠い目をしながら、『アポロン』が出ている特別報道の番組を見ていた。


「下で事務員が二人死ぬ思いで働いているって言うのにいい気なもんだね」


眞砂利が少し呆れた口調で言うと3人とも眞砂利と灯に気がついてテレビから視線を離してそちらの方に向く。


「おかえり」


「お帰りなさい」


「おきゃえりゃーにゃのですぅ」


スピリ、正太郎、ヒョウカの順でそう言ってきたので眞砂利と灯も、ただいま、といった。

スピリはそうでもないが、ヒョウカはベロンベロンに酔っていた。

あまり酒が強くないくせにスピリからもらったアルコール度数の高い酒を一杯ほど飲んだのだろう。


3人に近づきテーブルを見てみると、飲み散らかされた酒の空き瓶に凍ったままで食べかけの冷凍食品。

ヒョウカがおつまみとしてかぶりついてそのまま放置したのだと推測される。

他にも開け散らかされた袋菓子に締めで食べようと思われるカップ麺と水の入った鍋にパチンコ玉のような銀色の玉がそこら辺に転がっているのである。


バランスも見た目も関係ない無惨なテーブルの惨状。

見慣れてしまった光景であるがお嬢様である灯は最初そんな光景にドン引きしていたが今では何も思わずに正太郎をまさぐっているヒョウカの隣に座る。


「よぉ!マザー、さっきは良くもまぁ仕事押し付けて消えてくれたな。あの後オレァどれだけ大変だったとおもってんだ?この炎天下の中ヒョウカの鬱陶しいうるさいエールに耐えながらあのでっけぇ怪獣を解体して運びきってやったんだぜ?」


「それについてはお疲れ様。いい身分なのは俺も一緒だったか」


スピリ少し熱った顔色で手に持っているお酒の入ったグラスにそっと指を近づける。

すると酒はいきなり発火して、青白い炎が燃え上がる。

スピリはそんなこと気にもしないで燃え上がる炎と一緒に一気にその酒を煽った。


「かー!うんま!やっぱり酒はこうやって飲むのが激アツにうまい!」


そう言うと、またグラスに酒を注ぎ始める。


「あ!カップ麺ある!ねぇスピリさん、自分これもらうわね」


灯もいうが早いが特に了承を得ることもなくテーブルの上にあったカップ麺に手を伸ばす。

そして水の入った鍋をスピリのとんがった赤い髪の上に置く。

スピリ特に気にもせずにまた酒を発火させて一気に煽る。

ものの数分で沸いたお湯をカップ麺に手慣れた手つきで注いだ。


ワクワクしながら、プリン頭のお嬢様は家では絶対に食べれないカップラーメンに思いを馳せる。


「にゅふふふ、ほーらショウちゃん。コネコネコネー」


「。。。」


酔っ払ったヒョウカになすがままにされている正太郎は何も言わずに顔をいじられまくられながらチョコレートを包みごとむしゃむしゃとたべる。


そんな光景を見ながら眞砂利は帰る途中に買ってきたレタスをおもむろに取り出して洗いもせず何もつけずにそのまま齧り出す。


「いっつも思うけど、社長って変な食べ方するわねぇ」


「酒に火をつけて飲んだり、冷凍食品を解凍せずにそのまま丸齧りにしたり、チョコレートを包みごと食っている奴がいる中ではいたって普通寄りの食べ方だと思いますけど」


「僕も無機物を飲み込むのは趣味じゃないよ。少なくとも僕は袋を剥がすのが面倒なだけでちゃんと中身のチョコレートしかたべてないよ」


むしゃむしゃとレタスを丸齧りする、眞砂利に正太郎は残っていたチョコレートをそのまま全て口に入れた。

そしてベッと舌を出すとアルミホイル部分と紙の部分であったらしき、銀色に輝く鉄の球をはきだした。


それを机の上に置くとまた手に取ったポテトチップスが入った袋菓子をふうを開けずにそのままかぶりついた。


ヒョウカも机の上に置いてあった食べかけの冷凍食品をバリボリとした咀嚼音と共に器用にマスクの上から食べてスピリが飲んでいたものと同じ酒を少し口に含んだところで意識の限界が来たのかそのまま灯の肩に頭をのけって眠ってしまった。


「んもう、私が食べにくいじゃないしょうがないわね、少しだけ我慢してあげるわ」


そう言うと、いい感じに伸びたカップ麺を上品に啜る。

決して音など立てずに高級料理店でコース料理でも食べているかのような気品さがそこにはあった。


舌の肥えた彼女からしたら決して美味しいと言えるものではないがこの化学調味料をふんだんに使った味はお嬢様である彼女からしたら大変刺激的なものであった。

特に締めの残ったスープに米を入れた食べる食べ方は炭水化物を食べた後に炭水化物を食べると言う栄養バランスガン無視の禁断な食事が彼女のお気に入りでもある。


汚いテーブルに、各々が好き勝手好きなようにご飯を食べる。

『偶像怪獣討伐会社』では見慣れた光景である。


ヒョウカが眠り、ようやく解放された正太郎がテレビの前を陣どる。

『アポロン』一色の中継に、灯は面白くなさそうな顔でカップ麺を啜る。


「そんな不機嫌な顔でほらチャンネル変えるから」


近くにあったテレビリモコンで違う番組にとチャンネルを変えるがどのチャンネルも『アポロン』一色の特別報道番組ばかりである。


仕方がないので、初めの番組へとチャンネルを回す。

いきよいよく、一気に麺を啜った灯がその場に立ち上がる。

灯の肩にもたれかかっていたヒョウカはコテンと横になった。


「つまんない、つまんない、つまんない!本当だったらあの名声は栄光は全て『アフロディテ』いや、自分のものだったのに!自分もテレビ出たい!新曲披露したい!周りの人間にチヤホヤされてすごいねって言われてたい!どうにかしてよ社長!」


「そんなこと言われましても。だからコシュチュームのデザインが出来上がるまでまてってーの。俺も別に意地悪で『アフロディテ』を活躍させないようにしてないじゃないっての。それとも何?ランク4クラスの怪獣討伐でそこそこの機体の新人としてデビューしたいの?」


「それはやだ!人類史初の最強キュートな怪獣討伐部隊としてのデビューがいい!」


モリモリと帰る途中で買ったチャーシューを丸齧りしながら眞砂利に灯ははっきりと断言した。


スピリはまた始まったと思い黙って酒を飲み続ける。


普段ならここから二人のいつものやりとりが始まるのだが、それを静止したのが金髪ロングのショタやろう、正太郎であった。


「そういえば、今日の昼、コスチュームの愛しき神様からアイデアを信託したとかなんとかってデザイナーさんがこれファックスで送ってきたって来てたから、後でした立てておくから、全サイズ測るからよろしく」


正太郎はポケットからいくつにもおられた、細かい指定が入った3枚の紙を出した。


どれも軍服のような仕上がりになっているが所々にファンシーな装飾が施されている。

仕上がりを見ないことにはわからんが素人目である眞砂利からしてもまぁいいんじゃないか?ぐらいの感想である。


正太郎はそのままテレビに向き直って番組の続きを見ようとしたがそれは中断される。

疾風の如く、灯にとっつかまりそのまま傍に抱えられた。


「こうしちゃあ、いられない!さぁ早く他の二人を呼んで私たちのデビュー戦よ!さぁガレージに行くわよショタやろう!!」


「いってきまーす」


絶対に逆らえないと知っている正太郎はなすがままにそのまま灯の脇に抱えられたまま家を飛び出した。


眞砂利は何てタイミングが良すぎるんだと思うと同時に異次元のディバインゲートから運良く高ランクの怪獣が出ることを祈った。

それか、国家が所有する『エージェントマスターズ』のどこかの部隊が『アポロン』の活躍に嫉妬して高ランク怪獣が出るほどの人工的な異次元のディバインゲート開いてくんないかぁな、とどこか他人事のように思いながらデザートであるスイカを皮ごと齧り付いた。

読んでいただきありがとうございます!


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