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怪獣について

「ただいま、この街にランク8。ランク8に認定された怪獣が向かっているとのこと。繰り返しますランク8に認定された怪獣が向かっているとのこと。市民の皆様は速やかに安全基地セーフティーゾーンまで避難をお願いします!」


むさ苦しい夏。

外で景気よく鳴いているセミの声をかき消すかの如く聞き慣れたサイレンが町中に響き渡りながら機械的な感情のないアナウンスが流れる。


怪獣。

今では世界共通認識となった人類の敵。


数十年前から突如として現れたと言われる異次元のディバインゲートと呼ばれる穴から出現する。

その正体は不明。

わかっていることは、奴らが強大な存在であると言うこと。

人々に害をなすものであること。


怪獣は生き物であり決して倒せないわけではないと言うこと。


怪獣の出現により決して少なくないダメージを人類は追うことになるのだが、またその恩恵もしっかりと受けている。

怪獣の体には世界では発掘できないような金属や、加工すれば何とも言えない輝きを持つ宝石、特に核と呼ばれる怪獣の心臓部分であり特殊なエネルギーを発する物質。


怪獣から搾取できる多くの未知の物質は人類史の発展に大いに役立った。


数百年先もしくは人類には手が届かないであろう化学に人類は手が届くことに成功した。


あり得ないほどの被害を受けながら、それにかなった恩恵を与えるそれが怪獣というものだ。


討伐の方法も初めは国を挙げて、世界中で協定を結び全人類で協力し倒していた。

各国が持てる最大火力の兵器に、訓練された兵隊たちが導入されていた。


が、最近ではランク3クラスの怪獣だと、進化しすぎた化学により作られた武器により訓練された一般兵でも個人で倒せるようになった。


今では昔のように一丸となって怪獣を討伐する必要性はなく、今では前例が少なくネームドと呼ばれ個体で認識されることとなるランク7、ランク8、ランク9クラスの怪獣が現れた時にのみ各国の最大戦力が投入されることとなっている。


そして今、アナウンスでなっているのはその世界中で一丸となって倒せるレベルの怪獣のワンランク下ランク8の怪獣である。


怪獣のランクは『レベンダー』と呼ばれる装置にて図られ怪獣が発する『アンウノン』と呼ばれる目に見えない何かを計測してランク付けされる。


ランク8クラスの怪獣は国家最大クラスの怪獣討伐会社のエースたちまたは国が保有するこの国最強のエージェントたちで構成された究極部隊の人間が力を合わせて討伐できるかどうかの化け物である。


そんな巨大組織ですら討伐するのに準備と時間がかかる災厄の怪獣。

前回ランク8が出現した今より十三年前。

その際は二つの町が消し炭になり、多くの犠牲者を出すことにより何とか怪獣を討伐することに成功した。

当時の日本の科学力は今よりも少し劣っていたとは言え、強力な対怪獣専用武器も豊富にあったにも関わらずにそれほどの被害を出したのだ。


今回出現したランク8の怪獣。

その姿はとにかく巨大で圧巻である。

一体どうすればそのような進化に至れるかというほどの巨大さ。

誰もが思い浮かぶであろうティラノサウルスのような巨大な顔にはその体にはアンバランスな小さな手にその巨体を支える巨大な足。背中には剣山の如く聳え立つ巨大なツノ。


近くにある建物をまるで発泡スチロールの壊す勢いで破壊していきどこかを目指している。


「そこまでだ!俺たちの街でこれ以上好き勝手させはしない!」


そんなランク8に果敢に挑む5人の男たちが現れる。

国家最大大手の怪物討伐会社のエースでもなければ、国家が保有する対怪物エージェントの究極部隊の人間でもない。


この町に構えている民間の小さな怪物討伐会社の討伐部隊である。

年齢は下は18から上は23歳で構成されている。

彼らの特徴を上げるなら、まずその整った容姿に目がいくであろう。


全員が違うタイプのイケメンでここの女子はいないのだが黄色い声援が飛んでくるという幻聴が聞こえてくる。


次に着ているもの。

それぞれのイメージカラーがあり、赤、青、黄色、緑、紫色に分かれておりぴっちりとた、タイツのようなものにゴツゴツとした装備品が装着されている。

体のラインがしっかりと出ておりイケメンな男たちの細いがしっかり筋肉のついた体が強調されている。

素晴らしい体型に加え、全員が身長180センチ越えの長足である。


このスーツこそが彼らの攻撃力を底上げし、絶対に傷がつかないように圧倒的な防御力を誇る、ある技術者が作った自信作なのである。


「俺たち『偶像怪獣討伐会社』所属のチーム『アポロン』がお前を討伐してみせる!」


決めポーズであるポーズをとり五人の中心にいた赤色のスーツ男が人差し指を怪獣にさす。

当たり前のことだが怪獣はそんなこと気に求めずに目的地である彼のものがいるであろう場所を探す。


「全く、あんな化け物を我々だけで倒すなんて本気ですか?全くあなたの無茶には困ったものですね」


紫色のスーツを着た男が赤いスーツを着た男の肩を軽く叩いてため息を吐く。


「あたりまえだ!俺たちがやらなきゃ誰がやるというんだ!こうしている間にもあの怪獣によって肥大は拡大しているんだ」


「諦めようぜ、こいつがこう言ったらもう止められねぇんだ」


「そうそう!だからこそ僕たちを引っ張ってくれるリーダーであり、世界を照らすチーム『アポロン』のリーダーなんだよ!!」


「・・・」


にかっと気前のいい笑顔を浮かべる緑のスーツを着た男に人懐っこい笑顔でいう黄色いスーツを着た男。

青のスーツを着た男は何も言わなかったがクールに少しほくそ笑んだ。


紫のスーツを着た男はもう一度ため息を吐くと覚悟を決めた顔つきになる。


「えぇ!わかりましたとも!私たちは命をかけてあの怪獣を倒し、この街を救って見せましょう!」


「おいおい!それはリーダーである俺のセリフだろうが!」


「「あはははははは!」」


赤いスーツを着た男のセリフに緑のスーツと黄色のスーツを着た二人が笑った。


一体何が面白かったのか、思ってもいないことをベラベラとしゃべる自分達のことが面白かったのだろうか?


「よしいくぞ!」


赤いスーツの男が言うと全員が行き良いよく返事をした。


「はーい、一回ここでストップなかなかいい絵じゃねーの?やっぱりイケメンはいいわぁ。こんなありきたりな中身のない話でもバエルんだから。ずるいよなぁイケメンって、整形もしないで何でそんな整った顔してんの?神様お前らのこと好きすぎない?」


そう言ったのはこの暑い夏にふさわしい半袖短パンにサンダルという格好の少年。

千円カットで切ったような髪型にパッとしない顔つき。

どこにでもいそうな少年はスーツを着た男性たちに向かってそう言った。


「あんまりイケメンって連呼しちゃめっですよ!彼らだって日々努力してあの顔を維持しているんですから、君だってイケメンになりたければいい整形外科紹介するですよ?」


その隣にはこの暑い季節に不似合いな白いビジネススーツを着こなす女性が手に持っていたカメラを操作しながらそう言った。

日傘を指しており、スーツも白いが髪も肌も真っ白でまるで物語に出てくる雪女のような女性。

実際は口裂け女なのだが。


その口元はマスクで隠しており、目にはサングラスをかけているのでその容姿は判断ができない。

ただビジネススーツの上からでもわかるほどの巨大なその双丘は大抵の男なら凝視してしまうほどの大きさである。

その周りにはなぜか白い霧のようなものが発生しており、彼女の白さをより強調するものとなっていた。


そんな見るからに怪しさ満点の彼女だがその声はいわゆるアニメ声というものであり大人びた彼女にあまりにも不釣り合いであった。


「いいんだよ、俺はこの顔で。みなさんできれば戦闘シーンも撮りたいからちょっとだけあの怪獣に立ち向かってくれない?もちろん顔は怪我しないでね?そのスーツの防御力はあくまでそのスーツが覆っているところだけだからむき出しになっている顔とかにあの怪獣の攻撃当たったらこいつみたいな顔になっちゃうからね?」


そう言われた五人の男たちはチラリとランク8の怪獣の方をチラリと見る。

まだ、1キロ以上離れているはずなのにその巨体の存在感は計り知れず、巨大な建物を次々と破壊している。


「むりむりむりむりむる!あんなのと戦うなんて冗談じゃない!社長、俺たちは五人で何とかランク5は倒せれるほどの実力は持ってますけど、この前現れたランク6には何とか戦っているところを動画に収めてもらいましたけどあれは無理ですって!この前のランク6なんて雑魚といえるぐらいのバケモンじゃないですか!ランクが2個違うだけであんなに変わるんですか!今回は社長がパパッと倒してきて最後に俺たちが倒しましたって感じで行きましょう!」


赤いスーツを着た男が必死に抗議を申し出る。

実際はランク5の怪獣を倒せたのは彼らの実力ではなく特別性の彼らの『対怪獣討伐兵器』もおかげなのだが。

それほどの物を持ってしてもランク8の戦闘は真っ平御免のようだ。

彼の言葉に周りのスーツを着た男たちもうんうんと必死に縦に首を振る。

あまりに必死に首振りしすぎてヘドバンみたいになっている。


「だいたい、何なんだですか。怪獣倒す前にやるこの芝居は。やらなきゃいけないんですか?」


「そうそう、変に小っ恥ずかしいし、どうせ怪獣と戦っている時に素の自分達の正確曝け出してるから、意味ねーってあんな茶番」


「・・・」


紫色のスーツの男と緑色のスーツの男が抗議をする。

青色のスーツの男がそれ無言で肯定する。


その言葉に少年はこう答えた。


「俺は戦闘員ってのは正義の味方みたいに思ってるわけよ。強大な怪獣という悪から善良な市民を無償で守る!やっぱりイメージ大事だと思うんだよな。だから最初くらいはそのイメージに沿ったキャラでいって欲しいのよ。大丈夫素のお前らが出てきてもギャップ萌えで結構人気が出てるんだから。お前達が人気になればその分写真集も、CDもうちで作っているオリジナルグッツもバンバン売れる。うちの会社は儲かるし、市民の平和も守れる。ついでに怪獣の遺体はうちで総取りで、街の復興資金は国が払う。どこをどうとってもあの茶番劇を辞める理由にはならないだろう?」


「ほとんどの理由が関係ない気がするんだけど。そんなことより僕もやだよ、というか無理あんな怪獣と戦うの。僕らの顔に傷がついて困るのは社長だし、編集さんの力を使ってどうにかうまいことしてよ」


黄色のスーツを着た男がそう抗議すると少年は首を捻った。


「えぇーそれじゃあいつもよりやらせ感強いじゃん。俺そういううのあんまり好きじゃないんだよね。何事もやっぱり本物でいかないとね。大丈夫だっていざとなれば俺も彼女もいるしさ、もしものことなんて起こさせやしないから。はい、行った行った。君たちに拒否権なんかないよ偶像諸君」


「「「「どの口が言うか」」」」


自分より身長も高く年上の男四人がハモって恫喝されたのに少年は微塵もおくさずに肩をすくめる。

少年がそういうと、白い女性がパネルのようなものを操作し近くに待機させていたドローン型映像録画機を起動させる。


「じゃあいきます!3、2、1スタート!」


少年が元気よくいうと撮影モードがオンになる。


スーツを着た男たちも先ほど言っていた弱音を飲み込みランク8の怪獣に突っ込んでいく。


「ん、じゃ俺も行ってこようかな?ヒョウカちゃん、編集の方と自己処理の担当の人に連絡の方入れといてね」


「りょうかーい!ってよりも直接呼んでくるのです。私も久々にヘリコプターに乗りたいのです!」


ビシッと敬礼をする白い女に少年は敬礼で返した。


少年の名前は、美杉みすぎ眞砂利まざり

名前負けした容姿に特にこれと言って秀でた才能がなかった少年。

彼にもし才能があったとすればそれは見つかるべきでなかったものだ。

それさえ見つかならければ一体どれほどの人間が犠牲にならずに済んだであろうか。


彼というたった一つの前例のせいでどれほどの命が無駄に散ったのだろうか。

彼は知らない、知ろうともしない。


わずか、16歳という若さで『偶像怪獣討伐会社』を立ち上げ、わずか半年で数十億という利益を叩き上げ、歌って踊れて怪獣も討伐できる人間を育成し、ありとあらゆる人体実験により人ならざる力を使いこなす。


現時点で非公式ながらもランク9の怪獣をも単独で撃破するという偉業を成し遂げた化け物である。



読んでいただきありがとうございます!


面白い!続きが読みたい!と思った方は評価の方とブックマークの方よろしくお願いします!

励みになりますし、やる気もみなぎってきます!


誤字脱字、あれ?なんか設定おかしくない?などの違和感があればどしどし感想欄にコメントお願いします


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