2章 後悔の果てに (6)
「な、なんで、リンちゃんはそんな人と……というか、榎戀! なんでそんな大事なことを、ってか、どうして二人は!?」
あまりの突飛な榎戀の発言に動揺を隠せない様子の三日月。しかし対する榎戀はなんとも飄々とした様子で、ことの大きさを気づいて居ない様であった。否、というよりは三日月が過剰に怖がっているだけ、という方が合っているのかもしれない。三日月にとってみれば、彼女はリンだけでなく、自分さえも手に掛けようとした相手。しかし、榎恋にとってみれば、信頼している生徒会長であり、その隔たりが大きな反応の差へと繋がっているのだろう。
「わからないけど、でも二人はそんな仲良くない訳ではないわよ? アンタが寝ている時にも……」
慌てるように榎戀の発言を遮ってまで、口を挟み込む。
「とにかく、二人はどこに居ると思う!?」
「え、えっと、四階だから、秋音会長の部屋じゃない? あ、あの三日月、そんな慌てる必要は……」
「会長の部屋か? 分かった。ありがと」
そう三日月は短く礼を言い、急いで会長の部屋を目指した。後に残った榎戀は嫌な予感しかしなかったが、何かを悟ったような、諦めた顔をして、そのまま部屋に戻った。
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「で、リンちゃん、そろそろ私と風呂を入ってまでお話に来たわけを教えてくれないかな?」
「一緒に風呂入ろうと言い出したのはそちらではないか生徒会長!」
リンが言うように二人は仲良く(?)お風呂に入っていた。リンを一時は殺そうとまでした西園寺秋音と普通に会話している。周りから見れば、異常な光景であり、よく警戒せずにリンは背中を差し出せるなと思うかもだが、リンは思いの外、この世界に通じている。自分がどれだけ嫌われているか、あの時、どうして私は殺されるぐらい狙われたのか。そしてこの場所で私は何故殺されないのか、その仕組みの大体を知っているのだ。もちろん、それを知ってるだけで、全て心を許すことが出来る訳ではない。だが、目の前の西園寺秋音という人間とは以前、風呂を一緒にして、その時も背中を流しっこしたことから、完全とは言えないが、かなり打ち解けている。
「だって、リンちゃん私と風呂入るの苦手でしょ? 貧乳がコンプレックスみたいなものだし」
リンは人間ではない。彼女は人間ではなく、狼男ひいては狼女という人間に擬態することを得意とした妖である。あくまで人間に擬態であるため、完璧そっくりそのままという訳ではない。異様なまでの体毛の薄さや、ただ渦を巻いただけの手相などがその証拠だ。そして女性の全く成長せず、ぺったんこなままの胸もその内の一つだ。ただ、彼女はそんな秋音会長や榎戀の大きな胸が羨ましいというのは、嘘ではない本音だろう。
「ちち、違う! コンプレックスじゃない! そもそも私は……」
「はいはい、泣かないの」
「泣いてない!」
「で、本当にリンちゃんが私になんの用? 一緒に風呂に入ってまで聞いて欲しいことがあるの?」
「それは……」
そして彼女は重い口を開く。
「三日月の部屋を移動させて欲しい」