2章 後悔の果てに (4)
「……どうしよっか」
三日月が退室したその日は授業の無い休日であったため、彼は暇を持て余していた。彼はそのままベットの上に寝転ぶと、これから何をしようかと考えを巡らす。しかし、これから来るであろう二人の帰還を考えると気は穏やかではなく、鬱屈とした思いに駆られていた。
「本でも借りてくるか」
彼が高等部に入り、友達と遊ぶことが無くなった彼が暇つぶしに選んだのは読書だった。大体学院の図書館から借りていた。学院の図書館は霊術書や歴史書などの専門性が高い本が多いが、恋愛小説などの娯楽と呼べるものも存在する。図書館で借りるためには、この学院の証明書が必要なのだが__
「ない、ない! いつも入れているはずのポケットのところに学院証がない!」
それから彼は彼のベットの付近や、教科書の近くを探したのだが、学院証は見つからなかった。どこかで落としたのだろうかと思いを巡らすと、そもそも今の学生服は自分が用意した訳ではないことに気付く。では、あの日どこかで落としたのではないのかと、記憶を探っても逆に思い当たる節が多すぎて一つに絞り込めないのであった。
(で、でも、学院証ぐらい大事なものだし、誰か保健室に置いててもおかしくないよね……?)
そう微かな願いに掛けて保健室へと向かう。
「失礼します」
「あら、貴方はさっきまで居た。三日月くんじゃない。何か忘れ物でもしたの? 悪いけど、さっき片付けちゃったのよね、貴方のとこのベット」
端麗な容姿と豊満でクビレの多いスタイル、若々しい見た目でありながらも、生徒と一緒に見ても生徒には見えない大人としての魅力を湛えている。三日月を見るなり保健室の松本彩香先生はそう答えた。ちなみにそんな彼女は男子生徒の中でかなりな人気を誇っており、告白事件まで起こったことがあるとか。
「すいません、そこに学院証は落ちてませんでしたか? 僕のやつなんですけど」
「見てないわね。私もベットの下とかは見てないから、絶対とは言えないけど、ちょっとごめんね三日月君、悪いけど私用事でちょっとここ離れないといけないから、探すなら一人で探してくれる? あ、でもベットとか過度に捲ったりしないでね」
「ごめんなさい。ありがとうございます」
そしてカーテンを開け、三日月がさっきまで使っていたベットの下を覗いた。しかし、そこには学院証らしき物は落ちておらず、さらに思い切って手を伸ばして見るものの、手応えはなく落胆するばかりであった。
(で、でも、ここに無かったらあの日走った所を探すか、お金払って再発行してもらわないといけない……無駄にお金は使いたくないな。他に落ちてるとことかないのかな、例えば実は隣のベットの所に落ちていたりとか……)
そして彼は隣のベットに繋がるところのカーテンを引っ張った。シャラララと、カーテンを開けるとそこには学生証……ではなく、あってほしくない。いや、いてほしくない者が居た。
「な、な!?」
「え、うぇ!?」
「きゃああああああああああ!!」
「ご、ごめんなさぁぁい!!」
そこには怪我の治療中だったのか、下着姿のまま足に包帯を巻いていた女子生徒の姿だった。




