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1章 ボーイ・ミーツ・ウルフガール(38)

 彼女は名乗った通り、この学院の生徒会長で、現在序列5位という実力者だ。三日月がどこかで見たことがあるというのは正しかったのだろう。しかし、一回の生徒会長が生徒の問題にわざわざ手を下すというのは大変めづらしく、それだけ今回起きた事件のことの重大さが窺える。


「それとも、妖と契約して可笑しくなっちゃったのかしらね⁉ リンドヴルム!」


 と彼女は自らが使役している竜の精霊を呼び出し、本人の細い腕ほどしかないレイピアを取り出した。臨戦態勢であった。


「話を聞いてください。生徒会長!」


「話はあの子達から聞いているわよ。妖と契約してまでそこの妖を守ろうとしているおバカさんが居るってことをね。貴方が意識を乗っ取られず、会話出来ることも知っている」


 彼女はさっきまで戦っていた妖討伐のために動き、契約してからは一人で逃げたであろう女子生徒を指差した。彼女が生徒会長を呼んだのであろう。


「じゃあ……」


「だから貴方を討伐しに来た。私直々がね」


「何故ですか⁉ 僕、いいえ私はこの妖を完璧に使役してみせました。僕も無事です」


「じゃあ、彼女は?」


 と変わらず厳しい目でこちらを睥睨する。


「貴方は無事なのかもしれないけれど、彼女は妖、いつ人を襲うか分からないじゃないの?」


「襲わない!」


 三日月は即答だった。


「彼女はこの里に出てから今まで人を襲ってない! 人も今まで一人たりとも殺してない! なぁ、リン!」


 そう振り向いたリンの顔は何やら決まりが悪そうな顔をして俯いていた。まるでこちらに返答を来るのを恐れてたかのように、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「リン?」


「……、……う、うん、そ、そうだ、よ」


 ちょっとの間があった後、彼女は目を逸してそのように呟いた。


「でも、これから彼女が人を襲わない保証は無いわけでしょ?」


 口調は優しく悟りかけるかのようであったが、しかしその目からはどことない圧が醸し出されていた。


「彼女が万が一人を襲うようなことがあれば、僕が責任を取ります」


「何かあってからじゃ遅いの」


 西蓮寺という生徒会長は少々食い気味に三日月の発言に対し、答えを返した。


「人を襲うかもしれないそんな存在をここに匿っておくなんて出来ない。しかもそれは貴方もそう、貴方だって今は無事かもしれないけれど、いずれ限界が来て人に危害を齎すかもしれない」


「それは……」


 言い返せなくなり少し言い淀んでしまう三日月、その状況を見て好機と見たのか、西蓮寺の顔には笑みが浮かんでいた。


「それに、私達は貴方を殺したいわけじゃない。私達の目的はあくまでその妖の討伐。貴方が私達の要望に答えてくれればそれで済む。大丈夫、最終的に私達の依頼に答えてくれたということを鑑みてくれれば、幾分か処罰も軽くなるに違いないわ。私も貴方の罪が軽くなるよう頼んでみるから」


 三日月からの警戒を解いてもらうようになのか、彼女は養母のような穏やかな顔でそう聡そうとした。しかし


「できません……」


 西蓮寺は少し驚いたような顔をした。


「この子を見捨てて、自分だけ助かろうとするなんて僕には出来ません」


「あぁ、そう」


 そして西蓮寺はさっきまでの穏やかな顔とは正反対の冷酷な顔になった。


「交渉は決裂ね」


 そうポツリと呟いたのち突如、彼女はその剣を握り、三日月へ瞬時に斬りかかった。彼は獣のように太い腕を使って防御する。先程立ち合った彼の剣より二周りほど薄い剣であったが、強化(エンチャント)の技術が丈夫なのか、それともうまく力を分散させているのか、全く刃(こぼ)れなど起こらなかった。防御したは良いものの、西蓮寺の力は強くそのまま体ごと押しつぶしそうなほどであった。地面を思いっきり踏ん張り、耐えようとする。しかし、拉致が開かないと見て、持ち前のスピードで大人しく後ろに引いた。けれども、彼女はその距離を一気に詰めて切りかかってきた。剣戟は防げたものの、乗っかかってきた体重は受け止めきれず、彼女にぶっ飛ばされる形で後退した。そのすぐ後ろにはリンが居た。その劣勢に心配そうな面持ちでそっと見上げたリン。


「ウォーターアロー!」


「ファイアーショット!」


 態勢を立て直そうとした瞬間、彼の元へその他の生徒の霊術が飛んできた。彼は西蓮寺と相対してたため、彼らの存在を完全に失念していたのであろう。しばらく精霊使い(エスプリットユーザー)として戦っていなかったのも影響したのか。彼はその霊術を防げきれなかった。というよりは直撃だった。


「ぐわああああああ!」


「三日月!」

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