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1章 ボーイ・ミーツ・ウルフガール(36)

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 彼の身体を謎の光が包む。


「ついにおかしくなったのか。あの木人は」


 吐き捨てるように、彼のルームメイトである鐘山正は、そう溢した。その場に居り彼の妖退治よりも彼の心を折ることを嬉々としてやりたかったため、三日月が死んでくれるのは喜ばしいことでもあった。

 三日月は妖と契約を交わした後、妖を退治しに来ていた生徒たちに目を向けた。その目は小鳥を出産した直後の母鳥のような、決して誰一人として近づけさせまいという威圧感を孕んだ目だった。だが、不意に頭に何かが切れたのかのようなダメージを受け、その場に三日月は倒れてしまう。力を制御出来なかったのか。


「三日月!?」


 心配するようにリンがそう呟いた。


「ははは、良かった自滅してくれた」


 しかし、拳を地面につけ這い上がるようにして、徐ろにゆっくりと起き上がる。口からは多量の血を吐き、力強く歯軋りしながら、臨戦態勢を取ってる生徒たちを睨みつけた。その目は充血しており、血涙を流した。それを右腕で荒々しく拭い、彼らから逸らさない。

 妖との契約、すなわちそれは死を意味する。だが、厄介なことにすぐに死ぬ例ばかりではなかった。妖の膨大な力に溺れ、力の制御が不能となり、自我を失い、自分の身も周りも破壊しながら朽ち果てる。妖と契約したものの末路とはそのような残酷で堪え難いものだった。よって周りの人がその契約した人に唯一してあげられることとは、被害を周りに出さない為に殺すことだった。


「うわあああああああああ!」という咆哮を出し、苦痛に耐え忍びながら一歩また一歩と歩み寄る。対する彼らを手に掛けようとした生徒たちはあまりの威勢に一歩また一歩と退く。そして包んでいた彼の光が露わになった。それは人間とは思えないほどの体毛と筋肉が発達した両手と両足だった。さながら右腕は往年のアニメに登場するロボットを連想させるような重厚感と野獣のような体つきであった。


「化け物が……」と鐘山は呟き、彼を退治しようと見定める。威圧に負け、後ろに下がる他のメンバーとは異なり、個人的因縁がある彼は、三日月のことを鼻につく嫌な奴だと睨んでいたため、彼を倒すことを善しとしていた。


「喰らえ! ファイヤーショッ……」


 鐘山が呪文を唱えようとした瞬間、その強靭な脚力で一気に肉厚した。


「速い」彼がそう思ってから間もなく三日月は彼の顔に思いっきりの拳を振るう。鐘山はその速さに対応出来ず、軽減することも出来ないまま、直撃した。会心の一撃だった。そのまま鐘山はぶっ飛ばされてしまう。


「来いよ、俺を攻撃しようとするなら、さもなくはここから立ち去れ!」


 力も我も制御出来ないはずの三日月は、言語を用い、生徒に意のままに力を振るおうとはしなかった。一体、何が起きているのか。生徒は皆、訳が分からなかった。

 

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