1章 ボーイ・ミーツ・ウルフガール(24)
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それは半年も前のこと、謙一、三日月、裂葉、明治の4人はいつも一緒に遊んでいた仲良し組であった。上流貴族である裂葉と、平民である他の3人とは合わなさそうであるものの、偶々席が近かったことから投合し、そのカルテットをいつしか構成していた。
「このゲーム、ユグ爺にもさせてあげたいなぁ」
「いや、精霊サイズのコントローラーとかないから、それに4人用だしこのゲーム」
「ほっほ、仮令小さいコントローラーがあったとしても、ワシのような老いぼれが未来在る若者の席を奪うようなことはしちゃいけない。ワシは観戦するだけで十分じゃ」
三日月のかつての相棒・ユグドラシルは、仙人のような風貌と、杖を持っている精霊で、120年近くも生きているかなりのベテラン精霊であった。そのような見た目と風貌から三日月を始めとした友達は「ユグ爺」と呼んでいるのだが。ちなみにユグドラシルは、命が長くて90年と言われる精霊の中では異例の長生きであった。それもそのはず、精霊に加齢による衰弱はあるものの、罹る病気が少なく、衰弱死という概念も存在しない。理論的には死ぬことは少なく、最長では200歳にもなる精霊もいるらしい。しかし、個人差や身体の体力的のようなイレギュラーも関係するが、100歳を超えると動く事自体、困難になってしまう。そうなると、本人が死去を望み、安楽死のような形で、送るのも少なくない。なお、同じような理由で、妖も寿命が長い筈なのだが、好戦的で、凶暴な性格から、早死が多かった。
三日月は好きだった、彼の話を聞くことが。彼は三日月で7回目となる精霊契約を経験し、その都度、生きながらえてまった。そのことをユグドラシルも周りも気にしており、強い精霊ではあるものの、契約者を度々死んでしまうことから一部では「死神」といったあだ名がつけられていた。ユグドラシルは常に老いぼれと自称し、「ワシはもう命は長くない」というものの、三日月は「そうはならないよ。僕が守るから」と返す。このようなやり取りは相棒となった時からずっと続いてる謂わば、様式美のような合言葉のようなものだった。