第一話 ⑦
しゅんとしてしまったわたしの肩を、慰めるようにポンポンと慈炎が優しく叩く。
「雨留、オレらはおまえのこと迷惑だなんてちっとも思ってねーよ。
それどころか、オレは神さまと友だちになるなんて初めてで、すげーワクワクしてる。
この家も、部屋なら余ってる。
お前ひとり増えたってどーってことねーんだよ。
ここは素直に甘えとけ。
オレらといることが、きっとお前の目標の近道になる」
「慈炎……」
「その通りです。
それにこの男二人のむさ苦しい家に女性が来ていただければ、華やぎますからね」
鹿目の言葉を聞いた瞬間、慈炎がわたしの手を引っ張って鹿目から遠ざける。
「おい!鹿目!
雨留には手、出すなよ!
神さまに手、出してみろ!
おっそろしいばちが当たんぞ!
雨留!お前、鹿目には気をつけろ!
こいつは涼しい顔して手が早いって有名だからな」
「心外です。
わたしは男として欲望に忠実に生きているだけです。
むっつりの慈炎さまとは違うのです」
「むっつり言ーな!
オレは堅実なんだよ!
ちゃんと好きになって、段階をふんで、そんでそんで……」
また始まった主従コントに今度はわたしも笑ってしまう。
ふたりの好意に甘えてしまっていいのかは正直まだわからない。
ただ、この二人ともっと一緒にいたいと思った。
「わたし、ふたりの言葉に甘えてしまっても、いいかな」
それぞれこちらを向いて笑ってうなずき返してくれるふたりに、わたしは深々と頭を下げた。
「あの、本当にありがとう。
これからよろしくお願いします!」
「おう!」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうして、春の日差しの中、わたしたちの同居、学園生活はスタートした。