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第一話 ③

「あ、鹿目かなめ

鹿目の言った通り、この子、神様かも!

今、俺がこぼしそうになった茶を湯呑に戻してくれたんだ!」


「そうですか。

それはありがとうございます。

わたしの仕事が減りました。」


なんで!?なんでこの人たち驚かないの??


人間界では神は今では架空の存在。

信じてる人はほとんどいないって習ったはず……


神の存在を容認して普通に会話している二人に、わたしはパニックになってしまう。


「俺の名前は慈炎。

で、こっちが鹿目。

よろしくな。

おまえは?

お前はなんてーの?」


髪の長い慈炎という少年が私の前にずいと顔を寄せ、自己紹介を始める。


ち、近い……。


「慈炎様、近いです。

女性とはもっと距離をあけて接してください」


「むぐぅ」


怯えるわたしに気づいたのか、眼前にあった慈炎の顔をむぎゅっと鹿目と呼ばれた男が押しのけてくれる。


「大丈夫ですよ。

この人は顔は怖いですが、とって食ったりはしませんから」


「ちょ、悪口はんたーい」


顔が怖いと言われぶーぶー文句を言う慈炎を尻目に、鹿目が話を続ける。


「雨留様は、落ちてきたことを思うと天上から来られたんですよね?

わたしたちも地獄から来たんですよ」


「え!?地獄……?」


地獄ってあれだよね。

閻魔大王がいて、生前悪いことをした人間に罰を与えるっていう……。


「そうです。

その地獄です」


考えていることがばれてる……。


わたしがたじたじになっていると、二人はそれぞれ耳につけていた小さな金の環っかの耳飾りをとる。


するとふたりの容貌が変化する。


慈炎は髪は黒から毛先のほうだけが赤のグラデーション。

目は深い深い赤。

鹿目の髪は藤色で頭には二本の角。

目は髪よりも深い紫。


「慈炎様は閻魔様のご子息。

次期閻魔として人間のことを学ぶため、人間界に来ています。

そしてわたしはその従者として付いてきた鬼の鹿目と申します」


丁寧にあいさつされて、わたしもはずみで答える。


「あの、わたしは水神の雨留うるといいます……」


「あ、雨留っていうのな!

よろしくな!!」


慈円は目つきが鋭くてちょっと、いやかなり怖いが、話すとかなり気さくだ。

鹿目は冷静で表情が乏しいが、人をよく見ていて気が利く。

いい人たちでよかった。

あ、ひとじゃないけど。


「よ、よろしくお願いします」


「おう」


わたしがぺこりと頭を下げると、慈炎はにかりと、鹿目も微笑を返してくれる。


こうしてわたしの人間界での生活が始まった。

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